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3. ボクは悪人になれないみたい


気が付くと、ボクはソファの上に寝かされていた。ドラゴンたちが不安そうにこっちを覗き込んでいる。

「助かったのかな?」

そうつぶやくと、今度はホーリーが覗き込んできた。笑いに来たかな、それとも…

そう思っていたら突然胸倉をつかまれて、思いっきりグーで殴られた。ホーリーがここまでするのは初めてだった。いや、ここまで感情的なホーリーは初めて見たかも。肩で息をして興奮している。

「…このろくでなしが!」

もう一発グーが飛んできた。

「バカ!バカ!バカ!バカ!バカ!」

胸をガンガン叩かれた

「ご、ごめん」

「ごめんじゃねぇんだ、このバカ!」

笑うしかなかった。とても聖職者には見えないし、孤児院の先生にもみえなかった。


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「もう。魔欠症は命にかかわるの。こうなる前に相談してよ」

力なく笑った。その通りだ。でも、召喚獣たちにとって一番のごちそうは召喚士の魔力だ。

「死んだら何もならないんだよ。」

「…そっか…」

確かにそうだ。ボクが死んだら、みんな元の黙阿弥。

「でも、オレなんてこれくらいしかできなくてさ」

「かっこ、つけないでよ。いくら強がっても、スノウはしょうもないスノウなんだから」

「…ハハっ。そうだね。そうかも。」

「そういって、どうせ自分なんてろくでもないと思ったんでしょ。」

よく知っている。ほんと、こういうところは逆らえないな。

「でも、これ以外に思いつかなくてさ。」

「あんた一人苦しんでも、誰も幸せにならないんだよ!」

まぁ、そうだね。これは言いかえせないな。

「…やっぱり、無理があったかな」

「うん。無理。無茶苦茶。」

「そうだね。」

「でも、やろうとしていることは理解できる。だから。」

ホーリーはそういうと立ち上がって、大きな袋を持ってきた。

「手伝ってって言って。」

そうか。ホーリーならそう言う。もう素直に従っておこう。

「手伝ってください。」

「いいよ。じゃあ、寝てていいから話進めていい?」


ホーリーが持ってきた袋は、召喚獣用飼料と書いてあった。中身はないが。

ボクが家族だと意地を通したのでなかなか言えなかったそうだが、これを使えば、召喚士が直接召喚獣に魔力を与えるよりも効率的に魔力を与えられるという。

「でも、これを使うと召喚士から離れていくんじゃない?」

「大丈夫。 これがそうとも言えないのんだ。これみて」

指さされた所にはこう書かれていた。「必ず召喚士の魔力を注いで使用すること」「召喚士の魔力以外は反応しません」「魔力供給量を守ること」「魔力を注いだあとはすぐに使い切ること」

「これだけでも魔力はあたえることができる。でも、全然足らないの。召喚士がつかうと魔力が増大する仕掛け。だから召喚士が使わないといけないの。」

「召喚士の魔力を注いだものが売っていないの?」

「魔力の抜けが早くて。だから、召喚士がちょっと魔力をこめて召喚獣に与えるという使い方が想定かな。でも高くてね。」

「ふうん…」

これがあると少し楽になるかも知れない。

「ほしい?」

「ほしい。」

ホーリーは少しだけ笑って「素直でよろしい」とうなづいた。

「なら、先生と謎解きをしましょう。先生の謎に答えられたら中身が入ったものをあなたに差し上げます。」

ボクはいつからホーリーの孤児院の子どもたちになったんだ。こういう子ども扱いするところもかわらない。

「受けてたとう。」

反論するとめんどくさいし、従っておいた。

「よろしい。では問題。なぜこの召喚獣飼料は高いのでしょう。」

「いやがらせ」

「それ以外で答えてください。はい、は?」

「はい」

「では、答えがわかったらマジックリーフ・マジックナッツ・マジックフルーツの採取・運搬のクエストをスノウに指定で出していますので、それを受けたうえで孤児院にお越しください。ヒントほしい?」

「ヒントは?」

念のためもらっておこう。そう思って答えたらと、ホーリーに聞くとニコニコとして答えた。

「あなたのやっていること」


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翌日。いわれたクエストを受け取りにいった。指定された素材はポーションの材料だが、その量がえげつない。ポーションに使うんだろうが。とにかくこれも含めて謎解きなのだろう。


とりあえず指定された量を採取チーム総出でとって、運搬チームで孤児院を訪ねた。

「あ、ドラゴンさんだ!」「ドラゴンさんだ!」

幼い子どもたちとともに少し成長した子どもたちたちが出てきた。


最後にホーリーが出てきた。

「いつもありがとうございます。」

こどもたちはその間もリアカーの荷物をどんどんおろしていく。

「答えをいただきましょうか。」

これに関しては相当悩んだので、ドラゴンのみんなにも聞いてみた。いろいろな意見がでたが、そのなかでも満場で一致したのはこの答えだった。

「買占めて転売をしているひとがいる」

ホーリーはにっこり笑って答えた。

「その通りです。」

つまりボクの解体屋に対する当てつけか。そう思っているとホーリーの答えはちがった。

「スノウの転売屋はまだまっとうです。だって、素材を買って別のものにしてちゃんと加工して価値があるものして売っています。孤児院が作ったものも実は同じものです。冒険者さんたちが持ってきてくれたものを加工してポーションを作るんです。ところが、孤児院が作ったものを買い占めて、そのまま販売したり、場合によっては役に立たないものにして売る人がいるんです。」

