初めての契約!後編
なんといつの間にかお気に入り登録数が1,000件を超えてました……読んでいる読者の皆さんには本当に感謝しても仕切れないぐらい感謝しています!
これからも頑張って更新していきたいな~……お先真っ暗だけど
こんな駄目な作者ですがこれからもよろしくお願いします!!
side 別視点
「……ふん、所詮はあの程度だったか」
白髪の男は勝利を確信していた。それも当然のはずだ。ついさっきディスに向けて放たれたのは炎系統の魔法の中でも上級に部類される物で、その威力は直撃すれば確実に助からないもの。
先程のディスを見る限り確実に直撃していた避けられた痕跡は無い。今も地面に当たった魔法は周りの大地を吹き飛ばし沢山の土砂埃を巻き上げている
「少しは骨があると思ったが……やはり駄目だったか」
男の表情は先程まで戦っていた人物とはまるで違う人のように表情を変える。その表情は悲しみと苦痛で彩られていた
「仕方ない、また待つか、長き時を……っ!?」
「うおぉぉ!!!」
「なに!?」
土砂埃の中から全身の服の殆どが焼け落ちて全身に大火傷を負いながらだが周囲の粉塵を吹き飛ばすほどの超高速でディスが飛び出し、そのまま白髪の男の両腕に掴みかかる
白髪の男は不意を喰らったように抵抗できなかった
「馬鹿な、あの魔法を受けてなぜ生きている!?」
「おぉぉ!!!」
掴みかかっているディスは目の焦点が殆どあっておらず既に意識が殆ど無い状態で、ただ本能のまま白髪の男の両腕を力任せに引き千切ろうとしている
「ぐぅぅ!!」
「はあぁぁ!!!!」
力づくでディスは白髪の男の両腕を引き千切り、そのままの勢いを殺さずで白髪の男を力いっぱい蹴り飛ばす
「ガハァっ!」
蹴り飛ばされた白髪の男の両腕はなくなっていたが、千切れた部分からは出血が一滴も流れていない。だが痛みはあるようで千切られた痛みと蹴り飛ばされた衝撃で口からは胃液のようなものを吐き出していた
「はぁ、はぁ、はぁ」
「やるではないか……だがその状態だと意識があるかどうかもわからぬな」
ディスは千切った男の両腕を放り投げて捨て、息を切らし立ち尽くしている。足取りもどこか覚束ない様子だがゆっくりと白髪の男に近づいていく
「いいだろう、ならばこちらも全力でやらせてもらう!!」
{フレイムセイバー!}
白髪の男の両足つま先からオレンジ色の魔力剣を創りだし、それをディスに向けた。両腕をなくした今の状況でも白髪の男に敗北という意思は無く、むしろ久々の強敵に会えた求道者のようにニヤリと笑っている
「はぁ、はぁ、うぁぁ!!」
殆どの意識を失いながらもディスは白髪の男に突っ込んでいく。両手には微弱だが魔力を纏わせているようだ
意識が殆ど無い今のディスもただ負けたくないという気持ちが身体を動かしているのかもしれない
「ぜぇい!」
「はぁ!!」
ディスは白髪の男の左足に創った魔力剣を紙一重で避け魔力を纏った左手の手刀で魔力剣を叩き折る
「やるな、しかし剣はもう一本あるぞ!!」
しかし白髪の男は右足の魔力剣で更に追加攻撃を図る。確実に急所に当たる攻撃を白髪の男はタイミングよく繰り出してきた
「ぐあぁ!!」
ギリギリのところで身体を捻り急所への攻撃を右肩に変更させ、肩に刺さりながらも右手で白髪の男の右足を掴み圧し折る
「ぐぅ!まだだ!!」
{エナジーレイ!}
白髪の男の口から収束された光線が放たれ、その軌道はディスに向かっている。左足の剣を破壊し、右足を掴み圧し折っている状態のディスには避ける事は不可能な状態だったが……
「ま……だぁ!」
「なに!?」
だがディスは掴んだ男の足をそのまま放り投げ軌道を変更させ、回避に成功した。しかし右肩に刺さった傷の詮代わりをしていた剣が引き抜かれディスの身体からは鮮血が噴水のように飛び散る
「あの体勢から避けた……」
「おぉぉ!!」
そして放り投げた男に向かって左手の拳で殴りかかろうとする
「ここまでか……」
もう白髪の男はこの時点で自らの敗北を確信していた
「うぁぁぁぁぁ!!!」
「ぐふっ!!……ぁ」
白髪の男は急に驚いた顔つきから何か長い間待ち焦がれた物を見るかのような暖かい表情で見た後、悟るように目を瞑った。そしてディスの拳はそのまま男の腹に決まり、その衝撃は男の腹を貫通し地面までへこませ、この空間全体を震撼させた
「はぁ、はぁ、はぁ……ぁ」
「…………」
ディスは満身創痍の状態で、白髪の男は地面に大きく開いたクレーター内で倒れている。
また、ディスも白髪の男を倒した瞬間に糸が切れた操り人形のように力なくその場に倒れこむ
この結果からいえばディスの勝ちなのだろうが意識が無く本能のまま戦うその姿は人間というよりもただの狂った獣にしか見ることが出来ない
もしかしたらディス本人も知らないうちにその気性が魔族へと変わって行っているのかもしれなかった
side ディス
眠い……よくわからない強い眠気の様な靄が頭に掛かっているような感じで思考が上手く働かない
――貴様は我らを倒した――
誰だ?
