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生きる為

夏休み~バイトを始めよう


夏休み入ったし少しは更新できそうです



side ディス

俺は自分の過去を見ている、光一つない空間にテレビジョンのように映し出された俺の記憶の断片

だいたい理解した。今俺は自分の思考・記憶の眠る深層心理の世界にいるらしい。ありえなくはない、前にもこういうことがあった

そしてあの時は……


「こんにちわ、もう一人の私」


以前にも現れた俺とそっくりの見た目をした女、だが瞳が完全に赤色になっているあの女が俺の後ろにいた。前回と同じく怪しげで妖艶な笑みを浮かべて……自分のこんな顔見たくないものだ。若干気持ち悪い


「前も聞こうと思ったがお前は一体なんだ?」


「何度も同じ質問するのがお好きね。私は……」


「俺が求めているのはそんな曖昧な答えではない!」


俺の質問に対し女は相変わらず馬鹿にした態度ではぐらかそうとするがそうはいかない。こっちは女について殆ど情報がない。ただ俺の敵であること以外わからない。情報を探るために会話で探りを入れないと……戦う時俺が不利だ


「そうね……簡単にいうと私と貴女はディスペイアという身体の中に存在する『人』と『魔』の力を具現化した存在といったところかしら?」


「人と魔?」


「そう、ハーフはね人と魔族の本来相容れない力が一つの体に共存しているの。でも当然相容れない力同士、どちらかがどちらかを排除しなければ肉体が負荷に耐えられなくなり消滅してしまう。だから今の様な幼年体ではハーフは力を二つに分ける事で絶妙なバランスの上で体の組成を崩さずにいられるわけよ」


「幼年体……じゃあ成長するとどうなる?」


「ふふふ、答えはもうわかってるくせに」


そういうと女は悪戯をした子供っぽい笑みでこちらを見る。幼年期が今の年齢の事を指しているなら、そのうち俺とこいつは……


「俺とお前で互いを消しあうのか、生き残るために」


「正解、よくできました!つまり……私達は戦う運命にあるわけ」


女は笑顔で拍手をしているが、それを終えた途端にとんでもなく濃密な殺気をこちらに飛ばし、真剣な顔つきでこちらを見た。コロコロと表情を変える女だ

しかしこれで女の目的ははっきりとした……俺は少し身構えて戦闘態勢を取る


「だったら今俺の前に現れた理由は……」


「ふふふ、残念!今回はそうじゃないのよ」


「なに?」


「今現実世界での身体はボロボロ、もって後数日っていうぐらいの酷い有様。だからあなたと私が争ってる暇なんか無いの」


「じゃあなんで俺の前に現れた!」


「ふぅ、そうカッカしないでこのドアの向こうに行きなさい」


女はそういッた瞬間に何もない空間から木製のドアの様なものが現れ、開いていく。ドアの向こうにはこことは全く違う世界が広がっているように見えた。どう考えても怪しさ満点である


「ドアの向こうには何がある……?」


「簡単に言えば私達が助かる方法よ。だけど……」


「だけど……?」


「もしかしたら貴女はこのまま朽ち果てていったほうがいいと思ってしまうかもね」


「なんだと……!」


「それとも私の言う事を信じずにただひたすら身体が滅びるまでここで待つ?それでも私は構わないけど」


邪悪な笑みを浮かべる女。一体どれがこいつの本性なのか、最初の無邪気な顔、次は殺気、そして今は邪悪な笑みを浮かべる。いったいこいつは何が死体の課俺にはわからない

だが、もしこいつの言うとおり俺とこいつが同じ身体を共有するのであれば今だけはこいつと俺の望みは同じはずだ


(少し尺だが今だけはこいつの言うとおりにしよう……生きるために)


