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魔化・・・・・・それは一つの進化の形

感想全く返してなくてすいません


言い訳がましいですが自分もやることが多いので、時間が取れません。


とりあえず今度まとめて今後の人物紹介やら魔法やらの説明でしたいと考えてます。いいかげんディス以外の主要キャラ決めないと話が上手く進まないので


では、次回でまた会いましょう!

side ライブラ


レイエルがつれてきたディスっていうガキが危篤状態になってから二日たった。容体は現在も全く代わらず危険状態、しかしあの状態で二日もってるだけでも奇跡的といえる。重症の場合は三時間持たないのが通常なんだがな

全身どころか内蔵の殆どが機能停止、正直心臓だけが動いて血と酸素を脳内に供給しているだけのただの肉塊に近い

そんな状態のガキを救おうと俺も一人執務室に籠もって色々と考えてみるもいい案は浮かばない。以前にも剥離症の奴を治した事はあったが、そいつとあのガキとじゃ状態が違いすぎる。ハッキリいって回復なんて不可能に近い

例で言うなら全身に癌細胞が転移して、それをほっといた患者より性質が悪いのだ


(それでもこいつは回復する事を信じてる……会ってそんなに経ってもいないガキに入れ込みすぎだろ、普通)


俺はさっき司書室に入ってきてだんまりを決め込んでいるレイエルを見て内心で愚痴る。何がそうさせているのかは知らないが、こいつのガキに対する入れ込みようは尋常じゃない。会ってそんなに経ってもいないガキが剥離症になったからといってこんなに落ち込んだりするのはおかしい。


かといって「助かる見込みは皆無」なんてことは言えない、へたれな俺がいるのも確かだ


「た、大変です!!」


「ど、どうしたぁ!?」


そんな重苦しい雰囲気が流れる中で血相を変えたシクロがドアを強引に開けて入ってきた。いきなりなので俺も声が裏返ったぞ、この野郎などとつい思ってしまう

しかし普段大人しいこいつがこんな顔をして現れたのだ、恐らくすごい事でもあったのだろう。察しはつくが


「患者が急変しました!」


「「っ!?」」


ついにきたか、恐らくレイエルもこの考えが頭をよぎったはずだ。正直よくもったよ、そんな感想をいだいてしまった


「でも変なんです、死んだとかそんなんじゃなくて……その生きているのかどうかも」


「はぁ?意味わかんねぇぞ。死んだんじゃなかったらどうなったんだよ?」


「と、とにかく来てください!」


そういってシクロは部屋を出て診療室のほうへ向かって走っていった

よくわからないが少なくともかなりの異常事態が発生したらしい。レイエルをちらっと横目で見ると頷いて走っていった。


「しゃあねぇか……」


俺も二人を追って部屋を出て診療室へと走る











「な、なんだこれ?」


診療室には言った俺の第一声はこれだ。二日前まで血の生臭い臭いが充満していた部屋は、現在異常な臭気に満たされている。まるで二・三日生の肉をほっといたような腐臭と濃密な魔力がこの空間を占めていた

そしてそんな物さえどうでもよくならせる物体がベッドの上にはある

全長が1mを越すほど巨大な肉塊、全体的に赤く所々に血管らしきラインが入り、それは生きているようにドクン、ドクンと脈打つ。例えるなら巨大な心臓だ


「わかりません、ただ急にこんな状態になって……」


「ライブラ、これはいったい……?」


「……」


レイエルが不安そうな顔で俺に聞くが、聞かれても正直回答に困る。俺だってハーフのことなんか全くといっていいほど知らない。俺だって生きてるハーフなんて見るの初めてだったというのに


「……いや、待てよ。もしかしたら……」


少し考えてもう一度肉塊を見る。俺は一度これを見た事がある、そしてこれがどんなことかも知っている……だからもしかしたらあのガキは助かるかもしれない。あくまで可能性であるが


「いったいなんだというんだ!」


「詳しい事は今は言えねぇ……だけどあのガキが助かる確率が0から1%ぐらいは増えたのは確かだ。それより、レイエルに聞きたいことがある」


「なんだ?」


「あのディスってガキは何歳だ?」


「えっ……確か10歳以下だとは思うが、正確な年齢までは」


「10歳以下だとっ!?……じゃあディスは幼年体の水準まで満たしていないっていうのか!」


幼年体は魔族を人間の歳に換算すると大体10歳以上の事を言う。それ未満の状態は人間で言うなら赤ん坊以下の胎児に等しい、これはかなり拙い状況だ


「それと兄さん、これも」


「ん?」


シクロの手の中にはディスが首にかけていたペンダントがある。汚れるからと外してシクロが保管していた物だ

それが今は使用者もいないのに時々光っている上に、強力な魔力を感じた。封印が施されている魔法媒体が動いている


(この魔法媒体起動しているのか?使用者があの状況で……?)


