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5. バードのパーティは解散しました

<< バード視点 >>


-数日前


自分のパーティからスノウがいなくなったのを知ったのは、スノウが姿を消した日の朝だった。

オレが仲間に聞くと、スノウは力不足を感じて脱退、今までの迷惑の埋め合わせとしてファーストをおいていった、という。

オレはこらえきれないスノウへの怒りを爆発させるが、同時にすさまじい喪失感に襲われていた。怒りと喪失感がどうして同時にわいたのか、わからない。

だか、オレにゆっくりと考える時間はなかった。旅は大聖堂から命令されたもの。中断はできないし中止もできない。仲間たちの士気は十分だし、こんな私的なことで寄り道はできない。

オレはよくわからない、整理ができない感情を抱えたまま、旅を継続した。


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大きな街についたところで、休養日を設けることになった。


オレはふと目でスノウを探してしまったことを笑った。休養日はいつもオレはスノウを連れ出して、二人でスノウの行きたいところへ行っていた。


仕方なくオレは一人でマーケットへ行くことにした。魔タバコをくわえてふと隣をみた。いつもならここにスノウがいて火を分けてくれる。でも、今はいない。

仕方なく自分で火をつけて、魔タバコを吸いながら徘徊する。

「そういえば、歩きたばこをしていたら…」

それを注意してくれるスノウがいない。せっかくの休養日が喪失感の肥大につながってしまっていた。と、ふと目をやった露店でドラゴンの卵が売られていた。

オレは外れてもいいと思い、卵を一つ購入。したところでどうにもならないが、なぜかどうしても欲しくて買ってしまった。ふとおもった。スノウは見事にあたりを引き当てた。あいつはどうやって引き当てたのだろうか。


部屋に戻ったオレは、卵を抱きながら、ぼおっとしていた。

「あいつら、ダメだ。オレがどんな思いをスノウに持っていたのかわかってねぇ。何がスノウが勝手に出て言っただよ。んなわけねぇだけ。ふさげんじゃねぇ」

ふとオレは仲間たちとどうであったのかを思い出した。そこで気が付いた。あいつらを推薦したのはスノウだ。あいつが全部オレに紹介したんだヤツだ。オレは…スノウがいいならという理由で加入を認めていた。

「スノウの目は節穴じゃないか。あんな奴のいうことを信じたオレがバカじゃないか」

そうつぶやいたあと「ろくでもないやつだ」といいかけたとき、オレはとてもない不自然さに気が付いた。

「おい、まて。どうして独りぼっちだったスノウがあれだけの仲間をオレに紹介できた?ちがう。あいつは利用されたんじゃないか。紹介しろといわれてそうしただけ。あとはオレが判断してくれると思ったんじゃないか。あいつ、なんでそれを言わなかった」

そう思った瞬間、もう一度オレは「スノウはろくでもなし」と呟いてみる。すると、オレの中にとてつもない別の怒りがわいてきた。

「あいつら、オレとスノウの仲良しぶりを見て、オレは難しくてもスノウを落とせば簡単に加入できると思ったんじゃないか。やっぱりスノウはもしかしたら脅されて!」

オレの頭にそのときのスノウの顔がフラッシュバックした。

「スノウは脅されたんだ。じゃあ、やっぱりあいつらはスノウを追い出しやがったんだ。ファーストはおいていったんじゃない、奪われたんだ。だとしたら…」


ここ数日のことを振り返る。不思議なくらい旅は以前と変わりなくすすめられた。オレのやる気のなさをガッツはしっかりと埋めてくれた。

でもまて。本当は埋めてくれたのではなくて、ガッツが埋めたのではないか。


確かに見かけ上はスノウがいなくても回っていた。だが、以前であれば地元の庶民派貴族となぜかコネができていて、交渉はスムーズ、結構な協力が得られたのだ。スノウが抜けた後からはサイモンが担っていたが、あいつはちゃんと交渉できていているのだろうか。とてもそうとは思えない。

そういえばパーティがここまで強引な進め方をして、オレがここまでつかれるようになった原因はなんだろう。以前であれば、スノウのペースにあわせていた。だからこそ、旅はゆっくりめだった。おかげでオレも心の余裕があって、スノウに甘えられた。いや、あいつらだってスノウに甘えていたじゃないか。キッドも、ホーリーも、みんなスノウがいたから楽しかったはずだ。そういえばあいつら、急に黙り始めているな。そういえばザードも最近我関せずだ。

ということは、このパーティはスノウを今でも拠り所にしているやつらとスノウを拠り所としてみていないやつらが混在している。いずれスノウを拠り所としてみていないやつらがこのパーティを仕切っていくだろう。もう近いうちに、オレのいうことなど聞かなくなる。ガッツがこのパーティを仕切っていく。

いや、もう支配されているんじゃないか。ろくでもないのはどっちだ?


