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俺も男なんだな・・・・・

side ディス


実習場からレイエルと共に図書館内に戻った俺は汗が酷かったので風呂場を借りて身体を洗うことにした。図書館に付属している風呂場は風呂場というよりは大浴場と言うのが正解なぐらい大きく、広い上に装飾も豪華なものが多い。湯口が動物の口の形してるし……ただし何の生物なのかがわからん

そんな豪華な風呂場だが俺は浴槽に浸かることもなくただシャワーを浴びているだけだが……勿体無いとか言うな。俺はシャワーしか浴びない主義なだけだ


「……」


シャワーを浴びながら俺はただぼーっと今日のレイエルとの戦闘の事を思い返している。身体を石鹸などで洗う気も今の俺には無かった。予想以上に体が疲れてしまったらしく、妙な気だるさが俺の体を支配していたからだ


「……っ!」


気だるさから眠気がきていて意識が半分飛んでいた時、突然風呂場のドアがガラッと開く音が聞こえ、俺はびくっと体を震わせながらドアのほうを見る。だが誰かまでは湯気でよく見えなかった


「ん、誰かいるのか?」


いつも聞いて聞きなれた声がドアの方から聞こえる、この声はまさか……


「なぜレイエルがここにいる!?」


全身をタオル一つで隠しているだけのレイエルが湯気の中から現れる。突然のことに俺は焦りレイエルとは逆方向に顔をそむける


「なぜって……私も汗を流しにきたんだが?」


「……ああ、そうか」


つい忘れていたがこの風呂場は一応混浴だった。それ以前に俺の身体は女なのだからレイエルが入るのに躊躇う理由は無い……こっちは平常心が磨り減る思いなのだが向こうは事情を知らないし責めることも、退出しろと言う事もできない


(健全な男子高校生だった俺には目の毒だな……けどあれからかなり時間が経っているが俺は高校生のままか?)


「どうした、明後日の方向を向いて?」


「い、いやなんでも……」


少し考えることで俺は現実を直視しないようにしていたがレイエルに肩を揺すられ現実に引き戻された

青春真っ盛りで死んだ俺にレイエルの身体は直視できない、少し眼の毒だ


「ふむ……」


「なんだよ?」


目を背ける俺とは対照的にレイエルは俺の身体をじろじろと見ている

何だこいつ、まさかそっち系の趣味が……


「いや、見た目は普通の少女と変わらないのだなと」


……俺が考えていた事は間違っていたようだ。よく考えてみればレイエルにそういう趣味はまったく無さそうに見える。というかたぶんレイエルはモテるタイプであって自分から誰かに告白するのは想像しづらいな

よくいうカッコいい女って奴だ


「一応尻尾と耳があるが、ライブラのよくわからない魔法で隠せてる。じゃないとさっきの実習場で色々な人にバレてしまう」


「ほぅ、あいつの魔法もたまには役に立つんだな」


レイエルが感心そうにライブラを褒めている。たぶん、俺は初めてレイエルがライブラを褒めているところを見た気がした


「……じゃあ俺はもう出るから」


「まぁ待て、今日の反省点についても言っておきたいことがある。風呂にでも浸かって待っておけ」


「……わかった」


逃げようと思ったら制止され足止めを喰らった。思わず心の中で舌打ちをしてしまう

何もこんな場所で反省会を開かなくてもいいだろうに……言われるまま風呂に入る俺もどうかと思うが影響を受けているのだろうか


「ふぅ、やはり動いた後に身体を洗うのはいいものだな」


「そうかもな、俺はあまり好きじゃないが」


レイエルがシャワーで全身を洗い流しながら俺に同意を求めてくる

気持ち良さそうなレイエルに対し俺は逆に身体を洗うのは好きじゃない。体を洗うと耳や尻尾の毛に大量の水滴がつくから乾くのに時間掛かるしそれまで気持ち悪いのが続くからだ

ドライヤーなんてないからな、少なくとも俺の身の回りには


「そうか、実は私もあまり誰かと一緒に入る風呂は好きではない。身体を見られたくないしな」


「そんな立派な体つきで何を……っ!」


湯気の中レイエルの背中をよく見ると肩から腰ぐらいまでに長い刀傷の様なものが見えた。他にも全身に無数の傷や痣が見える


「驚いたか、これは私の戦士としての誇りだ」


「誇り?」


「そう……誇りだ。今までに戦って来たものから受けた傷や仲間を守るために受けた傷など様々だが、私が戦士として生きてきた証拠だよ。しかし女としては身体に傷が沢山あるのはやはり……な」