「……わかった」


「物分りが早くて助かるわ。じゃあこれを渡しておくわね」


俺がドアの前まで来ると女は俺に見覚えのあるペンダントを渡してきた。俺が首につけていたもの、アイギスを


「アイギス……どうしてお前が?」


「ふふふ、細かい事は気にしないの。さぁ、早く行きなさい。そして助かるための方法を手に入れるのよ」


「ちっ」


少し悪態をつきながら俺はアイギスを受け取りドアをくぐる。たった一瞬の事なのに俺には途方も無く長い時間そこにいたんじゃないかと思うぐらいスローモーションでドアを潜り抜け、違う世界に出た


「ここは……」


さっきまでいた暗闇の世界とは一転して変わり、そこは真っ白な空間、見渡す限りの白い世界。だがよくみれば俺の目線の先には何かがいた

全身に渦巻く金色の体毛に刀のように長く鋭利な片腕五本ずつ存在する爪、そして自我を持っているかのようにウネウネと動く九本の尻尾。頭にいったっては何と形容していいかわからないぐらいよくわからない物だ。見える限りでも人間じゃない何かがそこにいるのがわかる、完全に化け物だ

化け物も俺に気づいたらしくこちらに向かってくる


〔ガァァァ!〕


「なるほど……助かりたければこの化け物を何とかして倒せば言い訳か」


どうしてあれを倒すのが助かる方法に繋がるかはわからないが、どっちにしろ倒さなければ前にも進めないし俺が死ぬだけだ。いつの間にかドアもなくなっているしな


「ならば一瞬で終らせてやる……!」


{オウギュルスト・レイジングバー……っ!?}


オウギュルストを唱えようとした瞬間ぞわっという悪寒が俺の前身を走り、足場がなくなったような感覚に襲われた。そして悪寒が走った瞬間から俺の身体は氷漬けにでもされたかのようにピタリと動きが止まる

詠唱を続けようとする口も金魚のようにパクパクと動くだけで声が出ない。構えた両腕も尋常じゃないほどに震えているのがわかる


(なんだこの悪寒……それに身体が動かな……い!)


〔ガァァァ!!〕


俺が硬直している間にも化け物はうなり声を上げて突進してくる。刀の様な鋭利な爪をこちらにむけながら


(まずい、あんな物受けたらひとたまりもない!ここは……)


「……っ!」


{フレイムセイバー!}


オウギュルストの詠唱を中断し化け物を防ぐために違う魔法を唱える。そして生成した両腕に火の魔力剣を生成しガードの構えを取った。

ガードを取ってから気づいたが俺の体を襲っていたあの金縛りと悪寒はオウギュルストの詠唱を止めたとたんに収まっていた、あれはいったい……そんな事を考える暇も無く化け物は目の前まで迫っている


〔ガァァァ!!!!〕


「くっ!」


突っ込んできた化け物の衝撃を殺せるわけもなく俺はガードの体制のまま思いっきり空中に吹っ飛ばされた


「がはっ!」


上空に打ち上げられた俺は初めて感じるような痛みに襲われた。腕を切られたときよりも強い痛み、いやどっちかといえば今まで感じることのできなかった痛みに気づいたような感覚だ


(まさか今までの痛みは全部魔族の力で半減されていたのか……?)


てっきり痛覚が麻痺しただけかと思っていたが、痛みの大半は魔族の再生力か何かでカバーされていたらしい。

どうりで魔族の力のない状態だと身体が重いわけか……と内心で納得する。魔族の力のない今身体に関して言えば俺は人間だ。痛みに弱く、死にやすい。こんな攻撃を連続して受ければ身体が持たない


「だが……っ!」


{エンヴィズ・ロッド!}


左手の魔力剣を消して水の鞭を新たに生成し、それを化け物に向かって振り下ろす


〔がァァ!?〕


水の鞭は化け物の身体に巻きつき両腕と身体を縛り上げたが、化け物は力づくでそれを振り払おうと暴れまわる。

なかなか力が強いからあまり長くは持ちそうにない


「俺だってここで死ねない!」


地表に着地した俺はそれとほぼ同時に水の鞭に縛られている化け物を上空に向かって放り投げる。

あの化け物は見たところ飛ぶ能力が無い、ならば上空ならかなり無防備なはずだ。この考えは当たっていたらしく上空に放り投げられた化け物はもがくだけで何もできていなかった

