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第一話「ある晴れた日のこと」

 今日は晴れだ。それはもう雲ひとつないとても気持ちの良い晴天である。暑すぎず、寒すぎない今日の気温は、日本人のほとんどの人が好む気温だろう。無論、俺もその中に入る人種だ。


 さて、こんな気持ち良い晴れの日であるのだが、ひとつだけ気に入らないことがある。このわけのわからない妙な胸騒ぎはなんだろうか?俺の胸騒ぎがある日は、これまで何度もあったがけっして良いことは起こらない。

 6歳の頃、夏休みにお祭りで楽しむために正月のお年玉から、必死になって貯めたお小遣いを、犬の散歩中に落として無くす。

中学2年生の頃、体育祭の選抜リレーに何故か立候補してしまい、これまた何故にかクラスの連中に期待の眼差しを向けられ、いやいやではあるが、ガラにもなく1ヶ月近く前から真面目にスタートダッシュ、バトンタッチ、スタミナ強化などの練習を必死にやった。のだが、それも空しく当日は雨天中止となった。

 中学3年生の頃、前々から希望していた有名私立高校に進学するため次のテストは全教科高得点をキープするぞ!と激しく意気込み、家に帰ればテスト勉強を黙々とし、寝る日々を繰り返していた。が、テスト当日。開始のチャイムと同時に裏にしてあった問題用紙をひっくり返し問題に取り掛かる。1問目がわからず飛ばして2問目、そして2問目もわからず3問目。


 ………そこでようやく俺は気づく、あらかた全部の問題に眼を通して見たが、解けそうな問題がほとんどない。そう、俺はやってしまったのだ、今まで毎日勉強していたのは今日のテストの範囲ではないところ。今日のテストには「無意味」という三文字を必死にやっていたのだ。結果はいうまでもなく全滅。

全ての教科の範囲を間違えるというミラクルをこんなところで起こしてしまった俺はショックで2日間寝込み、中央榊高校に進学することを担任に伝えた。もちろん今現在通っている、家から徒歩20分で着く偏差値並以下の県立高校であるわけだ。

 そういえば考えてみるとその頃くらいからだった、俺がなにをするのにも興味が無くなっていったのは。簡単ににいえば燃えるような熱い闘魂魂!というのが薄くなってしまったのだ。「頑張る」という言葉が俺の辞書に存在しなくなったという言い方のほうが正しいかもしれない。


「は……はっくしょんっ!」


 なんの前触れもなしのくしゃみ。これは本当にやばいかもしれないな、なんの前触れもないのにあんな大きなくしゃみがでるなんて。まぁ、なんかの前触れがないとくしゃみをしてはいけないのか否かは知ったことではないが。ますます胸騒ぎ心配率は高まっていくばかりだ。

 そんなことを考えつつも俺はいつもの通りT字路を右に曲がり突き当たったところにある駄菓子屋の近くにある自動販売機でジュースを買おうとする。


「おっと………」


 100円玉を落としてしまった、それもナイスな具合に俺の腕がギリギリ届かない位に離れた隙間という悲劇的にだ。まさかこれが俺の妙な胸騒ぎの答えか?いやいや今回の胸騒ぎはこんなもんじゃない!もっと、そう、なんか大事件に巻き込まれるような、そんな胸騒ぎだ。

 なぜそう思うのか全く根拠はないのだが、体中が悲鳴をあげているような気がするんだからしょうがない。まぁ、そんなことを考えていても何も始まるわけでもないので、いや、決して始まってほしくはないのだが………。


 キーンコーンカーンンコーン………


「んっ!もうそんな時間か!」


 いささか考えに没頭しすぎていつもよりも歩くスピードが遅かったみたいだ。遅からず速からずのスピードで歩いていた俺を、チャイムがせかかすようにその音を響き渡らせる。待ってろ、絶対後でお前を迎えに行くからなっ!もちろん俺としばしの別れを告げた相手は、光輝く100円である。さて間に合うか?

少し息を切らしながら教室に入る、教師がいないところをみるとギリギリセーフだったみたいだな。


「ようっ!修平にしちゃ今日は遅かったなぁ」


 窓際の一番後ろにある自分の席に座ったと同時に、朝っぱらからやけにテンションの高い声で俺の肩をポンッと叩く。


「……そういう松岡、お前はやけに今日は早いじゃないか?今日の天気予報で雪が降るって言ってたんだったか?」


「なんだよぉ?俺が早く来ちゃ悪いのかぁ?なんとなく今日は早く来たかったんさぁ」


 そりゃ万年遅刻の松岡が俺よりも早く学校に着いているんだ、そう思ってしまうのは当然な答えだろう。それに、なんとなくなどの不可解な理由で何度も雪を降らせてもらってはたまったもんじゃない。


「まぁ、それにまぁじで嬉しい出来事があったんだよ!……聞きたいかぁっ?」


 いや別に興味ない。と言っても無理やり聞かされるだろう。


「どういう理由なんだ?」


「内緒だぜ?実はなぁ……」


 おい、なに顔を赤くしてるんだ。そして、今気づいたんだが目の前で大の男が頬を紅潮させている姿を見るのは結構不愉快極まりないな。


「……俺の下駄箱に蒼井サクラのラブレターが入っていたのさぁ!」


 気持ち悪い顔をしこたま赤くしてさらにきもち悪くなったのはしょうがない。ほほう、ラブレター………ね。こいつの口からは一生出てきそうもない言葉が出てきたことは予想外だった。それとどうでもいいことなんだが今時高校生がラブレターってなんかちょっと時代錯誤な雰囲気を感じる手口だと思うのは俺だけか?

