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Da sein―待ち人お嬢とやさぐれ貴族―  作者: 霜月美由梨
五章:廻り始める歯車
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五章:廻り始める歯車

 その視線を受け止めて、そして、周りの視線を無視してシオンがそっと目を閉じた。

「火薬の受注書さえ出てくれば、クロです。総帥だけではなく、王城関係者、それと、列車の関係者も関係しているかもしれない」

「……軍部では荷が重いわけだ」

「そういうことです」

 素直にうなずいたシオンにテオが驚いた顔をする。

「そうか。……そうだな。密偵を二人貸す。情報は随時ここに」

「はい。……差し出がましいお願いをしますが、総帥、ならびに側近五人の令状を五日後までに出していただけませんか?」

「急だな」

「はい。五日後に、総帥と、決着をつけなければならないので。できませんか?」

「なるべく急ぐように言おう」

 ありがとうございますとシオンが深々と頭を下げる。

「セシア、ガーネット。手伝え」

「は」

 男の低い、女の高い声が響きどこか他ともなく現れてテオの後ろに着く。

 度のきついメガネをかけた男と、長い黒髪の華やかな女だった。

「貴様が権力に走ろうとしたならば」

 老人が二人にうなずいてみせ、シオンに目を向けて最後にと付け加えるように言われた言葉に、シオンがうつむいてふっと笑った。

「私のすべきことは、調和を図ること。天秤の腕を捻じ曲げることなどいたしません」

 顔を上げてきっぱりと言ったシオンに、老人は面白くなさそうに鼻を鳴らして、目を閉じた。

「行け」

「はい」

 うなずいて、部屋を出ていく。

 がちゃりと扉が閉まる音と共に場の空気が緩んだ。

 思わずため息をついていたテオに肩をすくめてみせ、シオンがテオの後ろについている公安部の密偵の二人に頭を下げた。

「はじめまして」

 形式どおりに頭を下げたシオンにテオはランプを消して、荷物を入れている袋にしまった。

 シオンの挨拶を受け会釈を返す男女。

 そして、女性が一歩シオンに歩み寄って胸に手を当てて首をかしげた。

 つややかな黒髪がさらりと豊かな胸元にこぼれる。

「私たちはなにを?」

「一人は、私どもが集めた資料で罪状を。もう一人は、こちらの密偵のサポートをしていただきたいのですが」

「それならばわたしがサポートに。ガーネット」

「ああ。俺はこっちが向いている」

 そう言ってシオンの手荷物をひったくった男は、知的な印象を持たせるメガネをくいと上げてにやりと笑った。

「五日後まで、ですね」

「ああ」

 うなずいたシオンに男、ガーネットは手荷物の紙の量を確認して一つうなずくと得意げな笑みを浮かべた。

「ならば三日後までに仕上げましょう。写しなどを用意するのに時間を食います」

「無理を言って申し訳ございません」

 すっかりと大人の対応をしているシオンを、腹の中で笑いながらテオは、国賊を取り締まる公安部の二人を見て顔を引き締めた。

「では、ガーネットさんは俺について、あと、セシア、さんは、シル」

 その声にしたがって物陰から出てきたシルヴが快活な笑みを浮かべて、シオンの隣に立った。

「ひっさびさの大仕事っすか?」

「この人と、やつらの首を絞めるネタを」

「了解です。では、早速移動しますっかね?」

 セシア、という密偵の女性に笑いかけたシルヴの背中を見届けて、シオンは王城を出て執務室へ帰っていった。

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