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危機

最近大学忙しいので碌に更新できません



side ライブラ


大魔法図書館内にある治療室。いつもはシクロが誰かを治療したりする部屋だが今日は違った。さっき俺が運び込んだディスの治療が今治療室の中で行われているからだ

この知らせを受けて来たレイエルが血相を変え治療室の前で待機していた

俺の身体はディスの血で汚れ、レイエルは平常を保ってるつもりで足を動かしイラついた様子を見せている。無理も無い、結構感情移入していた様子だったからな


「……ディスの容態は?」


「大体の見当はついてる……だけど専門はシクロのほうだ。あいつが出てくるまで待てよ」


「わかる範囲でいい、教えろ」


レイエルの視線は冷ややかな目だが焦っているような動揺の色を隠しきれていない目で俺を見つめる

こいつだって大方の予想はついているんだろう、だがそれを認めたくない。だからこそ俺に問いかける『違う』というそんな言葉が欲しくて


「……聞かない方がいいぜ」


「……終りました」


俺が話を区切り終わらせようとした瞬間に真っ白な白衣を真っ赤にしたシクロが治療室の中からどんよりとした空気を抱えて出てくる

その表情は暗く悲壮感を漂わせていた。言葉を聞かなくてもわかる、こいつはわかりやすい


「容態は、ディスはどうなってる!」


「落ち着けって」


出てきた暗い表情のシクロにレイエルは詰め寄るように強く迫った。そんな平静を失ったレイエルを俺が肩に手を置いて制止させる


「症状は魔力剥離症……それも重度の物で間違いないです」


「やっぱりか……」


「くっ!」


シクロの診断結果に対しレイエルは涙を堪えるように唇を噛み、壁を思いっきり殴る。俺もシクロと同じ暗い顔つきになっているだろう

魔力剥離症……魔法使いなら誰でも知っている悪魔の病気だ。致死率は高く、一生完治することはない、しかも治療法はまったくといっていいほど無い


「詳しい状態としては両腕が肩から断裂、内臓は心臓以外の肺・肝臓、その他複数が破裂していて血管・神経は殆どが体内で断裂状態なので出血が止まらない状況です。骨なんかも殆ど全てが剥き出し状態か、骨折。顔面部分ですが眼球は両目とも壊死、鼻と口も原形を保ってませんが耳は内部の損傷程度でした。それに全身に合計56箇所の裂傷と血液の半分ほど失われています。正直今もなんで生きているのかが私にはわかりません」


「……全体的に上半身に傷が集中してるな」


シクロが詳しく症状を言った後カルテを見せてもらい俺が補足として付け足す。あきらかに重傷、というか血液の半分がないということは実質仮死状態か、心臓だけで生きているようなもの、後はハーフとしての魔族体質だな


「今生きてるのはディスがハーフだからだな?」


「そうですね、私もその可能性が高いと思います」


シクロも俺との結論に同意らしい。まぁ、人間なら即死レベルだから当然だな


「治る可能性は……?」


「ハッキリいってゼロ……です」


レイエルの問いかけに対しシクロは彼女の心を抉る致命的な一言を浴びせた。人としては残酷だが医者としては嘘の事を言えない、シクロも苦痛の表情を浮かべ、苦しそうな声で告げた


「まぁ……当然だな。魔力剥離症は発症後高確率で死に至る、魔族だろうと人間だろうと種族に関係なくな。特にあいつはカルテの通り重傷だ、重傷は確実に死ぬ、生きた例は過去10000年間無しだ」


「……わかってはいるさ、そんなことぐらいっ!」


苛立ちからかレイエルは壁をさらに強く叩く。壁はミシミシと皹が入り壊れ始めていた。誰がどう見ても八つ当たりの行為だが、誰も責める気にはなれない


「はぁ、とりあえず俺は溜まってる仕事に戻らしてもらうぜ。これ以上治らない奴のためにここにいても仕方ないしな」


「兄さん、幾らなんでも不謹慎ですよ!」


「自業自得だろ。自分の力量もわからず忠告を無視して上級魔法使ってその挙句に身体ぶっ壊しただけのことだ。世の中全てが自己責任、時間だって無限なわけじゃねぇ……なら助からない奴の見舞いをするよりも溜まってる仕事をこなした方がよっぽど有意義だろ?」


「……」


少々不謹慎な発言だがこの場を離れるなら仕方ねぇ……たぶん俺って不器用なんだろうなぁ

自分の罵詈雑言を喋りながら俺の手は少し震えている


「特に魔法を悪戯に使って国を危機に陥れる奴を助けようなんて気が知れねぇな」


これは本音だ。魔法は便利な能力でも手段でもない。あくまでも区分は『人殺しの兵器』だ。しかし悲しい事だがこのことを誰も理解しようとしない。

魔法はステータスではない、なのに人々はそれを競う。そして上手くできる者、下手な者、そんな両者の対立が深くなっていく

クラミュス大陸とコカーク大陸がいい例だ。魔法が出来るというだけで人を見下す……兵器だとは知らないからだ。道楽のように人を殺める、銃で人を撃つのも魔法で人を殺すのも一体どんな差があるというのか……俺には理解できない


「……そんな奴にだけはなって欲しくなかったのになぁ」


少し独り言を呟きながら俺は閲覧禁止の書物のある場所へと足を進める……”仕事”が増えてしまったからな。早めに処理しないといけない

……惚れた弱みはつらいぜ




『魔力剥離症』

名前のとおり魔力を過剰に引き出した場合に起こる病気。主な発症原因は上級魔法などの発動と暴走によって引き起こされるケースが多いが魔法の限界使用なども含まれている

病状としては

1.魔力を体外へ出す器官で名称は『魔孔』と呼ばれている全身にある微細な穴が破壊される事

2.魔力暴走により体内を流れる血液内の魔力が活性化し心臓などの重要内臓器官が過剰な活動を起こし破壊されること

       などが多い。

1の場合はほぼ全身にある魔孔が破壊されることにより細胞同士が引き千切れ全身が分解(千切れる)されていく。これにより全身に亀裂が発生し千切れた血管等からの血が大量に噴出してしまい、大量出血状態に陥る

2の場合は内臓の殆どが破裂し、破裂した勢いで胸や腹を突き破り内臓や骨などが露出してしまう

軽症の場合は助かる可能性は45%。重症の場合は間違いなく死に至る

軽症の例:全身から血が出てくる。裂傷多数程度

重傷の例:細胞分解で身体が千切れた場合か内臓破裂した場合

なお仮に命を取り留めたとしても魔孔の損傷から長い期間で魔法の体内外の魔力操作が不可能となり魔法の発動は不可能、さらに後々体調も悪くなる事が多い。時間による完治で完全に治っていたとしても一度崩壊した魔孔は脆くなり再発の恐れもある恐ろしい病気

魔法が発見された10000年前からある古い病気だが治療法は無く、魔法使いとは切っても切れない関係の病気で一度かかると魔法使いとしては終わりといわれている

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