「まさか。この量が必要なのは…」

「そうです。彼らから最近量産を求められていましてね。」

「まてよ。もしかしてドラゴンのごはんが高くなっているのって」

ホーリーは静かにうなずいた。

「そう。転売目的の買い占めです。もっといえばそのごはんに召喚士の魔力を注いだ劣悪な状態で販売している人もいるんです。あれは召喚士の魔力を注いで長時間おいてしまうと、劣化して意味がないものになってしまうです。」

そういうことだったのか。召喚士がいないところはつられてしまうかもしれない。

「もっと言えば、本当の魔タバコもです。その結果、マジックリーフにハーブを混ぜただけの粗悪品が庶民の間で流行したんです。あれは副作用が強すぎてお勧めできません。」

「ポーションが高いのもそのせいか」

「はい。ヒールポーションもマジックポーションも、全部です。特にひどいのは、濃度を薄めた粗悪品が出ています。薄めると中毒性が高く大変危険なのです。」

「だれがそんなことを」

ホーリーが目を細めた。

「一部の貴族や商人です。彼らは私たちみたいな存在をよく思わず、搾取してもいいと思っています。金はやっているんだから従え。そんな感じです。」

ホーリーをみると、目が悲しい目をしていた。ハッとした。確か、ボクを追い出したとき、ホーリーはこの目をしていた。あの時は冷たい目だとおもった。でも、真実は違ったんだ。

「スノウさん。あなたは私たちの希望なんです。搾取されるしかないひとたちの世界を変えてくれる光なんです。いままで冷たいことをしたことは謝ります。」

「謝られても、困ります。」

「許さなくてかまいません。でも、どうか、自分になんてと、自分にあきらめないでください。」


「おにいさん。ドラゴンにさわってもいい。」

目を輝かしたこどもがボクに聞いてきた。本人にいいか聞くと一回渋ったがOKしてくれた。

「こどもたちは本当に純粋ですね。私たちもそんな仲でいたかった。」

ホーリーはどこまで本心なののかわからない。だけど、多分心配はしてくれていると思っていいと思った。

「重ねてお願いです。無理をしないでください。」

「…うん。」

ボクは考えを改めることにした。ホーリーはろくでなしなんかじゃない。本当はとってもやさしい人かもしれない。


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孤児院に配達に行くたびに、ホーリーはドラゴンのごはんのほかにも、ポーションやタバコを少量ながら分けてくれるようになった。もちろん、こっそり。

おかげでボクが精神が安定。おかげでドラゴンたちも落ち着くようなになった。


そろそろ次の段階だ。みんなを集めて、これからの方針転換を宣言する。

「これからみんなが作ってくれたお金を使ってみんなの仲間を救っていく。もしかすると、最初のうちはげんなりすることがあるかも知れない。でも、ついてきてくれる?」

ドラゴンたちは一瞬戸惑った様子だったが、グランツがみんなをまとめてくれた。

「みんな、我々はいままでさんざん冒険者に詐取され、苦しめられ、捨てられてきた。いまこそやつらを見返してやる時だ。同じ苦しみをもつ同胞を少しでも救おう。スノウのやり方は冷酷に見えるかも知れない。だが、その芯は少しでも多くの同胞たちを救うことだ。みんな、協力しようじゃないか」

ドラゴンたちがわきあがった。

「グランツ、ありがとう。みんな、よろしくお願いします!」

ふと、バードを思い出した。バードもよくこうやってみんなを鼓舞していた。ボクとのベタベタした関係さえ見せなればもっと自由でいられたかも。


「あなたの大切にしているドラゴン、売ってくれませんか?」とギルドに広告。予想通り、やはりドラゴンの処分に困った冒険者が処分費用を取られるのではなくお金になるとウヨウヨやってきた。

買取時は、ドラゴン本体だけでなく、皮膚に付着した古い油脂やはがれかけた鱗や爪はすべて素材としてカウントして査定。ドラゴン本体額がわからないのでややぽったくられている感はあったものの、処分に困っていた冒険者はお金を渡すと、これで新しいドラゴンの購入費用にできる、と早々に取引を完了して、後のことはしらんぷりだ。最近は農場系経営者が買い替えとか言って持ってくるし。ほんと、世の中、ろんなもんじゃない。

でも、これでいい。こっちはそれを見届けた後で本人と面談し、希望を聞いたうえで適性を見極め、チームへ配属した。新しい仲間として働いてもらう。


最近はレンタルと称したクエストも名指しでいただいている。おかげで最近は農作業チームも元気。

ホーリーも教会の仕事のヘルプと称してクエストを名指し指定してくれて、実際はけがをしているドラゴンたちの治療をしてくれている。



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