空気な時はひたすらマイペースに
忙しい日々の息抜きだね……
side ディス
「……ぅ……ここは?」
身体にだるさを感じながら目が覚めた
周りを見渡してみると此処はどこかの書斎のようだ。仕事机に、対面している二つのソファーと本が沢山収納されている本棚だけある生活感の無い部屋。俺はソファーの上にクーと一緒に寝かされていて、仕事机には大量の書類が積まれており仕事が溜まっているのがわかる。どうやら此処の部屋の主は仕事にはだらしないようだ
(何でこんな場所にいるんだ?俺は魔法図書館に向かっていて……あっ!)
「……巻き込まれて気絶してたのか」
ポツリと俺の口から悔しさの混じった独り言が漏れた
「此処はどこだ?」
なぜここにいるかより、此処がどこなのかわからない事の方が気になる。幸いにして危なさは感じないが知らない部屋に連れ込まれるのはいい思い出がないので思わず警戒してしまう
「此処は魔法図書館の司書長室だぜ」
「っ!?誰だ!どこにいる!?」
どこからか男性の声が聞こえる。だが周りを見渡してみるがどこにも人影らしきものは見当たらない。しかし声が聞こえたということは近くにいるのだろう、いったいどこに?
「どこにいるか……それは誰にもわから……」
「遊ぶな!」
「あべしっ!」
「へ?」
またさっきの声が聞こえてきた時、入り口から突然入ってきたレイエルが天井に向かって何かを投げつけた。すると天井と同じ色の布を身にまとった変質者が墜ちてくる。この布で天井の色と同化して隠れていたのか……前世でみたパチモンの忍者みたいだ
変質者は髪がオレンジ色で、良く言えばすらっとした体系、悪く言えば貧弱そうな体系をしている。顔だけを見ると頭がよさそうだが今の行動を見る限り性格は活発で軽い感じのようだ
「痛つつ〜、俺は今日だけで何回痛い目にあうんだ?」
変質者?は落ちた際に頭をぶつけたのか自分の頭を痛そうにさすっている。まぁ結構いい音していたので当然といえば当然だが……
「お前がふざけるからだ!!」
「ちょっとしたユーモアだろ、お前は頭が堅すぎるんだよ!!」
「真面目のどこが悪い!!」
「真面目じゃなくて堅物過ぎなところが駄目なんだよ、もっと柔軟な思考をもちやがれ!そんなんじゃモテねぇぞこの暴力女!!」
「なんだと!!」
口喧嘩を始める変質者とレイエル。ていうか変質者の名前はなんだろう、この調子だと二人は俺の声がとどか無そうだ
「……俺空気だな」
当然だが俺の呟きは二人に聞こえるわけもなく、しばらく言い争っていた。俺はというと自分の世界に浸りながら寝ているクーの頭を撫でて一時の安らぎを得ようとしている。いつの間にかクーが癒しキャラになった
ここからは醜い戦いが始まったので俺の小話でも一つ
俺が始めて魔法を使った時の小話
あれは俺がレイミィ姉さんと会ってしばらく経った時の事だ。以前姉さんが使っていた不思議な力がなんなのか聞いたとき
「ああ、あれは魔法よ」
あっけらかんと当然のように魔法という単語を話すレイミィ姉さんを疑った。確かに超常現象を引き起こしているという点では魔法という言葉はピッタリかもしれない。だがそれでも選ばれたものにしか扱えないとかそういうものの印象しかない
だから俺も使えるのかと聞いた
「たぶん使えるんじゃない。見たところ才能はありそうだし」
これもあっけらかんと言われた。どうやら魔法は一般的なものらしい
そして魔法が使えるという言葉に俺は高揚感を隠しきれなかった。前世ではだいたい誰もが小さい頃ぐらいの時、魔法という言葉に憧れを持っていたはずだ。それが使える……精神的には既に大人だったがこのとき俺は子供のように喜んだ
「じゃあ、まずは魔法の基礎からね」
「げっ!」
そういってレイミィ姉さんが持ってきたのは馬鹿みたいに多い書物。全て魔法関係のようだが分厚いので読むのにいったいどれだけの時間が掛かるのか……
「全部読んどきなさい。魔法はね、まず知識からが大事なのよ」
このとき俺は初めて気づいた。レイミィ姉さんがかなり熱心に教えてくることに。そしてそのせいで俺はかなりしんどい目に合った、来る日も来る日も勉強ばかりで俺が魔法を使わせてもらったのは魔法という単語を知ってから既に一ヶ月が経過していた時だ
「じゃあ簡単な魔法からね。まずディスは何の属性が使えるのか確認しないと、最初は火ね」
{ファイアボール!}
放たれた火球は岩を破壊した
「うん、上手いわね。一回でコツを掴むなんて、すごいじゃない!」
「これが……魔法」
俺は褒められた事よりも魔法が使えたという事に感激していた
「じゃあ次は水」
{ウォーターアロー}
水の矢も周囲の木々を破壊していく。この時点で俺には火と水の属性が使えるということだ
「火と水が使えるなんて、すごいことよ!」
「そうか?」
「そうよ!この調子で色々と試してみましょう」
結果、全ての属性が使えることがわかった。なぜか嫌な予感がしたがやっぱり当たったようだ。どうせあの女神の事だから『チートだよっ!』という理由でやったに違いない、あの駄女神が……
大体炎と氷とか光と闇なんていうのは相反する力だ、同時に使えるなんてそんなことはありえない
この事には流石の姉さんも驚いていた
「ディス、あなたすごいわね……その杖はあげるわ」
「いいのか?」
「いいわよ、それは私が小さい頃に練習に使っていたものだし。それに……」
「それに?」
「今のまま練習もしないでその力は使えないでしょ?だから練習しなさい」
「……ありがと」
俺が初めて魔法を使ったのは今も持っている初心者用の杖。つまり俺は魔法に関しての最初の師匠はレイミィ姉さんだった