六章 みとめるおもい。
「ということで、外に張り付いているねずみの駆除と行きましょうか」
そんなサナンにフィルは笑って銃を手にして扉に向かって放った。
一発の銃声。
壁に穴が開いたと思いきや、どたばたと音が立った。
すかさずサナンが扉を開けて音の方向を見る。
「逃げました?」
扉が死角になって見えなかったらしく、あくまでも穏やかにフィルが聞いてくる。
「いいや、ここに転がっている」
肩に銃弾が入ったらしく、もだえて転がっている男を見下ろしてサナンが笑いながら言った。
「みごとだな」
「あなただったら完璧にしとめているでしょう?」
「まあな。殺すつもりで撃ったのか?」
「一応」
一軍医が言うようなことではないが、さらりと言って、銃をしまったフィルはサナンの隣に立って首をかしげた。
「気づかないと思いましたか?」
そんな言葉に男は脂汗を浮かべながら口をパクパクとさせる。
フィルは顔にサディスティックな表情が浮かべて、しゃがみこんだ。
「お前らぁ!」
と、階段をどたばたと下りてくる音が聞こえた。
サナンとフィルは顔を見合わせてしかめると、ふっと小さく笑った。
「いきなり銃ぶっ放してなにやってんだ!」
腹の底に響く声にサナンが困った顔をして頬を掻いた。フィルは立ち上がってなにもなかったようにつくろっている。
「どっちだ。サナンか!」
「いんや、フィルですよ」
肩をすくめたサナンを思い切り殴ってキースがため息をつく。ぞろぞろと連れてきたのは衛兵だ。
「想定内なんじゃないですか」
「だからといっていきなり銃をかますな」
「だってあなたの教え子ですし」
しれっとした態度でそういうフィルに、キースが深くため息をついて、衛兵に足元で転がっている男を連行させていった。
「なんだかんだいったってちゃんと見てるんですね」
「目を離したらなにをしでかすかわからないからだろう。すこしは安心させろ」
そう言ってキースはカーペットについた血のあとをつま先でこすっていらだたしげに舌うちをした。
「御心配をおかけしてすいません」
サナンがそう言って深々と頭を下げる。
さすがにこの行動はフィルも予想していなかった。
あっけにとられた顔をしているキースにサナンは顔を上げて、姿勢を正した。
「お前……」
「言う時にはいわないとな。いつも大佐には迷惑かけてるし」
肩をすくめて、大佐、という言葉に強調をおいて、にやりと笑ったサナンにキースはばつが悪そうに顔を背けその頭を叩く。
「ようやくわかったか、このバカモノ」
そんな怒声を聞いて、あわただしくこの場に駆けつけようとした数人の衛兵の足がすくんだ。
「はいはい」
くすりと笑ってサナンが肩をすくめる。
そして切り替えるように目を閉じて再び開いた時には強い光が宿っていた。
「いよいよ忙しくなるな」
「……ええ」
笑うサナンとうなずくフィルの姿を、目を細めるようにしてみたキースは、ふっと肩の力を抜くようにして息をついて、そして執務室へ帰っていった。
「さ、おっさんも帰ったところで、俺は寝るかな」
「おい」
「いいだろう。ここ最近まともに眠っていない。医務室借りる」
「病人以外は寝かせませんよ?」
「どこが病人以外だ。俺だってけが人だ」
自分の右肩を指してにやりと笑うサナンに、フィルは深くため息をついて目を閉じた。
「勝手にしてください」
「んじゃ勝手にする。じゃ」
そう言って執務室の抜け穴を使って医務室へ駆け込み、ベッド一つを占領したサナンが、フィルの部下達の猛攻に合うのだった。