「……疑問は沢山あるが今俺たちにできることは何もなさそうだな」


少なくとも今はそれだけはわかる。俺たちにできることは何もない、これはあのガキ自身の問題だ


「レイエル、それにシロも早くこの部屋から出て行け。ここは俺が何とかするから」


「しかしっ!」


「お前がいても意味はないんだよ、それくらいわかるだろ!」


食い縋るレイエルをキツイ言葉だが宥め、部屋を出て行くように催促する。今この部屋はあまりいい状況ではないし、仮にいても意味はない。それくらいこいつもわかっているはずだ


「……わかった」


「でも兄さん、私だって医者の端くれですよ!その私まで……」


「こいつは医者がどうこうできる物でもないし、第一お前は自分の身を守れるほど強くないだろ。こういうのは俺のほうが詳しい、いても足手まといだ。早く出て行け」


「……わかりました」


シクロはすこし落ち込んだ感じで診療室から出て行く。キツイ事を言ってすまない、だけどこうしなければならないんだ


「それからレイエル」


「……なんだ?」


「場合によっては俺はディスを殺す。見たくないのならしばらく図書館でてろ」


「っ!!……いや、最後まで付き合う。あの子を引き込んだのは私だ、責任は私がとる」


「……わかった」


レイエルも重い空気のまま診療室を出て行く。俺は二人が出たのを見送った後、部屋に鍵を掛け、誰も入れないようにした


「さぁ、後はお前次第だ」


肉塊となったディスを俺はただ見つめていた







side ディス


「ああぁぁぁっ!!!!」


右腕を失った痛みに俺は悶え、そこらへんを転がり痛みに堪えていた。想像を絶する痛さ、いやもう痛みかどうかさえもわからないほどに痛む右腕のあった部位

それだけじゃない爆発の衝撃で身体中がボロボロだ。化け物を倒すためとはいえレイエルの教えどうりに殴ったのは間違いだったかな、と少し思うが後悔はしてない。結果的には勝てたし、なによりもし『バースト』を使っていたらあの近距離で十分な威力を発揮できたかわからないからだ

それにしても腕が消滅するとは……とんだ曲者魔法である


近距離の『ブレイク』と遠距離の『バースト』、使い分ける事でオウギュルストの能力を更に発揮できる可能性を持つ。しかしブレイクは俺が考えていただけでその魔法を自作した覚えは無いし、そんな時間も無かった。いったいこれはどういうことだろうか


(まさかアイギスが勝手に魔法を創った……?考えすぎか)


「くっ……かっ!」


痛みを耐えながらよろよろと俺は立ち上がる。そういえば俺が助かる方法ってなんだったんだと

そんな疑問を思い返した瞬間……


「ぁ……?」


「ご苦労様♪」


ドスッとい鈍い音と共に衝撃が俺の胸を襲った。目線を下に向けると俺の胸を獣腕と鋭利な爪が貫いているのが目に映る……振り向けばさっきのあの女が勝ち誇った笑みを浮かべてこちらを見ていた

女に胸を手で貫かれたらしいが右腕の痛みのせいか上手く痛みがわからないのは幸いだ。しかし唯一わかることはどうしようもなく身体から力が抜けていくこと。全身がだらんっと力が抜けて女に支えられる形となってしまった


「な……にを?」


「いったでしょ、私と貴女は互いに消しあう運命だって。でも私は貴女を少なからず気に入っているの、だから取り込んであげる。そうすれば貴女は消えることはない、まぁ一生表に出ることは無いでしょうけど」


「貴様……っ!」


「あなたが悪いのよ、元々の目的はただ取り込むだけだったのに貴女が身体をボロボロにしちゃったから、こんなにも計画を前倒しにして、私達の境界を守護するあの化け物を倒してもらったのに」