 それにしても人間ってのは本当に色々な人種がいるんだなと改めて痛感した。松岡だぞ?まぁ、良く見なければ顔つきも……まぁ、それなりのもんだし。身長だって人並みより少し上くらいのもんだしな。かなり妥協すればなんとか好青年に見えなくもないだろう。

 ん~それでもなんだろうか何かが引っかかるんだよな、松岡のことを好きになってくれる人がいるとはな。蒼井サクラ、か。その子もだいぶ変わってる子なんだなぁ………


「……っって、あうぉいさくらぁぁっっ!?」


 自分でもびっくりするようなメタルも真っ青な声が教室に響く。


「しーっ!おいおいっ!あんまり大きな声出すなってぇ!」


 今世紀史上最大の半端じゃない驚愕のあまりについつい大声を出してしまった。そのせいでほんの一瞬の間だけだがクラスの人気者気分を視線だけ味わえちゃったじゃないか。そしてだ、目の前には馬面のように鼻の下をゆるませた松岡。


 いやいや、落ち着け落ち着け。


「……ああ、蒼井サクラって言ってもあれだろ?同姓同名のそこら辺の蒼井サクラさんだろ?」


 俺は、心の動揺を体の中にあるあらゆる軍を総動員させて力で鎮圧し、冷静を装い訂正した。


「そうそう……っておい!どーしてそこら辺の人が俺の下駄箱にラブレターを入れるのさあ!よく聞いてくれぃっ!ちゃんと調べてみたらこの学校には蒼井サクラという名前の人はたったの一人!我が中央榊高校の一年八組。マドンナサクラちゃんしかいないのだよ。それがどーいう意味かわかったかね?」


 いや、全くもってわからん。体中の細胞という細胞が拒否反応を強制的に機動しているのだから全くもってしょうがない。それにだ全知全能なる世界を創造したまえた神がそれを運命なのだからしょうがないと俺に一生を懸けて説いたところでこの拒否反応、拒絶反応を止めることは無理だろう。うん。そうに決まっている。


「まぁ、実物を見ないと話しは始まらないってやつだよなっ!ちょっとまってろ……」


 そう言い、ごそごそと紺色の制服ズボンに両手で両方のポケットをまさぐる。


「えぇ~っと、ほら、ジャジャッジャーン!これが例のブツだ」


 わけのわからない効果音と共に、まるで麻薬を売買している闇のブローカーのようにゆっくりと差し出してくる。俺はその封筒(ラブレターらしきもの)を受け取る。可愛らしい封筒にはハート型のシールがかろうじて封をしていた。一度、開けたため粘着力が薄まってしまったのだろう。俺はそれを軽くこするくらいの力を指に入れて外した。

 俺には、人の恋文を見る趣味などこれっぽっちも持っていないし、こんな手紙など見たくない。だいたいこういうものは、受け取った者だけが読むものなんじゃないか?それを全くといって良いくらいの部外者の俺が読む権利なんてない。

 と、深く心から思うのだが、早く早く!と眼を輝かせて目の前に突っ立っている男が少しずつ近づいてくる恐怖という力、が俺を動かせた。二つに折られていたそれを、ゆっくりと開いていく。なぜそんなゆっくりに開くかって?万が一、億が一にだ!本当にあの美貌にたぐわぬ可愛らしい字で書かれていて、最後にその人の一字の誤字もなく「蒼井サクラより」などと書かれていたとしたら、俺は多分一瞬にして人という職業を捨ててヤギへと転職しそれを永遠の闇の中へと放り込むであろう。でも、断って置くがな。俺は、ほとんどの男子同様に蒼井サクラを神のように崇拝しているわけでもないし、ファンクラブに入っているわけでもない(ファンクラブ創設者は言うまでもない、だろう?)。他の子に比べて少し可愛いかな、と思うくらいなもんだ。


 いや、本当だぞ。

だって俺は、同じ学年であっても一度も話した事さえないんでね。


「ほらっ!早く読んでくれよ~!あっ、もちろん口にしないで黙読してくれなっ?」


 あえて大声で呼んでやろうか。と思わせてくれるくらいに良い笑顔で言ってくれるじゃないかこの野郎。俺は左右の腕の力を瞬時に開放しようとも思ったが、しぶしぶと手紙を見た。


「わかった。わかったからそれ以上その眼とその顔で近づくんじゃ………これはっ!?」


 どういう表現の仕方をすればいいのだろうと考えてみたが、やはりこれしかないだろうという考えにすぐ辿り着いた。次回へと続かせるように、なおかつ期待感を高まらせる表現方法。


 そう……衝撃の事実がそこにはあった。





みなさん、こんにちわ。そして、読んでくれたことを心から感謝します。

今回この『俺の世界崩壊の日は』を連載することになりましたが、この小説は昔、他サイトで公開していた奴をほんの少しだけ修正した奴で。所々わけのわからない表現があったりしますが、温かい目で気にしないで読んであげてください。

それでは、よろしくお願いします。

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