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ディスペイアの新たな旅立ち

今回からディスに視点が戻ります

side ディス


ハレス、首都『クウェル』のギルドはクラミュス大陸のギルド本部であり、通常のギルドより何倍もでかい建造物である。

外観は三階木造建ての少し豪華な屋敷程度だが、その実地下室や、外部施設などもあわせると城よりもでかい。このクラミュス・ギルド本部はクウェルの商業区全体といっても過言ではないのだ。

そして本部内施設の一番真ん中はロビーになっていてここでは様々な情報交換や依頼の受注などが引っ切り無しに行われており活気に満ち溢れている。

俺もここの受付に用があって来たのだが、人が多すぎて後回しにされていた。

しかしここの興味深い光景を見て退屈する事はない。周りには色んな人間がいるのだ。巨大な武器を持つ物、鍛え上げられた肉体を持つ物、明らかに周りとは違うオーラを放つ魔法使いなど、更には学生のように興味心身に短剣に来ているような子供までいた。八年間、閉じ込められた空間に住んでいた俺にとってこんな風にいろんな人間がいる光景というのは物珍しい


しかし俺はその中でも一際浮いているようだ。まぁ、今の服装はハーフの関係上また黒いローブに、大きなカバン、そして魔法使い風の帽子を深々と被っているのだから浮いて当然だが。ついでにクーは腰に二つあるサイドポーチの一つに収納されている。どうやら気に入ったらしい


「……なんだ、あれ?」


「……新手のファッションじゃない?」


「……趣味悪いわねぇ」


常人より遥かに高い聴力はこんな喧騒の中でもヒソヒソ話が聞こえてしまう

……こういうのを聞くたび耳がいいというのもたいがい不便だなと感じてしまった。悪口には慣れているが冒険者に趣味が悪いとか言われたくない。ファッション≠機能性だからファッションするなんぞ三流どころか、冒険者の価値すらない。だから冒険者同士でファッションのことを語るなど言語道断であり、意味など欠片も持たない


(若干考え方がレイエルに似てきたか……まぁ、いいか)


この一ヶ月、レイエルには実戦、そしてライブラには魔法の基礎の講義をみっちり受けた。技術面はライブラに、実技はレイエルに教えを受けたのだがここ一ヶ月俺はまともに魔法を発動させていない。剥離症の後遺症か知らないが魔法の制御が不安定になってしまっているのだ。ある程度時間を置けば元に戻るだろうという事で今は平気だとは思う。そして俺の左腕に巻かれた鎖型のブレスレットはライブラが言うには不安定な俺に対する保険らしい

このブレスレットには二つの効果がある、一つはオウギュルストの魔力量の曖昧な感覚を数値化し自分の限界量以上の魔力消費を抑えるため。これにより自分で決めたセーフティラインを超えない為の目安になる。もう一つ目は……教えてもらっていないので知らない。ライブラはあまり俺の事を好ましく思っていないようらしく、最後まで俺に魔法を教えるのを反対していた。だが一週間ぐらい経った後急に教える気になったらしく、そこから基礎知識と簡単な応用だけを教わった。ライブラが言うにはこれだけで能力は桁違いに上がるらしい


それともう一つ気になる事がある……修行期間中一回もレイエルが魔法に関して口出しした事が無かったことだ。レイエルは魔銃士としても優柔だが魔法使いとしても天武の才を持っているとシクロから聞いたが、魔法に関してレイエルは無言だった。何か理由であるのだろうか


《二十二番でお待ちの方!四番カウンターまでどうぞ!》


そんな事を考えていたらロビーに響き渡る拡声器で拡声された受付嬢の案内アナウンスが聞こえてきた。ようやく順番が回ってきたかと、少しため息を吐きながらカウンターへと進んでいく

カウンターへ行く用事は勿論依頼を受注するためもあるのだが、出て行く前日にレイエルから貰った『紋章』とやらのことについても聞くという目的もあった。


――これから先の旅路に必要になるものだろう。もっていけ――


渡された紋章はペンダント状態のアイギス表面に描かれていて、魔力を流す事で空間上に浮かび上がらせる事もできる。一種の魔法であるそうだ


「お待たせしました、ご用件はなんですか?」


受付に着いたら定型文を張り付いた作り笑顔で俺に問いかけてきた受付嬢がいた。こういう職業の人は普段笑えているのか気になるところではある


「少しだけ聞きたいことがある、『紋章』って何だ?」


「少し長くなりますが、『紋章』とはギルド内で認められたパーティに与えられる軍で言えば勲章に近いような物です。それがあればギルドと契約している宿泊施設や武器屋や魔導具屋などの施設の優先利用、そして国境をフリーパスで越えることが許されます。ただ最近ではギルド否認可の『紋章』も存在するので区別するために公認の『紋章』には魔力に反応する用細工されていますね。『紋章』は一つのパーティに一人一つずつ与えられる物で、もし『紋章』の持ち主が死亡・または行方不明した場合は『紋章』はギルドに変換され、正式な手続きを踏めばそれを継承する事もできます……『紋章』についてはこんなところですね」