「境……界?」


「貴女が倒した化け物は人と魔の境界を侵さないように存在した、いわば守護獣。何度か貴女と接触しようとしたときも散々邪魔されていたのよね。でもそれを貴女が倒してくれたお陰でこうして貴女を取り込める機会が回ってきたわけ」


(……なるほど、俺はずっとこの女の掌で踊ってたわけか)


「一応言っとくけど嘘をついていたわけじゃないわよ。現実の身体を元に戻すのには本当にあの化け物が邪魔だったし、今頃現実の身体は治り始めているはず。ただし、今までどおりではなくこれからは私の肉体としてだけどね」


俺はこいつの目的が俺と同じ生きることだと考えていた。事実こいつは俺を救う手段としてこの世界に導いた。だが同時に真の目的である俺の身体を完全に乗っ取る事も実行に移したらしい

我ながら無様にも程がある。この女が狡賢いというまでもなく、安易に疑いもしなかった挙句利用されて自分の首を絞める結果を作るなんて……


「さぁ、後はこのまま貴女を取り込めば……」


「く……くく……はははは!」


「……何がおかしいのかしら?」


こんな絶望的な状況にも関わらず俺の口から出たのは笑い声だった。なぜ笑っているのかと女に聞かれても俺にだってわからない。

利用されて自分の身体を奪われる自分への嘲笑か、もしくはこれから自分の存在を消される事から来る自暴自棄の笑いか……どれも違うな

少なくとも笑っている対象は俺ではないのだから。この笑いは……


「俺を取り込む……だと?ふざけるなよ、この雌狐がぁ!!」


「なっ!きゃぁっ!」


怒りから来る笑いだ。散々利用して騙してきたこの女に対する、な

どこからかわきあがる力が俺の身体を再び起動させる。そして左腕で俺の胸を突き刺している女の獣の腕を力任せに引き千切り、後ろにいる女を反動を利用した足で蹴り飛ばすと、女は先ほどと違い意外と可愛らしい声で地面に倒れこんだ

怒りというのは時に恐ろしい力を発揮する、なんて話を聞くが人間なんて所詮感情でしか力を発揮できない生き物かもしれない


「ぁぁ……いったいどこにそんな力があるのよ!」


「俺は……俺の身体は貴様になんかくれてやるか……貴様なんかにやれるかよ!!」


引き千切った女の左腕を触媒にして右腕がグロテスクな変形を遂げながら再生していく。そう、こいつも俺も元は一つ、奴が俺を取り込めるのならば俺が奴を取り込めるのもおかしくはない


(なんだ、この感じ……?)


触媒にしたあの女の左腕からは不思議な感覚が伝わってくる。俺の全身に漲る力とは対照的な感覚、これはなんなのかわからないが、どこか切なくなる感じを覚えた


「私の腕を取り込んでるの!?でも、無駄よ私には貴女が今まで頼りにしてきた無限の再生能力がある!たとえ腕の一本ぐらい取り込まれても……」


女の左腕は瞬く間に元の腕へと再生した。やはり再生能力は向こうが本家本元らしい、俺と再生速度がダンチだ。

あの化け物もそうだがこの再生能力だけで随分チートスペックだな、俺の身体。尤も依存していれば恐らくレイエルなんかには一生勝てないだろうが


「幾らでも再生できるのよ!貴女に勝ち目なんて……っ!」


それとほぼ同時に俺の右腕も完全に同化・再生した。だが失っていた右腕の先には人間ではありえない鋭利な爪があった。指先に20㎝程度の鋭利な爪、以前力が暴走した際に見た刀の様な爪と同じに見える。しかし長くない分こちらのほうがコンパクトで使い回しが良さそうだ

そして異形の右腕も前の腕となんら違和感を感じない、俺の身体の一部に感じる事ができる


「私の腕を取り込んで、変化させた……けどね胸に風穴の開いた貴女に勝ち目なんて無いわよ!」


「はぁ、はぁ……そうかもな」


確かに胸の風穴のせいで息苦しいし、詮となっていた女の腕を引き抜いたせいで血がどくどくと流れ出てる。何で死んでないのか自分でも驚きだ

それに比べて向こうは高速・無限再生するし、痛みも殆ど感じない。更に身体能力・感覚能力でも圧倒的優位にたっている。しかしこっちは前述どおり満身創痍で、右腕が異形に変化しているという絶望と奇妙が入り混じった珍妙な状況だ