「……そういうのはやっぱり人に見られたくないものか?」


「戦士としての私はこれらの傷に何も恥はない……むしろ誇らしいぐらいだ。だが私は同時に女でもある、好きな男にはこんな姿を見せたくは無いさ」


自分の体を見てレイエルは切ない顔で傷を指で撫でた


「好きな男……ライブラとか?」


「ば、馬鹿者!誰があんな軟弱者など……っ!」


俺が適当に身近な奴の名前を言ったらレイエルが顔を真っ赤にして慌てた様子で否定してきた

これは……まさか当たったのか。こういうのはあまり鋭くない方だが当たるようだ

俺じゃなくて光輝のほうがこういうのは得意なのにな


「恋愛にとやかく言う気は無いが……そんなに好きなら告白すればいいだろう?」


「だから好きではないといっている!!も、もうこの話は終わりだ」


完全に顔をトマトのように赤くして無理矢理話を切るレイエル。やっぱり恋心はよくわからないものだ

顔は真っ赤のままレイエルは浴槽に入り俺の隣まで来た。なんか傍にいるとこっちまで熱くなりそうだ……浴槽だし仕方ないか


「じゃあ反省点を話してくれ、じゃないと今日戦った意味はない」


本音は今までレイエルの話を聞いた意味がなくなるほうが俺にとっては問題だが


「ディスの身体能力については正直驚愕せざるを得ない結果だった、バトルセンスも非常に有能だと見えるが……一番の問題は動きに無駄さが多すぎる事だな」


「無駄?」


「動きは非常に早いが機転が遅いのが一番の弱点だ。今日は私と一対一だったが戦闘状況によっては多対一の場合もある、そんなとき幾ら動きが速く、力が強かったとしても自分の能力を上手く引き出せないことになる」


「対策は……どうすればいい?」


「簡単に言うなら周りの動きをよく見ることだ。後は常に相手を倒すことをイメージすればいい」


「イメージ……か。戦いながらするのは難しいな」


戦いの最中に考え事しながら行動するのは難しい。特に複数の相手なら色んな戦術を一瞬で組み立てなければならないし、まず人間が複数の事を考えながら実行する事はかなり鍛えなければできないことだ

例で言えば右手と左手それぞれ同時に違う文字や絵を書く位の器用さがいるだろう


「それだけじゃないぞ、ディスの場合これからは打撃などの近接戦闘よりも魔法がメインになる。上級魔法は発動範囲が広いのが多かったりするし、効果範囲や発動までタイムラグなどを考えないと大変だぞ?」


「……体術だけでも大変だと言うのに魔法の練習まであるのか」


「有能だとこなす事が多いのも問題だな。しかし有能なのは贅沢なことだ、こんな事を言うのもディスには嫌だろうが生んだ親には感謝しておけ」


「……生んでくれた事には感謝している、別に親を恨んでいるわけじゃない。父親はよく知らないが母親は魔法の才能があったそうだから魔法関係は母親からの遺伝だな」


俺が意識して会ったのは二回しかない母親だがそれでも感謝はしている。それにしても少し気性の荒い性格なのだろう、俺の顔は見たくないようだしな。母親に確かめようにも会えないし、姉達から聞く以外情報を得られない

そんな母親でも前の母親と比べたらマシだろう……自分の意思で俺を嫌っているのだから


「ディスも複雑な家庭の生まれのようだな。ライブラもなかなか複雑な家柄だが……」


「シクロと異母兄弟で母親が違うことか?」


「それもあるが……あの二人はもっと複雑だ。ライブラは長男として代々受け継ぐ『法の番人』の名前を継承し、シクロは自分の性を隠す羽目になった」


「それって……どういう意味だ?」


「そういえば言ってなかったか、シクロは男だぞ」


「…………へ?」


俺は突拍子の無いことを聞かされ俺は変な声が出てしまった


「あれで男?」


「そうだ、正真正銘の男だ。外見上はそう見えないだろうがな」


一瞬レイエルが馬鹿になったのかと思ってしまう。見た目まるっきり女性だぞ、あれは


「ライブラの家柄は少々特殊なところだからな。代々長男はライブラの名と『法の番人』を受け継ぐことが決まっている、しかし同時に他に資格のある兄弟がいた場合……兄弟同士で決闘しどちらかを殺さなければならないという掟があるんだ」


