5. 少しずつ変わっていく
「ア゛アアア…マズい…」
面接で相当な魔力を持っていかれるので、手っ取り早く魔力を回復する方法がこれしかない。とはいえやはりきつい。ホーリーの孤児院が分けてくれるポーションは最近濃度が上がって、まずさもひときわだ。
「また試供品飲んでるの?」
そばで見ていたグルゥがわらっていた
「だってホーリーには感想伝えないといけないもん。」
「ほんと、お人よしだね」
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孤児院ではマジックリーフ、マジックナッツ・マジックフルーツの代わりにマジックビーズの栽培を始めた。
最近入ったドラゴン「オル」の進言だ。
オルは農業経験が豊富で、マジックリーフ・マジックナッツ・マジックフルーツを採取するよりもマジックビーズ栽培したほうが効率がいいと教えてくれた。
ビーズ1粒からとれる量は少ないが、ビーズ自体が大量にとれる。孤児院がせびられて大量の原料がいるなら、いっそ栽培をしたらどうかと提案してくれた。
さらに、オルがいうには、マジックリーフ・マジックナッツ・マジックフルーツをいまのペースで採取し続けると、かなり近い時期に採取できなくなる期間が発生してしまう。これこそが悪徳貴族たちの狙いで、大量乱獲をしてくれるボクたちは一見孤児院を助けているようで、孤児院を追い詰める結果になる。
だが、ウチの、ギルドハウスの中では栽培できない。やれば冒険者ギルドに目をつけられてるので一発アウトだ。だから、公然とやれるにはホーリー側でやるしかない。
ホーリーは最初こそ大反対していたが、オルの話をしたところ、納得してくれた。
教会の敷地内に農園を作って、その農園に、隣町で買ってきたマジックビーズを植えた。買った店の店主からマジックビーズは聖魔法があれば急成長させられることを教えてもらったので、ホーリーに聖魔法を注いでもらった。
すると、急成長してわずか1週間で本当に木になった。木といってもヒトの背丈ほどだけど。ホーリーの聖魔法は純度が高いらしく、それがマジックビーズの成長が促進した。それを知ったホーリーたちは、収穫できたビーズをすぐには使わず、またそのビーズを植えて規模を拡大。勢いがあまってマジックビーズの小さな森ができてしまった。今はビニールで囲ってハウスにして、憩いの温室にしているとか。
ビーズで増産できるようになった孤児院は、貴族や商人からの無茶な要求に応えられるようになって、余った分を冒険者ギルドに流し出した。結果、貴族や商人たちの転売行為が明らかになり、貴族のやっている店から買わない人たちが続出し始めた。かれらは孤児院が販売できないようにさらに買占めを強めたが、いまでもビーズの木を増やし続けてホーリーの魔法でぐんぐん成長しているので、枯渇することはない。だから、買占めは何の効果もない。結局、売れないものを仕入れ、大量の在庫を抱えるだけだ。
結局彼らは大量にポーションをもって、どこかへ行ってしまった。頑張って売りさばいてね。ウチが孤児院のポーションの運搬やっているから相当遠くにいかないと無理だと追うけどね。
ちなみに彼らのやっていた店舗をドラゴン買取専門ギルドで引き取ってくれと冒険者ギルドから打診を受けたので、「いったんウチで買い取るから、その土地を、ウチのとなりの廃墟の建物と土地に交換してくれ」と頼んだら受け入れてもらった。
で、ボクに押し付けたはずが手元に戻ってきてしまった冒険者ギルドは空いたテナントを結局更地にした。今は冒険者ギルド管理地という立札が立っていたので、下っ端の職員を捕まえて聞いたところ、「事故物件扱いとなってしまったので、しばらく買い手がつかないので塩漬けにする」のだとか。
これで孤児院に少しは貢献できたと思ってていたら、孤児院は今まで迷惑をかけたお詫びとして今よりも良質なポーションを出荷すると言い出した。冒険者たちからは、量が少なくて持ち歩きやすく、副作用が少なくてありがたいと好評だ。
でも、ホーリーが味の感想をボクに聞いて来るのはやめてほしい。
正直にいえば、味は以前よりも最悪だ。
ヒールポーションはまだいい。信じられない苦味の後にスカッとくる爽快感があるから。
マジックポーションが最悪。ひたすら苦い。冒険者たちにも愛用者がいるが、よく我慢できると思う。この前、試作品と称してブドウで味付けをしたものをもらったけど、まったく打ち消せてない。
まあ、でも、たしかに副作用はほとんどないのでありがたい。だから文句いわずにごまかしている。ホーリーは気が付いていそうだけど。