でも、不思議と負ける気はしない。奴は俺に腕を取り込まれ焦り、俺は怒りながらも冷静でいられる。後は勇気と戦いの流れを掴むだけだ











side 第三視点


「はぁ、はぁ……」


「ふふふ……勝ち目なんて見えているのに無駄な抵抗をするわね」


状況はディスが劣勢で、魔の力と名乗る女が優勢。しかし心理的優位は恐らくディスのほうが遥かに高いのだ。どちらが勝つのか誰にもわからない


「さぁ、無駄な抵抗なんかやめっ……!」


「……」


若干焦りを見せ始める女に対し鋭い目つきでガンを飛ばすディスに、女は怯んでしまった。ただ睨むのではなく、その眼には負けない自信と強い意志がハッキリと見え、弱っている外見からは想像できない気迫の強さが伺える


(なんなの、こいつの自信は!?ただ怒っているとは訳が違うこの気迫……っ!)


女は不安要素である自分の腕を取り込んで変身したディスの右腕を見つめる。取り込まれたのはさほど問題ではない、しかしそれを触媒にして腕を完全に再生されるとは思わなかったのだ。

魔と人の力はいわば水と油、お互いに反発し決して混ざり合う事のない力。だから取り込むのにも色々と順序があった。だがディスはそんな事を一切無視して腕を完全に再生させ反発する筈の魔の力を完全に押さえ込んでいる事が一番の焦りの原因だった


(まさか、調和しているの……?この短期間で、それもあそこまで完全に!?)


調和とは屈従以外のもう一つの力の統合手段。女が一度言った、互いを消しあうという行為は屈従であり、調和は水と油の力を完全に統合すること。

主な違いは屈従というのはあくまで人が魔の力を従える、または魔が人の力を従える事。仮に魔が人の力を屈従させた場合、その者は完全な魔族になり、逆だと完全な人間になる。

しかし調和は違う。どちらかになるのではなく人・魔両方の力を完全に統合させ本来持つ力を開放させる事ができる、この過程でその者は人でも魔族でもない完全に新しい種として誕生するのだ。この調和を成し遂げた者はこの世界が始まって永い時が経つが一人もいない

人・魔の力は以前言ったように水と油の関係、生態系などで考えれば食う者と食われる物の関係で調和は有り得ないことなのだ。ライオンとウサギなどが仲良くできるのは所詮童話の世界であって現実ではウサギは食べられるし、ライオンと仲良くすることなど無い

もしディスが本当に調和しているのであれば、それは女にとって勝ち目のないことだ


「貴女は生意気なのよ、いつも!!」


認めたくないという思いが先走り女は考えなしにディスに向かって猪突猛進するが……


「がぁっ!?」


ディスは全く微動だに表情も変えず、的確に女の胸部を右腕で殴り飛ばす。冷静な判断力と怒りによる力の発揮は魔の力である女を圧倒するかに見えた


(私が全く見切れなかった……?私のほうが何倍も強い肉体なのに……っ!)


「ふ、ふん、少しはできるみたいね。けどね、たった一発決めたぐらいで……」


「御託はいい、来るなら早くしろ」


「つけあがるなぁ!!!」


頭に血が上り完全に逆上する女をさらに挑発するかのようにディスは言葉を挟む。

更に激怒した女は力任せに手刀を振り下ろすもそれはディスに完全に見切られ変化した右腕で完全にガードされた

女はこのすぐ後に急いでディスから離れ回避運動を取る、先ほどのようにディスが殴って食ると予測したためだ。女の卓越した聴力と身体能力を生かした上での行動だったが……


「ぐふっ!」


たった一瞬の過信による油断をディスが見逃すはずもなく右足で女を天高くに打ち上げた。

感覚神経が優れているのは女だけではない、ディスもまたレイエルとの戦いや普段から行動する事で得た超人的なまでの反射神経と反応速度がある。ディスは自他共に認める経験不足だが、それでも女はディスよりももっと経験がないのだ

だからこそ、油断すれば超人的な身体能力だろうとなんだろうと確実に負けてしまう

だが女はこれを信じられなかった、なぜ自分が打ち上げられているのか、どうして反応できなかったのか、女の頭はそれで埋め尽くされより性格で冷静な判断ができない状態に陥ってしまったのだ


