10. 世間を見るようにしましょう
世間はほとんど見ていません。
と言う訳で始まりました昼食会。食堂へ移動した私達は、イース率いる公爵家の使用人たちの優雅で素晴らしい身のこなしを観察していた。次々テーブルには料理が並べられていく。洋風フルコースの様に順番に出てくるという文化ではないらしい。両親が異常という訳ではないようだ。すまん。
ただ、やはりこってりぎっとりは両親の趣味らしく、公爵家のメニューは見た目も栄養もバランスも申し分なかった。色取り取りの野菜のサラダ、ローストビーフの様な肉の塊、見た事もない青色の魚の煮物、テリーヌの様な黄色の物体、黄金色のスープ、旬の果物。涎が止まりません。
伯父の歓迎の挨拶の後、食事が始まった。両親以外との食事は、パーティーを除けば初めてである。伯父がいなければ嬉しいと言えるのに。下手な失敗は出来ない。
黄金色のスープを啜れば、馴染みのある味が口いっぱいに広がった。美味しい。
次々と料理に手を付けていくが、どれも美味しかった。やはり、両親の味付けは間違っている。だってこんなに美味しいんだもの! 舌馬鹿の両親を持つと大変だ。特に前世の記憶などがある場合には。
「流石公爵家のシェフだな。味は王宮にも劣らない」
「ありがたきお言葉です。殿下」
「私の家のシェフもウィンスター家に負けぬぞ。今度遊びに来るといいよ、イザベラ」
「うふふふ。嬉しいお誘いですわ」
行かないですよもちろん。
なんて茶番劇を繰り広げながらの食事は、それなりに疲れる。美味しくない食事と簡単な両親の対応、美味しい食事と疲れる伯父への対応、どちらがいいかというのは難しい話だ。
食事が終われば、そのまま食後のお茶へと入るのだが、いい加減私は用事を終わらせたいので応接間に運んでもらった。伯父はそのまま締め出した。邪魔だもの。メイリーン様は居残ったが。
「さて、殿下。これをお読みください」
そう言ってどさどさと置いたのは、隣国の歴史書だった。もちろん、我が国の言葉に翻訳されている。
「これは、歴史書か」
「一番はご自身の目で見て耳で聞くことなのですが、昔の事は無理がありましょう。なので、歴史書ということになります。先日言った様に、その国に都合がよいように書かれるのが歴史書です。だからこそ、他の国のものを読むことも、まあ重要になるのではと」
「本当に本を貸すだけとは」
ローランドも何を言っているのかね。
「我が家では書物を読む者は少ないなあ。頭は筋肉だらけの輩が多いのだろう」
メイリーン様も興味深げに本を捲る。
「それは先日話した、女性騎士を置いている国の歴史書です。最近のものですので、女性騎士が活躍した話も載っているかと」
「おお、それはありがたい!」
目を輝かせたメイリーン様は、食い入るように読み始めた。ローランドも熱心に読んでいる。時間がないので、私は我が国との戦争があった時代を教える。
本で書かれていること以上の事は、私は教える事が出来ない。読めるのなら本で読んでもらった方が早いのだ。
ディメトリが淹れた紅茶を味わいつつ、ぐったりと椅子に座りこむ。伯父との会話は疲れるばかりだ。両親みたいに短絡だとありがたいのに。無理な話だ。
第一、侯爵家だって公爵家には負けるけれども歴史のある旧家の筈だけれど。母親しか残さなかった亡き祖父母のせいだな。
そう、祖父母に会った事がないと思っていれば亡くなっていた。父が婿入りした直後に馬車で事故にあったのだとか。何だか怪しい事件だが私に何とかする術はない。成仏しておくれ、祖父母。
婿がやったのか娘がやったのか定かではないけれど、少なくとも祖父母が何とかしてくれていたら私は普通に貴族令嬢出来たのに。
「……ところでイザベラ殿」
歴史書が読み終わったらしいメイリーンに話しかけられる。先程まで夢中だった書物は、ぽいっと机に放り投げられていた。高いんですけど、書物。