「実はその『紋章』をとある人物から譲り受けたんだが、どういったものかわからない。公認されている物かだけ確かめて欲しい」


「……確かめるだけなら『紋章』本体に魔力を通すだけで確認できますよ?公認されているものは『紋章』事態を空間上に投射できるようになっていますので」


機械的な動作をする受付嬢は永い説明のあとに俺を怪訝的な目で見つめている。さっきの話を聞く限りでは偽者というのは酷いが認可されていない『紋章』はそんな扱いなのだろう。大体はファッション的感覚で作るのだろうがあんまり多いと信用問題に関わるのはわかる、だからこそ『紋章』関係はきつく管理されているようだ


自分の中でそう納得した後、俺は胸元にあるアイギスに微弱な魔力を流す。するとペンダントから一筋の光が伸び、それは受付の奥の壁に衝突した。光はそのまま壁全体に這うように幾つかの光の筋に分かれ、それはどんどん何かの形へと変貌していく


「えっこれって……?」


10秒も経たないうちに光は一つの絵を壁に描いた。二つの剣が斜めに交差しあい、その剣の後ろには翼を広げた大きな火の鳥が銃を咥えている背景の描かれた『紋章』である。『紋章』はこの室内にあるどの光よりも眩く輝き、その存在感を示している。そのせいか周りにいた全員の眼がこちらに集中してしまっていた。俺の相手をしていた受付嬢に至っては顔が青ざめて目の焦点が空ろになっている


「Blaze of Brave……『千里眼のレイエル』の紋章っ……」


後ろでこちらを見ている誰かの呟きが聞こえてきた。この紋章の名前だろうか……しかしレイエルの知名度は高いなと改めて認識してしまう光景ではある、なにせこの倍sょにいる全員が畏怖の顔つきをしているからだ


「っ!」


「きゃっ!」


だが、全員が呆けている中、群衆の中から強烈な殺気が俺に向かっているのを感じ慌ててその場を離れた。すると俺が先ほどまでいたカウンター前には数本の剣や槍等の凶器が突き刺さり、もし反応が遅れていれば俺は間違いなく殺されていたのがわかる……剣や槍で死ぬとは思わないが

しかし気の毒な事に巻き込まれた受付嬢は本当に顔面蒼白になってガタガタと震えているのが見えた、後で謝るべきだろうか……いや、俺の知った事ではないな


「ご挨拶だな……そっちがその気ならば……」


{フレイムセイバー・氷華!}


右手の甲の先から青い炎で形成され、藍色のオーラを放つ魔力剣が出現する。普通のフレイムセイバーと違い右手甲部分に変化したアイギスを強固な氷が包み込み、盾代わりにもなっている

俺が修行の際に見につけた一つの技能がこれ『同化』だ。相反するないし、別属性の魔力同士を均等に融合させる事でその魔法の持つ能力をそのまま限界近くまで引き上げる技術。一般的には火系統の魔法に風属性の魔力を混合させる事でその魔法の能力を引き上げる事ができる。

しかしここで相反する魔力同士を結合させれば、それは同じ魔法でも全く違う効果や現象を生み出す事が可能なのだ。今出現させているこの魔力剣も、相性の悪い火と氷の魔力で形成している。ベースは火ではあるがその性質は氷、しかも火の系統の特色である侵食効果のある氷だ

まぁ実際にやったほうが効果はわかりやすいだろう


俺が魔力剣を出した瞬間に野次馬感情で集まっていた奴らは虫の群れのよう散り散りに離れていき、その向こうには殺気の主であろう威風堂々とした雰囲気の女が一人立っていた。見た目には大量の凶器を持っているのがわからないがよく見れば先ほど飛んできた物は携帯できるような短剣や短い武器が多い、ならば投げたのがこの女一人だという事は納得できる


「……認めない」


「?」


「貴様の様な貧弱そうな奴があの方の名前を引き継ぐなど認めない!」


女は腰のホルスターからハンドガンを取り出しこちらに向けて数発発射した


「っ!?馬鹿がっ!」


俺は飛んできた弾丸の全てを右手の魔力剣で一つずつ両断していく。こんな人の多いところで銃を発射する常識の無いやつがいるのかと少し心の中でぼやいてしまった


「ちっ!」


女は弾が切れたのかハンドガンのマガジンを入れ替え新しいマガジンをセットしなおす


(こいつまだやる気かっ!)


女がリロードしたのを見た俺は急いで近くの壁を蹴って、その反動で天井付近まで一気に跳躍する


「ちっすばやい……逃げ足だけか!」


天井付近まで一気に移動した女は俺を挑発じみた言動をしながらも照準を狂わせず俺の方に向かって弾丸を発射する。これだけでもいい使い手だというのは理解できるのだが……


「……こんなところで」


飛んでくる弾丸を俺はもう一度一つずつ両断しながら重力に身を任せて女のほうへ落下していく


「やめろっ!!」


「くっ!」


そのまま女の頭上へ来た俺は右手の魔力剣を振り下ろし、女はそれを受け止めるため背中にあった50cm程の剣を抜いて俺の剣を防いだ

臨む臨まぬに関わらず面倒ごとになったなと少し後悔してしまった





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