「なっ!?」


「遅いっ!!」


上空にに打ち上げられた女を追撃に現れたディスを見て女は更にパニックになってしまう


「ぁ……ああぁぁ!!」


「……しっかり狙え」


「このっこのっ!なんで当たらないのよ!?」


恐慌状態に陥った女は我武者羅に両腕の爪を振るうが、僅かな動きによる回避と変化した右腕で全て止められ、攻撃が通る事はなかった


{ファイアボール・改!}


「そんな程度の低い魔法なんかで!」


「はあぁぁぁ!!!」


「えっ!?きゃぁぁぁ!!!!」


ディスの周囲には数十個の小さな火球が出現し、ディスはそれを女に向けて殴りつける。拳の衝撃と火球による攻撃を合わせたコンボ技であった

火球単体にそう威力はないが、ディスの今の右腕は完全に女のそれと同じか上を行っており、その力で繰り出される火球パンチは普通のそれとは全く違うほどの威力を見せた


「くっうぅ!そんな、たかが人間に上位種である魔族の私が負けることなんてあっていいはずがないのよ!!」


カウンターの要領で女は火球を放つディスの右腕を弾き頭に殴りかかるも、またしても頭を反らすという最小限の動きで避けられてしまう


「またっ!がはっ!!」


「ぁぁぁぁ!!!!」


逆にディスの蹴りを横っ腹に思いっきり喰らい、体制を崩し大きな隙が生まれた


「堕ちろっ!!!」


「がはぁっ!!」


その隙を利用してディスは体制不安定な女の頭を鷲掴みにして固定し、顔面に懇親の力を込めたキツイ拳をぶちかまし、女を地上に向かって叩き落す


(そんな……どうして私が……?)


叩き落された女は自分の敗因もどうしてここまで圧倒的にのされたかもわからず、ひたすら答えの出ない自問自答を繰りかえす

ディスから言わせれば能力のみで驕った時点で既に負けだといいたいところだが、少し前の自分がこんなのだったなと思い考えを改めている。

自分の能力を信じきるのではなく自分を信じること、似ているようで本質は違うこの違いに気づきそしてそれを実践した自分と、それを理解できず己が能力に過信した女との差がこの圧倒的な勝負の原因ではないかとディスは考えていた

自分を受け入れて信じること以外にも、レイエルの言った冷静な思考・立ち向かう勇気・そして戦いの流れを握る、これらも勝利に貢献した事は言うまでもない


「はぁぁ……」


かといってディスもまたそんなに余裕がない。胸の風穴はかなり息苦しい上に、そろそろ痛みも伝わってきて限界が近いのだ

これは精神的な気合とか云々ではなく肉体の構造的な限界なので長期戦になれば自分が負けるとディスは確信していた。そして地上に降りたディスはゆっくりと女のほうに向かって歩いていく


「お前は少し前の俺だな、だからこそお前を倒す事で俺は古い自分を払拭できる」


「でもね、過去が……なければ今もないの……よ」


「……そうかもしれない。だが人間はそうやって成長していく生き物だ、お前らからしたらかなり効率の悪い事なのだろうがな」


「そう……ね。人間はよくわから……ないわ」


(確かに貴女の言うとおり人間は時々計算できないし効率の悪い事をするわ……)


「これで終わらせる!」


{オウギュルスト・レイジング……!}


ディスの右手周辺に現れる六つの円環。それは巨大な魔力の塊となってディスの拳を包み込み太陽の様なエネルギー級となる


(でもね、そんな貴女だからこそ私は惹かれたのよ。そして、だからこそ……)


{ブレイクッ!!!}


「ぐふっぁぁぁぁ!!」


エネルギーの塊は女の胸を簡単に貫き、女は苦悶の表情を浮かべた。ここにディスの完全な勝利が確約されたわけだ


「これでお前の野望も俺の苦悩も潰える……!」


「ふふ……ふ、まぁ……いいわ。今回……は、私の負け……ね」


「なにっ!」


負け惜しみか、それとも何か策があるのか。女はただ不適に笑うだけである


「所詮……貴女にΩは……使いこなせない」


「Ω……魔眼のことか!?」


俺の右目には魔族の固有能力として万物を塵に返す能力『オメガリアリティ・フォース』がある。最初は正直これだけで全てを倒せると思っていたが、出力調整が効かない上に狙いも付けにくい。ここぞでしか使えないが威力は高い切り札の一つ