俺は次の魔法のために両腕に魔力を集めていく


{サウザンド・エナジーレイ!}


オウギュルストが使えない以上俺の最大の攻撃魔法はこれしかなかった。外の魔法が何の効力がるのかわからないのに発動させるわけには行かない。

発動後、俺の周囲から放たれる何百といえるほどの光の光線が化け物に向かっていく


〔ガァ……ガァァァ!!!〕


光線を防ぐ手立ても無く、全身を少しずつ消滅されていく化け物。そして最後は巨大な光の塊に全身を飲まれていった


「はぁ、はぁ……なんとかなったか」


あの光の塊に飲まれて消滅していないわけが無い。そう思った俺は安堵の息を吐き上空に輝く光の塊から目をそらすが、すぐにそれが間違いだと気づいた


「はぁ、はぁ……がっ!」


〔ガァァ……っ!〕


目をそらした一瞬の隙を突いて殆ど醜い肉塊と成り果てた化け物が光の塊から飛び出してきた。化け物は俺を押し倒し消滅していないズタボロの左腕で俺の首をあらん限りの力で締め上げる

突然の事に俺はパニックを起こすが、強力な力で抑えられた体はろくに動くこともできず、辛うじて動く右腕が俺の首を押さえている化け物の左腕に添えただけだ。首を絞められているので詠唱することもできない


「ぁぁ……ぁ……っ!」


首を絞められ呼吸ができず、酸素がなくなってきて全身の力が抜けていくのがわかる。だが俺がもう駄目だと思った瞬間、運のいいことに化け物の左腕が孵化に耐え切れず千切れた。

俺は咄嗟に右拳で化け物の顔を思いっきり殴り、化け物をどかす事に成功し転がる要領ですぐに距離を取った


「はぁ、はぁ、はぁ」


呼吸は酸素を求めて荒いが、化け物のほうはもっと深刻だ。なんせ両腕千切れて身体中がボロボロ。勝機は俺にあると思えた

だが……


「なに!?」


〔ガァァァ!!〕


化け物の叫び声に呼応するように新たな両腕が生え、全身の傷が癒されていく。失ったはずの尻尾もまた九本すぐに生えていた


「はぁ、はぁ、インチキだな、その能力……っ!」


身体の超高速再生。ちょっと前まで自分に合った能力だけに、敵に使われると正直卑怯に見えてくる


(魔族並みの再生能力を持つやつは頭を消滅させれば倒せる……だがサウザンドは目標を上手く捕捉できない)


一見当たっているかのように見えたあの光の光線はあまり命中してないようだ。未熟な俺は狙いを定める事ができない。もう一度撃っても頭を撃ち抜けるかどうかわからない以上無駄撃ちになる


〔ガァァァ!!〕


「もう少しで再生が終るか……っ!」


化け物にあった全身の裂傷や消滅した場所がすでに殆ど回復されているのがわかる。俺に迷っている時間なんて無い


(だがオウギュルストは発動させようとすると金縛りにあう……)


原因はわかっている、恐怖だ。これを使って瀕死の重傷になっている事の恐怖。それが魔法の発動を阻害する

この恐怖を超えなければこいつを倒すどころか、二度と上級魔法を使えなくなる


「……ふぅ」


両腕を構え、精神を集中させる。もうこいつを倒すにはこれしかない。そう自分に言い聞かせる


{オウギュルスト・レイジング……っ!}


詠唱をはじめた途端に来るさっきの悪寒と金縛り。俺の全身はまたしても硬直し、言いがたいような不安と恐怖に襲われる


「はぁ、はぁ……」


恐怖で吐く息も震えているのがわかる。落ち着けと自分に言い聞かせても収まる事のない恐怖と振るえ


(む、無理なのか……)


――まずは呼吸を整えることだ――


(えっ?)


