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番外編 リオンの決意

忘れてしまいそうになったら困るので、適当な番外編をどうぞ

ツェーリル大陸にある魔族の国、『アルテミス』。その広さは大陸のほぼ七割の国土を誇る、巨大な軍事国家。軍事国家といっても兵器を作っているのではなく魔族という種そのものが闘争を求めているのでそう呼ばれているだけだ。

およそ千年前の戦いを最後に魔族と人間の戦いは行われていない。先代国王が平和主義だからだ。しかしアルテミスの国王である、エルド・ヴァル・デュナメスが病に倒れたせいで国の治安は荒れた。不治の病に掛かった国王は幸いにも命を取り留めている……だが魔族の王になるということは全ての種の中でも最強の称号を持ってなければ勤まらない。元々魔族に忠誠心や誰かの下につくという概念は存在しないのだ。本来魔族というのは本能のままに戦い、殺戮を繰り返し自らも戦場で散ることを目的とした戦闘種族。そんな自分勝手な連中を抑えるには力しかないのだ。力のなくなった国王では国はまとまらない。だから国王が病に倒れたと同時に王位は四人の子供達の誰かに譲渡されるはずだった。だが第一皇子である、ディゼール・デュル・デュナメスは倒れたと同時期に臣下数十人と自らの血の繋がった弟を一人を半殺しにして国宝であり、神器の一つである魂喰らいの魔剣『ディオボロス』を持ち出し国外へ逃亡した。そして第二皇子であるリオン・ヴァル・デュナメスもディぜールを追って国外へと飛び出した。結局王位は残った妹である第一皇女フェイル・ヴァル・デュナメスに継承されたが、齢三十前半のフェイルには不可能な大役となり国は三つの派閥に分かれてしまう

フェイルを国王と支持する、臣下たちと長生きしている魔族。逆に第三皇子であるアギト・デュル・デュナメスを支持する若く血気盛んな魔族。そして最後は国を離反した魔族たちの三つだ

この三つの勢力は本人達も望まぬ戦いを繰広げる可能性があった






side リオン


「相変わらず国風は変わらないな、この国は。安心したぜ」


「げふっ!」


いきなり喧嘩を吹っかけてきたチンピラをボコボコにして放り投げる。この国の国風は血気盛んだから喧嘩があると思わず安心してしまう


「て、てめぇ……!」


「あれ、まだ意識あるのか?しぶとい奴は……」


「ギャァァァ!」


「嫌いじゃないぜ!」


まだ抵抗の意思を見せるチンピラの手首を踏み潰し強引に切断する。痛みで転げまわっているが魔族なんだし直ぐに再生するだろうに……情けない奴


「丁度いいや。お前今この国がどうなってるか説明しろ、十秒以内だ」


「えっ!そ、そんなの……」


「いーち、にー、ほらほら早くしないと時間がなくなっちまうぞ?」


「ま、待て!説明するから。今この国は三つの派閥に分かれているんだ。第一皇女と第三皇子とそれ以外のもの達の派閥にわかれていてっ!ぐふっ!!!」


聞いててイライラしてきたので背中に思いっきり足を落とし地面に半分陥没させる


「はい、時間切れ。つーかそんくらい誰でも知ってるわ、このボケ!」


「ぐっ!!……」


トドメの一撃に頭部に踵落としを決めて沈黙させる。なんか身体の殆どが埋まってるけど問題ないだろ……たぶん


「はぁ、とんだ時間の無駄だった。早く城に向かうか」


弱いものイジメも終わったし、本来の目的である王城へと向かった











クォール城。それが城の名前、概観はまさに西洋の城だが、種族によってはサイズがとてもでかい者や小さいもの、サイズが違うものが多いこの国用に大きさは普通の城の三倍以上と雲に届きそうなほど高い


「ここもかわらねぇな……門番いないけど」


門番いない城って大丈夫なのかと思うが今の俺には都合がいい。なんせ無断で国から出てきてるし、バレたら首が飛ぶかも


「ちわーす、宅配便です……っていうのは流石に古いか」


古い冗談のセリフをはきながら城内へ侵入する。といってもここにも人は殆どいないな。なぜかはわからないが国が乱れているのが原因だろう。だが流石に門番もいない城内に誰もいないのは不自然だ。まぁいいか、とにかく数年前まではここに住んでいたから大体の重要な場所はわかる。道に迷うことは無いだろう


「まずは親父の部屋に行くか。少し積もる話もあることだしな」


親父の部屋は確か最上階の部屋にいるという話は聞いたことがあるが実際には療養してる親父の部屋なんか知らん。倒れてからここを出たし

というか最上階高いよ。なんで最上階に行くまでに一時間ぐらい掛かるんだ、この城。せめてエレベーターぐらいつけろっての。全長何メートルなんだこの城は

ぐだぐだ心の中で愚痴を零しながらも部屋に着いた


「よう、親父」


「り、リオンか?」


部屋の中心にある大きく豪華なベッドで一人の老人が横たわっている。俺の親父だが病に掛かってから姿が結構変わったな。前はがっしりとした身体に覇気のある強い目だったが、今はやせ細り、目もどこか弱弱しい


