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他のクラスメートもぽつりぽつりと増えて来た。
テンションあげあげの琴音に1限目の準備をしながら話しかける。
「そんなことないよ。琴音こそ今日もまた…?」
魔梨亜は呆れ顔で琴音の全身を眺める。
栗色のセミロングの髪はボサボサ。ぽつぽつと制服に着いている毛玉。ところどころ擦りむいて綺麗な血がでているのも目立つ。
「いやはや、犬と絡むのはやめられませんからね〜」頭の後ろをかきながら恥ずかしそうに呟く。
「あはは…。ムックルは人懐っこいからね…」
ムックルと言うのは、うちの近所で飼われている大型犬なのだが、魔梨亜や琴音がとおるとこちらの気も構わずタックル(おそらく構って欲しいだけ)してくるのだ。
「マリちゃん今日暇だったら一緒にどう?」
私の身体を気遣ってか気まずそうに誘って来る。
「いいよ。日傘さしていけばなんとかなるだろうし」
「本当?やったー!」
琴音が無邪気にはしゃぐ。あんなに喜んでもらえると思わずこっちまで微笑んでしまう。
「よお、楽しそうだな。俺も混ぜてくれよ。なんてな!」
振り向くとそこにはクラスメートの磯田渉がたっていた。
突然のことに魔梨亜が思わず目を逸らす。
「磯田君、おはよ〜」
「おう琴音、おはよ。俺って神月に嫌われてんの?」渉が悲しそうに質問する。「いやあ…マリちゃん男の子苦手だから」
「ちょ、琴音ちゃん。変なこと言わないでよ」魔梨亜が焦りながら訂正しようとするが、いざ渉がこっちを見ようとしたら思わず顔を逸らしてしまう。
「ははん。なるほどな、これは重症だな」
爆笑している渉を魔梨亜が冷ややかな目でみながら言う。
「まあ磯田、君もまた昨日C組の子を悪口言って振ったんだって?それにこないだは一年の子も。評判良くないよ?」
「ぶはっ!急になに言って…」
「え、磯田君ってもてるんだね」
焦る渉とは裏腹に尊敬の眼差しを送る琴音。
「つまり、私が言いたいのはその気もないのにあんまり女の子と絡むのやめなよってこと」
「悪いかよ〜。今年は受験だしよ、彼女とかは大人になって責任とれるようになってからで良いかなって思ってるし。
それに俺って男友達少ないからつい…」
いつものちゃらちゃらな言葉とは裏腹に真面目な言葉が飛び出した。
「わお。磯田君の口から受験や責任なんて言葉がでるなんて!」
「それどういう意味だよ!まあ、そろそろ授業だからまたな!」
渉は軽く会釈すると窓辺の席に向かっていった。
「磯田ってよくわからん男だね…」
「あれあれ?マリちゃんの口から男子のことがでるなんて。もしかして好きになっちゃったの!?」
琴音がはっきりと言いにくいことをずばずば聞いてくる。
「ふぇ!?んなわけないでしょ!」
「顔紅くなってるよ?
魔梨亜が「ぇ゛」と声にならない声をあげて顔を隠す。
「ごめん、嘘!」「もう…ついてけない…」机に突っ伏したままため息をつく。
隣から琴音の笑い声が聞こえるが無視をする。
誰かさんのおかげで恥ずかしいやらなにやらで顔が紅潮をさせながら1限目の授業を迎えた魔梨亜だった。