諦めかけたその時、レイエルの言葉が脳内を走る。確か強敵にあった時や戦う時なんかに必要なものを教えてくれた時の言葉


――呼吸を整え、常に冷静でいることを意識しろ。冷静な思考はどんな時でも最良の結果をもたらし、どんなに悪い結果でも後悔する事はない。逆に冷静さを欠いた思考ではあまりよい結果をもたらさない――


「すー、はぁぁ……すー、はぁぁ……」


深呼吸をして酸素を体内に取り入れ呼吸を整える。すると確かにごちゃごちゃしていた頭の中が少しスッキリしていくような気がする


――冷静さを取り戻したら後は勇気だ。強敵に立ち向かう勇気。普通に勇気を出せというのは難しいが、人間、やらなければならない時は自らを鼓舞し自然と勇気が出るものだ――


「ぁ……ぁぁ」


(駄目だ、勇気が出ない!あともう少しなのに……)


――もしそれでも勇気が出ないのならば、自信を持つ事だ。足を思いっきり横に広げて、堂々と地面に立て。怯むことの無い自分を自分に見せ、鼓舞させるのも一つの方法だ。とにかく自信を持てば自ずと勇気も湧くさ――


(……足を思いっきり広げて堂々と)


足を地面に突き刺し自分を固定するように横に広げて堂々と地面に立つ


(何にも怯まない自信を持ち、常に冷静に……)


〔ガァァァ!!!〕


再生を完全に終えた化け物がこちらに突っ込んでくるのが見える。だが迫ってくる化け物に対して今の俺はなんの焦りも無い。ただ勝利する自分を想像するのみ


{オウギュルスト・レイジング!!}


魔法の発動に成功し俺の周囲に六つの円環が出現した。だが円環はあの時とは何か違う。引っ張られようなあの感覚がまったくない。むしろ今この魔法の全てを制御しているような気分にも浸れた


――その自身たっぷりの体制で思いっきり相手を殴って、相手の鼻っ柱をへし折ってやれ。そうすれば戦いの流れはお前のものだ――


(……殴って相手の鼻っ柱をへし折る!)


俺の周囲を回る六つの円環が、俺の右腕に吸い込まれるように一つに重なっていく。円環から発する赤い光が強くなっていき、俺の右腕は太陽を持っているかのような赤く強い光に包まれていく


〔ガァァァ!!!!!!!〕


鋭利な爪を振りかぶる化け物。少し前ならこの爪を見て僅かながらの恐怖と焦りを感じた。だが今はただの背景のようにどうでもいい存在に見える


{ブレイク!!}


〔ガァ!?……ァァ!!〕


レイエルの言ったとおりにオウギュルスト・レイジングの力の全てを集約した拳で化け物の胸を思いっきり殴る。すると高熱源体となった拳は化け物の頑丈そうな胸をいとも簡単に貫き、持ち上げ、化け物をちゅうぶらりんの状態にした


――戦いにおいて必要なのは冷静と勇気、そして戦いの流れをつかむ事。そうすれば自分より強い相手だろうと勝つ事ができる……話が長くなったな。まぁ、先輩冒険者からの心構えだと思って覚えておけ――


(ありがとう、レイエル。本当に感謝してる)


「俺の勝ちだ……消えろ」


〔ガァァァ……ァァァ……っ!〕


化け物の体内で円環全ての魔力を開放し、化け物を体内から焼き尽くす。除除に化け物の身体全体に光の亀裂があらわれ、亀裂から赤い光が漏れ出し、亀裂は化け物の全身に広がっていった

そして化け物は完全に赤い光で埋め尽くされ、そして……


「なっ……うわぁっ!!」


俺の右腕ごと化け物の身体は大爆発を起こし完全に消滅した。しかも爆発の余波で俺も吹っ飛ばされてしまった



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