オメガというキーワードで浮かぶのはこれくらいしかない


「そう、貴女は……まだ、その程度……Ωの真実を知らない」


「……」


「真実を知った……貴女の悲愴の表情を……楽しみにし……ているわ」


女の身体はほとんどが消滅していっている。オウギュルストの力が女の身体を焼いていっているからだ


(そんな貴女だから私は貴女が欲しかった……貴女に……私は……)


消え行く中で女は今までに感じた事のない感情と気分を味わっていた。でも嫌ではないその感じに女は身をゆだね、そして……肉体は完全に消滅した


「オメガ……いったい……っなんだ!?」


一方残されたディスが女の残した言葉を考えていると、突如ゴゴゴッという強い振動と共に白の世界が黒く塗りつぶされていった


「世界が崩壊している……そうかあいつがいなくなったことで世界が統一されているのか」


徐々に広まっていく暗黒の世界を見つめ、そしてディスも闇に飲まれ意識を完全に失った





side ライブラ


二人を締め出したのには理由が幾つかある。あの肉塊状態で不用意に触れば取り込まれてしまう。今のディスは既にディスではない、ただ魔族のとしての欲求と本能が固まっただけの一つの魔物なのだ。シクロは魔法使いとしてはそんなに強くない、自衛できないのでは話にならない

もう一つは思い入れのある人間を殺す覚悟が二人にはない。特にレイエルは冷静に対処できない可能性が高い、だからこそ二人を締め出した。こういう時嫌われ役になるのも男には必要だ、なんて持論を適当に作った


「……んっ?」


ディスが肉塊状態となって一時間が経過した頃、変化は起きた。肉塊の脈動が止まったのだ

それはつまり、この変化は終了したことを告げる


「鬼が出るか蛇が出るか……場合によっては俺が止めを刺すか」


懐からジュースの缶サイズの入れ物を取り出す。この中にはある特殊な毒が入っている。たった一滴で間族をしに至らしめることも可能なほど強力な対魔族用の毒薬が

こいつをうちこめばあのガキが人でいられる間に殺す事ができる。それが俺にできる唯一の施しだ


そんな事を考えていると肉塊に大きな亀裂が生じた。とうとうそのタイミングが来てしまったらしい


「……っ」


俺も身構えて慎重に対処する。一歩間違えれば俺も死ぬかもしれない。俺も全力で生かせて貰う

懐から自作した魔導書を取り出し、完全に攻撃態勢に入った

そして肉塊がガラス細工のように割れ始め、中に何かがいるのが見える


一本の巨大な狐の尻尾、14・15歳ぐらいの少しだけ成長し女らしさをみせる身体に紫の髪をした少女。顔も少し大人びているが間違いなくディスだ

しかし問題はそこではない、こいつの人格が問題なんだ

少女はゆっくりとまぶたを開いていく


右目は赤い宝玉のように澄んだ綺麗な赤色、そして左目は青い宝玉のように澄んだ綺麗な青色


「これはいったい……?」


予想に反した結果だった。俺の予想では両目が赤になり完全に魔族になるものだ、そしてその際の人格形成でもしディスの物ではなかったら殺す気でいたし、もしディスの面影あるならばすぐにここから退去させるつもりだったからだ

どっちにしろ魔族になってしまうと俺は思っていた。しかし今だハーフの特徴が色濃く出ている、しかも左目の色は青色


(この世で絶対に存在する事のない青い瞳……それをもつこいつはいったい)


「……ぁ」


「っ!」


考えに耽り油断していたが、今だこいつはよくわからない。俺も気を引き締め警戒態勢を維持する


「ライ……ブラ」


「俺の名前っ?」


小さな声で俺の名を呼ぶ少女、こいつ本当にディスのままなのか


「すまなか……った……ぁ……」


「あっおい!」


何故か詫びの一言を入れた瞬間に少女、いや、ディスは倒れて再び眠りに付いた


「……全くどんな奴だよ、お前は」


「すー、すー」


安らかな表情で眠る少女は俺に支えられたままただ寝息をたてるだけであった

やっと幼児体型じゃなくなったのはいいけど、これで襲われる確率高まったなと思ってしまいました


後ツイッターで更新通知をしてみようと思います。やり方もわからないので不手際があったらすいません


https://twitter.com/4310600


もしやり方とかを教えてくれる親切な人がいたらメッセージでお願いします。それとあくまで更新用なのでそんな頻繁に出入りしません。

本当にすいません

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