俺の頭の中、いや正確にはよくわからないがとにかく正体不明の声が聞こえる
――その褒美に我らの力を与えよう――
力?褒美?
……そういえば俺は何でこんな所にいる?俺は魔導書に触れて、白髪の男と戦って……その後は?
――しかし我らは“純粋なる力”。決して貴様が求めるような“力”ではない――
……?
どういう意味か俺にはわからない。力はただ力だろうに……それに違いなんてあるわけがない
――まだ貴様にはわからんか……だがいつかわかる時が来る。己の過ちに――
過ち?
――力を得た貴様は、『悩み』、『苦しみ』、『痛み』、『悲しみ』を感じ絶望するだろう。そして人間の『暴食』『色欲』『憤怒』『怠惰』『傲慢』『嫉妬』『強欲』、七つ全てを味わう――
……聞きたくない嫌な予言だ。それに後半は『七つの大罪』のはずだ、人間である俺も持っているはずのもので、特別それを味わうということも無い。
まぁ半分しか人間じゃないが……
――『暴食』……力を持つ貴様の肉体を求めるものたちを引き寄せるもの――
――『色欲』……その容姿と妖艶な体つきに群がるものどもを引き寄せるもの――
――『憤怒』……強大な力を振るい何かを為せばその力に畏怖し、怒りを覚えるものたちを引き寄せるもの――
――『怠惰』……全てに絶望したものどもに力という希望のまやかしを見せ引き寄せるもの――
――『傲慢』……他人を蔑む事しか出来ない驕った人々を引き寄せるもの――
――『嫉妬』……力を持つ貴様を妬むものたちを引き寄せるもの――
――『強欲』……強い欲望に抗うことを忘れ、自らの利権のみを求めるものを引き寄せるもの――
――これが貴様の大罪、力を持つものの宿命――
ご丁寧に色々と説明してくれる奴だ……だが罪なんて俺は知らない。知らない罪なんかでこれからの人生を決められてたまるか
――貴様に抗うすべはない。これは運命だ――
黙れ、俺は運命なんていう曖昧な存在は信じないし、そんな脆弱なものに縋って生きるような人間でもない
――受け入れぬというのならそれもまたよかろう――
割とあっさり認めてくれるようだ
――では戻るがいい。貴様が己の運命に絶望し、苦しむさまを存分に見せてもらうぞ――
急に頭に掛かった靄が取れるように目の前が明るくはっきりしていく
「……ん」
完全に靄の取れた俺の視界にはあの豪華な部屋の床だ。どうやら倒れるように眠っていたらしい。
じゃあ今までのは夢?いや、違う。身体には戦いの影響が残っている。俺の身体に激しい痛みと疲労が駆け巡っているのが証拠だ
「…………」
『貴様が己の運命に絶望し、苦しむさまを見せてもらうぞ』
俺の頭の中には先程の言葉が蘇る
「……勝手にほざいて……いろ」
悪態をつきながら俺の意識はまたしても闇の中に消えてしまった……単に疲れて眠っただけだが
{フレイムセイバー}
火系統の初級魔法
使われている陣は円陣
刻まれているルーンは『凝固』『鋭化』『燃焼』の三つ。限度数も三つ
主に手の甲から火属性の魔力でできた魔力剣を作り出す近接攻撃魔法。基本的には手の甲から出現させるが、足の爪先や肩など色々な場所に発生させることが出来る。しかし不意打ちにはなるが一回しか使えないのと、魔力剣自体にそんなに硬度が無いため簡単にへし折られるという弱点が存在する