「何でしょうメイリーン様」
「君の従僕2人は蒼い目をしている気がするのだが」
そこに突っ込んできたか。
私はお茶を一口飲み、溜息を吐きながら言った。
「ええ。紛れもなく『蒼の証』ですわ。父が外で作った子ですの。わたくしが引き取って飼育していますわ」
「飼育だなんて、酷いんじゃないか」
書物から顔を上げたローランドが苦言を呈す。馬鹿王子は黙って本を読んでいろ。
「事実ですもの、他に表しようがありませんわ。無駄に血を気にする父や母が貴族の子として引き取るわけがありません。わたくしの従僕見習いとしてでもなければ、どうなっていたことやら。全く、両親の尻拭いなんて娘のする事ではありませんわ」
ショタ好き爺婆に愛でられていたでしょう。それはそれで見物だろうけど。
「はっはっはっ、イザベラ殿は優しいな! お前達、名前は何と言う」
メイリーンに私はどのように映っているのだろう。少し心配になってきた。
「ぼくはディメトリといいます」
「ぼくはあんどりゅー、です」
「お前、こんな子供に働かせているのか」
ローランドの冷たい視線なんて私には通じない。
「お黙りなさいな。庶民では貧乏な家庭では動ける人は働くものですのよ。彼らは庶民です。両親の様に働かない事こそ優雅な証と言いたいのですか」
庶民なんて知りません。だってほとんど屋敷にいたから。知ったかぶり万歳。私は椅子から立ち上がり、スカートを軽く叩いた。書物を読む気がないのなら、別の方法だ。
「イザベラ殿。一応殿下は王子だぞ。あまりそういう事を言うのはどうかと思うがね」
鋭くなったメイリーンの視線に貫かれる。ちょっと気を緩め過ぎたかもしれない。そうだ、馬鹿でも一応王族だ。私なんてぷちっと殺せる存在だ。
「これはこれは失礼いたしました。殿下に対してお黙りなさいだなんて。処刑ですか」
「い、いや、そこまでではないが、う、うん」
しどろもどろ気味のローランドは本に隠れるように顔を伏せた。王族ならもう少し威厳を身につけるべきだと、私は思う。
「心の広い殿下に感謝いたします。では、本を読む気がないようでしたら行きましょう」
仁王立ちになった私は、そう言った。本から顔を覗かせた殿下が、きょとんと首を傾げる。
「は?」
「行きましょう」
「いや、だからどこに」
「街に行きましょう」
「しょ、正気か!?」
「イザベラ殿、それは賛成しかねるが」
メイリーンからも中止の要請が出た。だがしかし、私は決めているのだ。ローランドと庶民の街に繰り出そう、と。
「王族たるもの、お忍びで国民を観察しなければなりません」
そんなルールはありません。
「そんな話聞いた事がないぞ! それに、一人で歩くなんて王族としての威厳がっ」
「わたくしとディー、アンがおりますわ。第一お忍びですよ。大勢引きつれてぞろぞろ行くものではありません」
「殿下が街に出ればすぐに騒ぎになる。殿下の外見は目立ち過ぎるのだ」
「そんな時にはこれ」
じゃじゃーんと見せたのは、ファーガスに使わせていた目の色を変えるスカーフと同じ仕組みの帽子であった。爺に言わせて持ってきてもらったのだ。それを殿下に被せれば、目は黒に染まった。帽子で髪は隠れるし一石二鳥。
「それから、これ」
質素な外套を身にまとわせれば、あら不思議、全力でお忍び貴族です。オーラは隠せないとかいう話ですかね。
「……確かに、殿下だとは思わないな。こんなものがあるとは」
「あるのです。さあ、殿下行きますよ」
庶民フードが私を待っている。
「しかし、見つかったら」
「そのままならば見つかりませんよ。多分」
「多分だろう!?」
「ぐちゃぐちゃ言っていないで覚悟を決めたら如何です? きんきら金の王宮から眺めて見える範囲が国だとでも、本気で思っておりますの。その目で見たものこそ、経験になりえるのですよ。王宮で聞く美しい報告と生きている国民の姿、どちらが正しいかぐらいお分かりでしょう」