「思ったより元気そうじゃねぇか。俺はてっきりもう死にかけてると思ったんだが」


「そ……それはすまなかったな。しかしなぜ今になって?」


「ああ……あいつを見つけたんだ」


「……なに、ゴホッ!」


急に立ったので身体の調子を崩したのか親父は咳き込む


「おいおい、そんなに暴れると身体壊すぜ?」


「だ、大丈夫だ。それより見つかったのか!」


「間違いねぇさ。情報によると今はハレスにいるらしい」


「ハレス?あの魔法大国にか……いったいなぜ?」


「詳しくはわからねぇが、誰かを狙っているそうだ。狙われた誰かには悪いが俺はこんなチャンスは二度とないと思っている」


「そうか……できればお前らには戦って欲しくないが、宿命なんだろうな、きっと」


「……かもな。だから俺にはアレが必要なんだ。神剣『レーヴァンテイン』がな」


レーヴァンテイン……俺の王国から代々受け継がれている二つの神器の一つ。この世で最も破壊力のある最強の剣、伝承では剣ではなく大剣と呼ばれている


「レーヴァンテインだと!?駄目だ、あれだけは……!」


「何を言っても無駄だ。俺の決意は固い」


親父の部屋には暖炉がある。この暖炉には実は隠し部屋に続く通路が隠されている。繋がっている先は二つの部屋、ひとつは神剣『レーヴァンテイン』の部屋。もうひとつは今は無いが神器である魂喰らいの剣『ディオボロス』が保管されている場所だ


「これがレーヴァンテインの保管されている部屋か」


部屋の外からでもわかるこの温度。大きな鉄の扉でしきられているというのに漏れ出す温度は歩いているだけで常人は死んでしまうだろ


「いくぜ」


扉を開け部屋の中に入る。部屋の中は大量の溶岩と共に巨大な炎が部屋の中には満ちていた。部屋の入り口にいても温度はゆうに千度は超えているようだ


「流石に熱いな」


俺の中には炎属性の先祖の血が流れている。だがそれでもこの温度はきつい


「まぁ……俺にはこいつを持っていかなければならねぇからな!」


業炎の中に突っ込む。足も溶岩の中に浸かってしまい、ジュウジュウという肉の焼ける音と共に俺の脚に激痛が走る


「くぅっ、熱ぃ!」


――どうした、そんなもんか?――


「だ、誰だ!」


炎の中で熱さのせいか幻聴が聞こえてきた。いや幻聴にしてははっきりと聞こえてくる


――てめぇの覚悟はそんもんかって聞いてんだよぉ!!――


「あ?だれだてめぇ!」


――そんなことどうだっていいじゃねぇか。俺はてめぇに覚悟があるか聞いてんだよ!!――


「……ざけんな、俺はあいつを殺さなきゃなんねぇんだよ。覚悟なんてできてるに決まってんだろぉ!!」


炎の中を草を掻き分けるように進んでいく。そして炎の先に一つの剣がみえた。いや、剣というよりはもう塊にしか見えない。全長は軽く二メートルを超える馬鹿でかい刀身。刀身の大きさだけでも俺よりでかい、一番驚くところはオーラだ。この部屋に満ちている全ての炎はこの剣から出ていた


「これが神剣、レーヴァンテイン……なるほど確かにすげぇ力だ。少しでも気を抜いたら俺がこの炎で焼かれちまう……!」


――わかってんなら近づかないほうが身のためだぜ、俺は誰にも従わねぇ!――


「……そんな事聞いてねぇよ、この鈍ら剣がぁ!」


――あ?――


「てめぇが誰にも従わない?……そんなこと知ったことかよ」


――ほぅ――


「俺はあいつを殺すんだ……だからてめぇの意思なんかどうだっていい!!」


もう少しで手が届く。レーヴァンテインの柄に……


――…………――


「あいつを、全部をぶっ壊した兄貴をなぁ!!」


俺の手がレーヴァンテインの柄を完全に掴む。そして掴んだ瞬間周りに満ちていた炎は全て消えた。つまり俺の勝利だ。剣相手に勝ったもくそも無いかもしれないが


「はっ、剣風情が調子に乗りやがって」


勢いよくレーヴァンテインを引き抜き、手に持ってみる。持つだけでもわかる強大な力、それに馬鹿でかい刀身、一人が扱える大きさではないな

背中に横にして担ぐ。それでもでか過ぎる刀身だ、かなり身体からはみ出ているがどうでもいいか


「さて、これで奴と同じ力を手に入れた。後はあいつを殺す。今行くぜ、クソ兄貴」


この日、大事件が起きたと国中で騒ぎになったそうだ。神器強奪事件、たぶんというか犯人俺だけどな








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