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どうか探さないでください〜職場の先輩が私の小説の過激ファンだった件〜  作者: ぬぁ。


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1.叩き上げのホープと呼ばれる男

 


「株式会社小森屋初の名前採用の新人社員ってのはお前かー?」



 うちの会社のネームプレートは名前のみの表記になっている。しかも、海外勢もいる為、全員が読みやすいようにローマ字表記。



 目の前の男の首から下がるネームプレートには、(株)小森屋 Sui と、書かれている。



 パーマのかかった焦茶の短髪に、おそらく180センチ近くあるだろう身長。チャコールグレーのスーツを着こなす姿。

 この人が噂の、23歳の営業部長、結城 翠(ゆうき すい)



 ――叩き上げのホープと呼ばれる男性社員か。



 私のことを頭の先から見ていた、結城部長の視線が胸元のネームプレートでとまった。



 私の名前は小森谷 茶々(こもりや ちゃちゃ)

 そして勤務先は、株式会社小森屋。



 そのせいで、私のネームプレートだけは妙なことになっている。



(株)小森屋 Chacha



「ふっ……」


「ふ?」


「ふる、フルネームって……」



 小刻みに肩が震えていたその男は、堪らずブハッ、と遠慮なく吹き出した。



 なっ……、なんっなんっだこの男はーっっっ!!!



 普通、人様の名前でこんなに笑うかぁ!?

 失礼すぎるっ!



 というか、いい加減笑い止めなさいよっ!



 せっかく、せっかく念願の、子どもの頃から大好きだったお菓子のメーカーの正社員になれたのに、こんな人が上司だなんて聞いてない……っ!



 洗練されたダークグレーのパッケージに、真っ赤なストロベリーチップスが、どんっ、と置かれたデザイン。

 中には薄く薄ーくスライスされたドライストロベリー。それに、甘酸っぱいオリジナルパウダーがかかっている。



 食感中・油物中の私が、自分の体質診断を行って絶望したのは今よりうんと幼い頃だった。



 人の身体には分解しにくい物質があるのはご存知だろうか?

 アルコールも然り。アルコールの他に、糖質や脂質も、体質によっては分解されにくい場合がある。



 その場合どうなるか。



 脂肪としてつきやすくなるか、消化しきれなかった不純物が肌にできものとなって残るか、そんなところだ。



 そのことを知って、大好きなファストフードもポテトチップスも食べれなくて。

 打ちひしがれた私の救世主となったのが――このストロベリーチップスだったのだ。



「腹が立つ……、腹が立つ、腹が立つーっ!!!」



 怒りのままに、タン、タン、タァァァン!!!とキーボードを打ちまくる。



 仕事が終わり、自宅の愛用のパソコンデスクに、ホットココアを注いだお気に入りの蓋つきマグカップを置いたらもう、くつろぎの空間の出来上がりだ。



 真っ白くて背もたれが長いフワフワのデスクチェアに腰を沈め、今日のストレスを文字に乗せる。



「ふんっっっ!!!今日だけで3話も書き上げてやったわ!!!あーっにしてもあの最低上司!思い出せば思い出すほど腹が立つ!!!」



 Web小説の執筆がいつも以上に捗った。



 昼は、大手菓子メーカーの事務員として、キーボードを叩き。夜は、兼業作家として、キーボードと向き合う。



 それが、小森谷茶々の日常だった――





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