だから黙って買い食いしようぜ。とは口が裂けても言えない。建前を並べ立ててみたが、王子のお忍び視察に巻き込まれた哀れな令嬢を演じるつもりなので、彼が行かなければ意味はない。
「……分かった。行く」
「殿下!」
「メイリーン嬢も来てくれ」
「御意」
私は素早くドレスを脱ぐ。その時、ローランドがぎょっとした様に目を見開いていたが、残念ながら下着姿と言うわけではない。貴族的ドレスの下には、庶民的質素な服装を着こんでいた。滅多に屋敷から出ない私である。こういう機会を利用せねば。買い食いは一生出来なくなってしまう。
「ななっなっ」
「女性が行き成りドレスを脱いだからといって驚かないでくださいな」
「驚くに決まっているだろう!」
「あら、殿下は王族でしょう。その種を狙う女狐ぐらいいるのでは」
「お、女が種とか言うな!」
「男性は言っていいなんて、差別ですわ」
「う、うううるさい! さっさと行くぞ!」
「はっはっはっはっ。イザベラ殿は潔いな」
応接間にある窓をこっそり開け、外を確認する。見た感じ、警備はしていないようだが。
「ディー。外に監視する精霊はいる?」
「ぐるぐるしています。きづかれれば、けいほうがなるようです。……いまです。せいれいが、いなくなりました」
「よろしい。行きますよお二方」
「その者には精霊が見えているのか!?」
「いいから外に出ましょう」
窓に足を掛けて飛び出す。何とか気付かれずに脱出出来たようで、警報のようなものは鳴らない。とはいえ、この格好で貴族の住宅付近にいれば怪しまれる。きょろきょろして挙動不審なローランドの手を引き、駈け出した。
10分も走れば雑多な雰囲気漂う、商店が立ち並ぶ通りに出た。タウンハウスを選ぶ利点の一つとして、広大な敷地に邪魔されないというのがある。無駄に庭の広い貴族の屋敷と違って効率的だ。店も近い。
日頃の運動不足でぷるぷるする足を引きずり、私達は人々の間を歩く。びくびくしている殿下と、興味深そうに周りを眺めるメイリーン、真面目についてくる年少2人といった、怪しさ満点の集団であった。
店は様々なものがあった。恐らく、貴族の住宅が近いからか、ここ周辺の住民も所得が高いのだろう。アクセサリーや食べ物の屋台が目立つ。嗜好品だ。
私は初めに目に入った、何やら美味しそうな匂いのする屋台に近付く。そこでは、薄く焼かれたナンの様な皮の中に、新鮮な野菜と焼きたての肉とソースを包んだものが売っていた。ケバブっぽい。これこそ屋台フード。
「おじさん、こんにちは」
「やあ、らっしゃい。お嬢ちゃん1人かい」
こういう時こそ外見年齢を使うべし。子供は無邪気子供は無邪気子供は無邪気。
「お使いの途中なの。ちょっと寄り道よ。秘密ね」
「がっはっはっ。母ちゃんにばれないといいな」
「うん! じゃあこれ、2つくださいな」
「おう。毎度。肉、一枚サービスしとくな」
ファーガスに稼いでもらったお金で支払う。1つ400ルピーだった。小銭を渡す。高いのか安いのか分からないけれども、日本的お祭り価格でいくならば、相場よりも高い筈。とはいえ、しっかり大きなケバブっぽいものは、ずっしりとしていて、かなりボリュームがある。
そう言えば、この世界での通貨はどうなっているのだろうかと、今更なことを思い出した。一応小銭と札をある程度持ってきたが、どの程度なのかは分からない。それぞれに数字が書いてあるため、価値は分かる。基本的には日本のような通貨のようだ。ただ、5円や50円などといった間のものはないようだ。800ルピーとか100ルピーの小銭を8枚出さなければならない。地味に面倒臭い。
お金の単位も、ゲームの中と一致していた。