「吐き気がする……家柄の決まりはよくわからないな」


家によって自分の生涯を決められる、絶対に嫌だ。それが自分の兄弟を殺さなければならないという掟など……


「普通に考えて正妻の子であり、資格もそろえていたライブラが継ぐことは明白だった。だが愛人の子供であり資格も少ない、その上に男子だったシクロは掟によってライブラの手によって殺さなければならなかった。しかしライブラは『シクロを殺すなら家は継がない。俺はこの家を出る』と猛反対したらしい」


「仲がいいんだな、あの二人」


「ああ、ライブラはそれから一年以上シクロを守り続けた。そしてどういうわけかシクロを女だと言うようになった」


「……いきなりだな」


「ライブラも自分の考えを後で笑ってたよ、『男だから殺されるなら女として生きろ』とシクロに言ったらしい。まるで子供の様な考えだが現実的にシクロの命は助かった、結果としては最良だったようだ」


あの二人は一見普通の兄弟のように見えて凄く絆が深いようだ、俺とは違って。俺と姉さん達は仲が言い訳ではない……俺はあの二人の愛情を素直に受け入れないのだから


「けど小さい頃なら服や髪型、化粧なんかすれば化けられると思うけど歳を取ったら難しくないか?シクロは今成人なのに見た目は女そっくりだがよくバレなかったな」


「それはライブラの魔法の効果のせいだ。あいつが最初に考えた魔法は『外見変化系』、しかも女に見える魔法だそうだ」


「……もしかして最初に会った変身魔法の元って?」


「そうだ、シクロに使っている女に化ける魔法の発展版だな」


「なんだか……ライブラは凄いくだらない魔法ばっか造ってる気がする」


俺の尻尾と耳を隠す魔法はまだいいとして変身する魔法なんて普段はなにに使うのやら……深く考えないでおこう

たぶん馬鹿らしい理由だろう


「ふふふ、確かにそうだな。だがあれでいて魔法使いとしては一級だ、魔法の師匠にする上であれだけの逸材はそういないぞ。技術も知識も総合すればこのハレスで最も優秀な魔法使いだからな」


そういうとレイエルは浴槽から立ち上がり浴槽を出る。当然だが俺はレイエルの体を見ないように目を逸らす

刺激が強すぎる、なのにここまで無神経だと困りものだ


「明日からはライブラに魔法を教えてもらいながらだが私の体術の修行もある、今日は身体を休めておけ」


「わかった、俺ももう疲労で限界だし体力回復に努めるつもりだ」


「それと……ライブラの修行までに魔導書の魔法は使うなよ、特に上級のわ。暴走の危険があるからな」


レイエルは注意を言い残してタオル一枚のまま風呂場を出て脱衣場まで歩いていく


「俺はもう少し浸かってるか……無駄に疲れた」


レイエルがいたときの緊張感から解放され、元々あった疲労で疲れたので浴槽内で気を抜くことにした。のぼせない様に気をつけないとだがしばらくは動きたくもなかった





シクロ・ライブラ

『能力値』

魔力量  A 

筋力   C

防御力  C

魔法攻撃 A

魔法防御 B

魔力制御 S

使用可能魔法属性 水

『特殊能力』

なし

『説明』

キウロの弟だが国の登録や世間からは妹として認識されている。父親はライブラの家系だが母親は愛人だったため正妻の子ではなく一族からは疎まれている存在。掟の都合上殺されるはずだったところをキウロが決死の思いで庇った

シクロを守るためにキウロは『男で死んでしまうなら女として生きろ』とシクロに女として生きるように強要する事で命を守った(この際に男だとばれないようにキウロは疑似性転換魔法を使いシクロの身体を女にしている)

兄であるキウロが魔法図書館司書長となった後も助手として献身的なまでにサポートすることで兄への恩返しだと思っているが、キウロはいっそハレスから逃亡して自由に暮らして欲しいと願っている。

魔法使いとしては能力はそう高くも無く、戦闘は苦手で治癒するのが得意。なので暇な時は図書館内でけが人や病人を診ている


髪の毛は元々白に近い水色だったが染料剤で染めているため赤色、キッチリとした性格をしている

一人称は私


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