絶望系女子は可愛い
最近やったゲームがおもしろすぎて私生活を投げ捨てていました・・・すいません
あれから二、三日経っただろうか、毎日馬車に揺られて一日を過ごしている、朝早くに出発し、夕刻に野営する。
ここ数日水浴びもしていないので体から酸っぱい匂いと黄白色の雲脂、元々黒い私の地肌では分かりにくいが手や頭を掻くとポロポロと垢が落ちてくる。
それにましても朝日を迎えるごとに人の数が減っているのが不気味だった、彼らはどこに行ってしまったのだろうか。
あの日からテスと名乗った赤毛の男は話しかけてこない、時々見かけるのだがあちらから関わろうとはしてこない。
森の中に続く小道を馬車が進んでいく、暇すぎる私には空を見ることしかやる事はなかった・・・今日のお昼は芋のスープだった。
ずっと続いていた森が途切れ草原が目に映るようになった。
「あ゛~、やっとっすねぇ~」
遠くでテス、赤髪の男が荷台に乗っているおじさんに話しかける。
「あぁ、今日中にはつくだろ、しかし減ったな」
何が減ったのだろうか、お腹?
「そうっすねぇ、4枚も5枚もほとんどいなくなっちまったし、今回は意外と多く生き残っちまうかもしれませんね」
「ハハッ、どうかな?どう頑張ったって無理な気もするけどねぇ」
何があるんだろうか、私たちはどこに行くんだろうか。
「いやいや今回こそh、おっ見えてきましたね」
テスが草原の先を見ている草原につづく道の先には小さな点が見えた、それは荷台が進むにつれて大きくなっていく。
「はぁ、もう私も年だしこういうことは引退したいよ」
「あはは、こっちは身入りのいい仕事で大満足っすけどね!」
それは灰色の壁だった、何かを囲っているような大きな壁で、壁の周りには穴がありそこには水が溜まっている。
近づいていくと大きな木の門が灰色の壁に取り付けられていた、水はお世辞にも綺麗とは言えず、糞尿の匂いがした
大きな木の門がゆっくりと開く、壁の中には沢山の石造りの家が並んでいた。
(しずか・・・)
こんなに多くの家があるのにそこにいるはずの人の賑わいはなかった。
路上にチラホラと見える私と同じか、それ以上に汚い人が地面に落ちた何かのゴミを拾っては家と家の隙間に入っていく。
家々の二階にある木の扉がついた窓からは時折ぎらつく様な、異様な目を持った人間がこちらを見ている。
しばらくそんな風景が続き、二度目の分かれ道を右に曲がると大きな建物が見えた、とても大きく、外で見た石壁のように何かを囲んでいる。
さっきまでとは違うことは時折大勢の人間の叫び声が空気を震わせ、誰かの、何かの雄叫びが空気を引き裂いている。
「しっかし貴族ってのもくだんねえことするよなぁ」
「黙っとけ、誰かに聞かれたらお前もこうなっちまうぞ」
赤毛の男・・・テスが言った言葉におじさんが私たちを見ながら静かに言う。
「こえーこえー」
だいぶ浮かれたような彼の発言と顔、よく見ると周りにいる彼の仲間も同じように浮かれた顔をしていた。
街道を行く馬車が大きな石壁に近づいていく、石壁には門の形の穴があいていてそこから先は薄暗くてよく見えない。
だけれども、その奥からは歓声と怒号が時折聞こえてくる。
馬車はその穴には入っていかず、壁に沿うようにその行き先を右に変えた。
私の乗る荷台がその穴を通り抜けようとした時、吹いてきた鉄の匂いと生暖かい空気が私の体にまとわりついた。
その時の私には、その得体の知れない空気に身を震わせることしかできなかった。
馬車がしばらく行くと木を鉄で舗装した扉が見えてくる、さっき見た穴よりだいぶ小さいその扉の前で私たちの乗る荷台が止まった。
「さぁ降りた降りた!」
荷台が傾きはじめる、私たちは突然のことに反応できず地面に放り出された。
「く、ぁ・・・」
肺から空気が漏れ出る、他の子供たちの上に落ちたがそれでも衝撃が体に響いた。
計ったように扉が開き中から何人かの覆面を被った人たちが現われる。
「ご苦労だった」
そう言って白い袋を馬車から降りたおじさんに渡す。
「いえ、御貴族様の為とあらば・・・これからも何卒組合をご活用ください」
おじさんが頭を下に向けたまま白い袋を受け取るのを倒れながら見ている。
不意に腕を掴まれて立たされる。
「あぐっ!?」
私たちのことなどお構いなしといったふうに覆面をかぶった人は元来た道を私たちを連れて行く。
ザリザリと音を立てて私たちが連れられ、中には入りまず最初に気づいたことは異臭だった。
腐り、膿み、死んで、捨てられる何かが私の中の何かを削っていく。
むき出しの土と、ぬかるんだ赤白く茶色の泥に私の足跡が新しく飾られていく。
通路の両側は太い木で出来た格子で中には私のような小さな子供もいるし、テスぐらいの若者もいる、全員に共通することは全員が恐怖にまみれた目で私たちを見ていること。
しばらく歩いたあと空の檻の前まで来ると覆面が何かを呟く、すると木でできた格子が上に登っていく、それを見てほうけてる私と、おそらくもう片方に掴まれてる男の子?
覆面の男は格子が半分まで、私たちの背丈くらいまで上がると私たちを檻の中に投げ入れ、また何事かを呟く、すると木の格子が勢い良く降りて私たちは檻の中に残された。
それで興味を失ったのか覆面の男はそのまま通路の先へと歩いて行った。
木の格子で出来た壁の他は石で出来ていて、微妙に後ろに向かって落ち込んでいるようだった、溝がありその先には穴が見えた。
私と一緒にこの部屋に入れられた男の子は木の格子を掴んで覆面の男の行った先を見ている。
これからどうなるのだろうか・・・足の裏についた気持ち悪い感触を石の壁に擦りつけながら考える。
(なんだっていいや・・・)
男の子は何か叫んでいるようだったけど私にはどうでもいいことだよね・・・?