「ありがとう。おじさん」
「ああ、また来いよ」
屋台のおじさんから受け取ったケバブっぽいものを持って、殿下達の元へと戻った。ローランドがどん引きしているのは買い食いをしようとしたからだと思う。年齢相応の会話をしていたからじゃないと信じている。
「殿下、食べますか」
「何だ、これは」
「知りません」
恐る恐るといった具合のローランドに食べ物を押し付け、私は一口噛みついた。むっちりとした生地と、しゃきしゃきの野菜。酸味のきいたピクルスの様なものと、弾力のある肉。さっぱりとしたソースと肉汁が合わさって生地に染み込んでいる部分は特に美味しい。これは、当たりだ。
高級肉もいいけれど、やはり噛みごたえのある安い肉も嫌いじゃない。たまには食べたくなるものだ。2,3口食べてもあまり減らない。買い食いというよりは、しっかりとしたお昼御飯の様なものなのだろう。指に着いたソースを舐めつつ、もぐもぐと味わった。その後、ディメトリとアンドリューに譲った。もしゃもしゃと食べる2人でも、ケバブっぽいものは多いらしい。時間がかかっていた。
「これはうまいな」
半分に分けた奴をメイリーンが食べていた。殿下と半分こしたらしい。仲が良いことで。メイリーンはケバブっぽい奴を気にいったのか、にこにこと食べていた。殿下は肉を噛み切るのに必死だった。笑った。
それから次々と気になる屋台や店へ突撃していった。
揚げた芋を串に刺した奴、ハーブが使われているのかさっぱりとしたジュース、ドーナッツのような揚げ菓子、色硝子のアクセサリー、茶葉、通気性のいい布、ナッツ類が入ったパン、水晶玉、蜂蜜、丈夫そうでいて着け心地のいい外套、練った飴を細工したもの、綺麗な羽根のペン、野菜の串焼き、髪留め、腸詰を焼いたもの、ポップコーンのような菓子。
これだけ買って、やっと持ってきたお金が底をついた。お腹はいっぱいである。幸せだ。豚になるのも分かる。
「……おい、買い過ぎじゃないのか」
「いいんです。貴方だって十分楽しんだじゃないですか」
「そ、そうだが」
揚げ菓子に関してはこんなうまい菓子は初めてだーって言っていたぐらいなのに。
取り敢えず、ファーガスがかなり稼いできた事は分かった。これで、ファーガスが稼いできた金額の4分の1程。随分と金になるようですね、ファーガス君。
ぱくぱくとポップコーンの様な、不思議なスナック菓子を食べる。こういうのって止まらないやめられない。
「イザベラ殿、これじゃあ国民の視察というよりは食いもの屋の調査だぞ」
「視察すべきは彼であって私ではありませんので。私は私なりに楽しみます」
「連れ出しておいてそれはないだろう!」
理不尽だと叫ぶローランドに冷たい視線を送っておく。たっぷり奢ってやったのに何の問題があると言うのだ。ディメトリとアンドリューもお腹がいっぱいなのか、ちょっと寝そうだった。お菓子の入っていた容器をゴミ箱に捨て、私は立ち上がる。金も尽きたし帰ろう。
「よお、坊っちゃん。お前、金持ってるんだって?」
どうやら簡単には帰れないらしい。ローランドの肩にがっしりとした手を置いた、見るからにならず者な中年男性がにやにや笑っていた。ローランドに関しては硬直している。
「お金を持っていたのは私よ。おじさん」
「嘘つけよ。見るからに金持ってそうなのは坊っちゃんだろうが。黙ってろ、どうせ使用人だろう」
失礼な。
「アン、この魔法陣にちょっと触れなさい。ディー、精霊に出来る限り弱い威力でお願いって頼んで頂戴」
こそこそと指示する。悪者さんは金蔓と思わしきローランドに夢中だ。脇に手を入れてゆさゆさと振っていた。それで金の音がすると本気で思っているのだろうか。馬鹿なのか、馬鹿なんだな。
少しずつ大気が動き出す。微かに風が吹いてきた。私の方向から、悪者の方向へと吹いている。メイリーンが助太刀しようと構えていた。今動き出されるとちょっと邪魔だ。先手必勝。