オレはこのことをザードに相談した。

「なるほど。だが、大聖堂の司祭にはどう説明する。」

「くれてやればいいじゃん。あいつら、最初から勇者のパーティーにいることが目的だ。もしかすると、あいつらの目的は自分が勇者になって認められること。それだけかもな」

「…なんてこった。スノウの野郎もグルだったってことか。ろくでもないやつだな。」

「いや、どうなぁ」

オレはふうと大きく溜息をついた。

「もういいや、捨てちまおう。スノウならそれくらいはする。」

「大丈夫か。そうか。ここまでしたのはスノウか。だった司祭に報告して、」

「スノウは関係ねぇよ。」

ザードはオレが変な卵を抱えていることに気が付いた。

「おい。こんなもん、どこで手に入れた?」

ザードが卵を取り上げ鑑定して叫んだ

「おい、これは幻覚の卵石だ。しっかりしろ。」

ザードが解呪の魔法をかける。

「ちっ。目がまだうつろか。仕方ねぇ。」

ザードがおもいっきりオレを殴ろうとしたから、オレはパンチをしっかり受け止めた。

「オレは正気だよ。ザード、調べてくれるか。ファーストが従順なのはどうしてだ」


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冒険者ギルドにオレが報告を終え、次のクエストを考えて指定依頼バインダをパラパラとめくっていると、ザードが横に来た。

「ファーストだけど、お前の予想通りだ。」

「やっぱりか」

「別のパーティのとこにいた、オドオドしていた一番気弱そうな召喚士を恐喝して聞いてみた。召喚士用のアイテムに「従順のアイテム」があるってわかった。で、今日、戦闘中によくみてみたら、ファーストの首に「従順の首輪」があったよ。これがあれば、首輪の持ち主のいうことは何でも聞く。召喚士の間では有名らしいが、ろくな代物じゃないってさ。」

「やっぱりか」

「だが、スノウはなんで気が付かなかったんだろうか、召喚士なら誰でも知っているらしいぞ。」

「しらないとおもうぜ。無理だよ。」

オレが力強くこたえる。

「あいつの召喚獣との契約はそういう道具を使わない。おもいだしてみろ。あいつのドラゴンはどれも首輪なし。家族のような関係だった。」

「それだけじゃあな。じゃあ、あんな仲間を紹介したことはどう説明する?」

「ファーストさ。」

オレはマーケットの様子を見ながらいう。

「あの卵はな。スノウがほしいって言ったから買ったのさ。」

「何が言いたい?」

「あいつはニセモノだらけの竜の卵からホンモノを引き当てた。どうやったと思う。」

「鑑定」

「いいや。あいつは卵をただ見ていただけだ。それに鑑定しても、オレみたいに大ハズレを引く可能性は高い。だが、スノウはただほしそうに食い入るようにみて、オレが「どれがいい」と聞いてから、迷わずあれを選んだ。」

オレが口を緩めて断言した。

「呼ばれたんだよ。あいつはいろんなものに好かれる傾向がある。考えれば、あいつは見た目はああだけど、あいつを見たやつはあいつに引き寄せられるんだ。」

「…まさか、ゆく先々でアタリの有力貴族に会えたのはそのせいか。」

「あいつは悪い虫に絡まれたんだ。本来はオレが振り払うべきだったんだよ。スノウに実際はどうだって確認するべきだっんだよ。」

「証拠は?」

オレはザードの肩をつかんでいった

「ザード、協力してくれ。あいつらの化けの皮をはがす」


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「さあ、明日からまた頑張ろうぜ!」

サブリーダを自称しているガッツが宴会の途中で声をあげた。

「おう! 魔王の部下を倒して、この街に平和をもたらそうぜ」

サイモンがそれに呼応する。

「だいじょうぶだよ。ファーストがいるし、絶対成功だ。たのしみだなぁー!」

キッドが嬉しそうに呼応する。


ガッツがオレをみてきた。

「どうしたんだよ。お前が盛り上げてくれないと」

そんな気もねぇだろ。そうおもったオレはずっと机に寄りかかってビールを飲んでいたが、イスの背もたれにもたれ、静かに、でも聞こえるように、独り言を言い放った。

「やってらんねぇ、あほくさ」

ザードがいつも通りの態度をしながら、全員の反応をみてくれていた。キッドは「えっ」という反応をした、ホーリーはギロッとオレをにらんだ。だが、この二人以外は無視してまだメンバーを鼓舞しようとしている。

「ここはサブリーダーが盛り上げてくれよ」

「おう。そうだな。サブリーターであるオレ様についてこい!」

「わーい」

張り切ってんのはお前らだけだぞと絶望しているオレに、ザードがオレに目くばせしてそれを教えてくれた。オレは天井を向いているが、合図は見えている。オレは「わかった」という合図を送った。


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深夜。

「確定だな。このパーティーは終わった。」

もうこれ以上続けても、なにもないだろう。

「ザード、俺は消えるよ。」

「いいんじゃねぇか。俺も消えるよ。後で合流しよう。」

オレたちが部屋を出ようとすると、部屋の出入口に誰かが立っていた。

「これをファーストに。」

ホーリーだった。何かを手に持っている。

「呪いへの護符か」

「ええ。首輪の力はこれで弱くなるとおもいます」

受け取った護符はホーリーがなり前から懸命につくったことがわかった。びっくりするくらいの呪文が書かれていた。

「無効にするとか、外すとかできないのか。」

「無茶を言わないでください。スノウがいないなか、」

「じゃあ、スノウなら外れるんだな。」

「はい。あの首輪は召喚士の浄化で外すことが可能です。そう伝えてください。」


「"巣"に戻る…か」

「はい。ファーストもスノウに導かれてここにいます。彼らがどう縛ろうとファーストは必ずスノウの元に戻ります。」

「オレたちも、そうなるっぽいな。」

「ええ。私たちも願いましょう。スノウにまた会えることを。受け入れてもらえることを」

「おう。じゃあ、またな。」

オレは先に出発。サードはファーストの首輪に護符を結びつけ、遅れて出発した。


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こうして、勇者バードのパーティは事実上、解散した。このあと、パーティーはガッツのパーティになるだろう。がんばれ、ガッツ。


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