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ドラゴンたちをお風呂に入れて手入れをしていると、外で音がした。空輸部隊が戻ってきた。運搬チームもいまや陸運部隊と空輸部隊がある。
「おかえり、みんな」
6頭ほどのチームで、チームリーダーは長い付き合いのウングだ。
「えーと、今日は6件だね。本当にお疲れ様。じゃあ、ウング、ギルドに完了報告しにいこう。」
ボクがそういうと突然大型のドラゴン、ロゲスが話しかけてきた。
「実は森で冒険者を見かけた。」
一応空輸部隊を立ち上げる時に冒険者ギルドに申請をしたら、冒険者ギルドからは森に人がいたら報告するようにいわれた。見かけたらいいのでというあくまでもお願いベース。どうも、依頼が出ていないのに勝手に入って素材集めしてしまう輩がいるのだとか。
ただし、ショートカットをしている冒険者の可能性もある。確かにこの街にくるには森を突っ切ったほうが早い。だがそんなところを通る人はいない。立派な街道があるからだ。
ちなみにこの街道整備にはドラゴン買取専門ギルドも参加している。おかげで地域交流が生まれて、今は名実ともに「ドラゴン養老院・保護施設」として有名になって、ちょっとした動物園だ。なので最近は別でふれあいチームも作って本人たちの負担のない範囲で地域のこどもたちとの交流もしている。
冒険者ギルドに目撃情報を提出。
三人組の少年たち。ボクぐらいの年齢か少し幼い位で、狩りをしているようだった。
副ギルド長の判断はそれを書類に起こすとしばらく奥のデスクで何やら作業をして戻ってきた。
「ご苦労。約束の業務委託金だ。」
「いつもありがとうございます。」
ちなみに業務委託というのは、ギルドが別のギルドに出す依頼だ。いまやウチ、ドラゴン買取専門ギルドは外部の違法ギルドから冒険者ギルド内ギルドに格上げとなった。おかげで、依頼はボク個人で受けるものよりもギルドとして受けるものが増えて、収入も安定している。
「副ギルド長さん、お気に入りですもんね。」
「あまりいうな。」
副ギルド長は受付嬢さんにいわれて顔をそむけた。
受付嬢さんによると、ギルドの依頼は報酬が100%払われず、10%がギルドの手数料となる。これは個人の場合で、パーティを組むとギルドの取り分が8%になる。
ここまでは知っていたが、他ギルドへ仕事を投げた場合(委託)は、なんと1.5~2%程にまで下がる。これは、そもそも冒険者ギルドで処理すべき案件が、何等の理由で手に負えなくなった、または、いつまでも残り続けていしまったという意味だから。他のギルドに持って行ったときに「うちの取り分は2%まで譲歩している。2%とられたとしてもそっちで個人に投げれば実質9.8%、パーティだって実質7.84%が利益にできる。だから文句ないだろ?」と言って引き受けてもらう。
「で、実はな。」
副ギルド長がボクに手をあわせてきた。
「すまん。三人組のガキどもだが」
「捜索ですね。」
「ああ。これから、手が空いているメンバーで今夜探しに行く。でも、もし、明日の朝までに発見できなかったら頼む」
「はい。では明日の朝、確認に来ます。」
「おう。頼む。」
捜索部隊ももちろんある。討伐チームと運搬チームの選抜メンバーだ。上と下から一気に捜索をするこのスタイルで何人ものかけだし冒険者を救ってる。
幸いにして、無断で森に立ち入った少年たちは無事夜のうちに発見された。彼らは副ギルド長からお叱りをうけたものの、それ以上のお咎めはなかった。ただ気になっていた。彼らはどうみても駆け出しに見えた。
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「…そうですか」
ボクは懺悔室でホーリーに若い冒険者の仕事を奪っしまったことを反省していた。
「ちょっと小遣いが欲しかったってことですから、安心して」
「でも…ボクは彼らまで傷つけるつもりはなかった。」
「気にしないで。決してスノウが仕事を奪ったわけではありませんから。」
ホーリーは聖書をひらいて何かを読み上げ始めた。心を落ち着けなさいという儀式だ。ボクは手を組み、ホーリーに向かって頭を下げた。
「今後…気を付けます。」
聖書が閉じたところでボクは目を開け、決意を述べた。
「こっちもできるだけ指定依頼を出すようにしますね。」
「ありがとう…ございます。」
ボクはしっかり礼をして懺悔室を出たが、ホーリーがすぐに声をかけてきた。
「ちょっとお話したいことが…」
「何ですか」
「とにかく冒険者ギルドまで」