「必殺! ファンデーション爆弾!!」
手の中に隠していた丸い玉を悪者と自分の中間に投げつける。ばふっばふっという音を立てて、玉は弾けた。その途端、風に乗って舞い上がったファンデーションが悪者を襲う。
「げほっくそっごほごほっ! 目がっ目がっ」
天空の城を夢見ているのでしょうか。
「ふははははっ。中年女性の小じわ、毛穴をみっちり塞ぐための粒子の細かいファンデーションを味わいなさい! 化粧の辛さを知ればいいんだわ! それを塗りたくられるうら若き女児に憐みを!」
腰に手を宛てて笑っていれば、メイリーンがローランドを救出していた。彼の肌は見事に化粧が塗りたくられていて、素晴らしい美肌である。
逃げるが勝ちと言う事で、咳き込んでいる悪者を置いて走っていった。
暫く走れば、小さな川の傍に出た。すぐさまローランドが顔を洗いに行く。じゃぶじゃぶと洗えば、やっと視覚が復活したのか、血走った目で私を睨みつけた。
「お前、よくも」
「別に怪我する訳でもありませんし、とても平和的解決だったと思いますが」
ファンデーションに有害物質が入っていなければだけれど。何故だか化粧品はオーガニックに拘る母だから、多分大丈夫だと思う。
「先程の作戦は60点だな。汚れ過ぎだ」
メイリーンの評価はぎりぎり合格であった。ぎりぎりでも合格は合格である。問題ない。もとから100点は目指していないし。
ローランドの外套を軽く叩き、ファンデーションを落とす。舞い上がる粉にローランドは嫌そうな顔をしていた。トラウマか、トラウマなのか。
「で、いかがでした。庶民の暮らしは」
「誰でもあんな目に遭うのか」
「あそこ、治安はいい方ですよ。貴族の住まいが近いんですから。しかし、そんなところでも無暗矢鱈に金を持っているアピールをすれば、悪い人々に目を付けられるでしょうね」
「……わざとか」
「……ええ」
いや、嘘です。推測です。平和が一番日本の感覚で買い物していましたすみません。
「しかし、あそこでもいい方だとは。柄の悪い奴に絡まれていても、誰も助けようとしないんだな」
「皆騎士というわけではありませんしね。自分に火の粉が掛るのが嫌なのでしょう。力のない者はもめ事に関わらないものですよ。まあ、こんなところにいる柄の悪い奴なんて、もっと下層に行けば可愛いものでしょうけど」
走ってぐったりとしている私は、適当に答える。ディメトリとアンドリューに関しては、若さなのか爺の訓練の結果なのかぴんぴんしていた。憎い。
「あの化粧の玉は面白かった。イザベラ殿の自作か?」
「そうですわ。ファンデーションを固めて、魔法で膜を作りましたの。私のから一定距離離れると破裂しますわ」
「酷い目にあった」
「これも学びですわ」
「……酷い目にあった」
しみじみ言わなくても。
「いやしかし、なかなか楽しい視察だったな。殿下もそうは思わないか」
「まあ、王宮にいるより刺激はあったな」
「危ない刺激にご注意ですわね」
「お前が言うか」
ええ、私が言いますとも。
「さて、ではそろそろ帰りましょうか。伯父様に見付かってしまいますもの」
私はにっこりと笑って立ち上がる。恐らく伯父にはばれているだろう。それもいい経験としようじゃないか。最悪ローランドのせいにしてやる。
買い込んだ色々なものをディメトリとアンドリューに持たせ、私達は貴族の世界へ戻って行くのであった。
追記。
伯父のタウンハウスに戻ってみれば、素晴らしい笑顔の伯父とイースが待ち構えていた。全力でばれているらしい。流石は内政を支えるウィンスター家の当主。王族にも怖気づかないとは。
この後タウンハウスでは伯父が、屋敷では爺に滅茶苦茶怒られた。
はい、反省のポーズ。
お読みくださりありがとうございました。




