6. バード、スノウを追いかける
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オレとザードは進行方向を逆に向けて、スノウの足取りをおった。スノウなら絶対に以前いった場所へしか行かないと思ったからだ。
行く先々でスノウの特徴をあげて見なかったを聞く。しかし、どこにいっても目撃情報はなかった。
「小さいとはいえ、夜にはあれだけ多くのドラゴンを出しているんだ。どこかで見つかりそうだが」
「だいぶ遠くまでいったかな。でも馬車と歩き。そんなに遠くにはいけないはずだ。」
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この日はザードの提案で宿屋近くの酒場へいくことにした。
「仲間だと思ったドラゴンが飛んでちまってさぁ」
夜の酒場でザードが酔ったふりをして冒険者たちに声をかけていた。すると顔を真っ赤にした冒険者が声をかけた。
「そりゃあ、災難だったなぁ」
「そうなんだよ。朝起きたらいねぇんだからよぉ、ショックでさあ。」
「ハハハッ。嫌われたのか。」
「まったく。鎖まで食いちぎって、どこにいったか探しているんだよぉ」
すると別の冒険者が絡んできた。
「にいちゃん、しっかりしなよ。どうせ今頃どっかの商人につかまっているよ。」
「まじかよぉ。大事にしていたのにぃ。」
「そんなにあきらめきれないなら、ここ行ってみたらどうだ。」
男がちらしをザードに差し出した。
「なんだ、…ドラゴン買取専門ギルド?」
「ああ。そこのマスターがよ、びっくりするくらい優しいヤツでさ。」
「ああ、ちょうどお前らくらいのやつさ。」
「…。それで?」
オレは食い入るように聞いた。
「それがよ。モンスターの解体を代行してくれるんだよ。しかも素材になっていない状態で買取する。価格がちゃんと処理した時の値段でさ」
ザードはその紙をピッと取り上げた。
「ありがとう。助かったぜ。」
ザードは「ドラゴン買取専門ギルド」がスノウだと考えていた。
「解体前なのに解体してきれいな状態の素材の価格で買い取るなど普通の人間がやれることじゃない。この人の好さはどう考えてもスノウだ」
そして、ザードがいうにはこの広告にはすごい悪意を感じるらしい。
「金さえもらえればあとはどうでもいいという冒険者に対する強烈な当てつけがある。」
もしそうだとしたらスノウは人格が崩壊して、その勢いで暴走しているかもしれない。
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「ふぅ…」「くあぁ…」
さすがにくたびれる。ザードの提案で、ドラゴン買取専門ギルドを目指しているが、馬車の連続乗り換えは予想以上にハードだった。
「休憩させてくれ。」「ああ、オレもだ。」
ヘロヘロの体で宿をとった。
「バード、明日も早いぞ」「…だろな」
もう夕食の時間はとっくに終わっている。外に食いに行くことにしたが、もう体がいうことを聞かない。ちょっとだけ寝てからと思って寝て起きたらもう夜中だった。
仕方ないので酒場で夜食のような夕食にする。酒すら入らない状態だが、とにかく食事を胃に詰め込む。明日も昼抜きは確定だ。
「ほんとにこんなことをスノウはしたのかな。」
オレの問いかけにザードが真剣な目で答えた。
「あいつは家族のためなら自分の命も削る。その気になれば、徹夜で走り続けることだって、野宿だってする。」
やや信じられないが、ザードがいうならほんとかもしれない。
オレがそう思ったとき、俺の耳にこんな会話が入ってきた。
「ドラゴンの養老院って発想がすげえよな」
興味がわいたオレははその冒険者に聞きに行った。人の好さそうな若い冒険者のグループだ。
「なんなんだ、そのドラゴン養老院ってのは。」
「ああ、引退させる予定のドラゴンを買い取っているところだよ。あ、広告あったな。えっと」
そういうと冒険者は紙を出した。同じだ。ドラゴン買取専門ギルド。
「ちょっとまて。養老院ってのはどこに書いてあるんだ。」
「書いてないよ。でも、実際いったらそんな感じ。オーナーに質問したら、買い取ったドラゴンは、その施設で面倒を見てもらえるんだって。だからボクたちはドラゴン養老院って言っているんだ」
「施設で面倒を見てもらうにはいくらかかる?」
「こっちは一銭も払らわなくていいんだよ。ドラゴンが自分で稼ぐからいらなんだって。」
「ということは売却されてもなお働かされるわけか」
あれだけドラゴンの命を大切にしていたスノウが今はドラゴンたちの命を金に変える存在になったのか。そう思ったと同時にその冒険者がいった。
「人聞きの悪いことをいうね。まぁ、買取はそうだね。でも、施設にいるドラゴンたちは結構周辺から人気もあったよ。今はドラゴン専門の動物園みたいな感じにもなっているかな。」
「うん? その施設のドラゴンたちは暴れないのか」
「そんな無理やり感はなかったけどね。」
「うん。みんな生き生きとしているって。」
オレはあっけにとられた。ザードの予想したものよりも明るさがあったからだ。
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数日後の夜。オレは不思議な夢を見た。
いつか訪れたさびれた辺境の街。オレはその街を歩いていた。懐かしい。このころはとても楽しかった。ホーリーもキッドもいたな。このころが一番幸せだった。
でも夢の中のオレはひとりぼっち。しかたがない、とにかく街を歩いてみる。
すると、突如として禍々しい粗末な建物が見つかった。よく見てみると、いくつかの建物がつながっていて、入口だった場所が板でふさがれている。高い塀で敷地内がみづらい。だが、暖かい色の光が外に漏れている。
塀伝いに歩いていくと、見つけた。入口だ。中をのぞくと冒険者が何やらカウンタの男と話をしているようだ。冒険者の隣には小型のドラゴン。
「へぇ。これがドラゴンの涙。」
「はい。ここまできれいなのは珍しいですね。当方ではこれを加工してギルドに売却しております。なので、査定額にその金額を追加いたしましょう。」
冒険者はうれしそうな声をあげる。
「こんなに出してくれるか。」
「はい、もちろんです。」
冒険者は大金を受け取ると嬉しそうに店を後にした。
「おい」
オレが声をかけても冒険者は立ち止まることはなかった。それで、ギルドの男はあのドラゴンをどうする気だろうか。
「さあ、もう楽にしていいよ。」
聞き覚えるのある優しい声がした。
「まずは…ひどい目にあったね。ここまで油が付着しているところを見ると、洗ってもらっていなかったでしょ。」
すると、ドラゴンが答えた。
「そうなんだ。ひどいよぉ。」
しゃべった。ドラゴンが人間の言葉をしゃべったぞ。だが、男は驚く様子なし
「じゃあ、お風呂、はいろっ。ねぇ、ケルヴ」
ケルヴだと。ケルヴは確かスノウのドラゴンでも古株のドラゴンだ。どうなっているのかもっと覗き込んだ時、男はフードをとっていた。
「スノウ!」
スノウはカウンタテーブルの下に隠されていたであろう小瓶をグイッと飲み干した。
「ヴアァ…まっずい…」
スノウはすごい顔をしたあと店の奥へ消えた




