9. 仮面のプロフェッショナル
2日後。いつもの酒場で昼ごはんをとっていると、また黒いローブの男がきた。熱心だよねぇ、ほんと。飯食ているってのに。
「ご興味をもっていただけませんか。」
「ないですね。」
今度は人を変えて、内容は交渉で、アタックしてきた。
たしかに声は聞いたことがない。ただし、魔法で声を変えている気はするんだよね。
というかさ、やろうとおもえば幻術で姿も変えられるんだから、それを使いなよ。
この意図的な中途半端はやめてほしい。
プロならプロとしての意識を持ってほしいよね。
「ボクはそういうプロ意識の低い魔導士があまり好きではないので」
「…完璧主義…私の友人もそうでした。」
席を立ったが、男はずっと座ったままだった。まいったねぇ。じゃあ、条件出しますか。
「ボスに伝えてください。もし、どうしてもというなら、教会で会いましょう。
ホーリー様の立ち合いであれば私もなくはないと」
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「という約束を私の事前承諾なくやったと」
「うん。ごめん」
「まぁ、わかりはしますが。」
礼拝堂でホーリーと話をすることにした。万が一来てしまう可能性があるからだ。
「まぁでも、ホーリーにあえて喜ぶと思うよ。」
「確証がないのによく他人に紹介を」
「まぁ、間違いなく、90%本人と思っていいよ。」
「せめて一筆書いてきてもらってください。」
「あ、そうか。その手があったのか。」
ホーリーが溜息をついた。えっ、そんなにいや?
「正直、気乗りしないんですよね。」
わおっ。直球
「そう? なんだかんだでさ」
「うーん。もうこの際いってしまいますが…興味ないです」
「わおう」
あーれま。そこまでいく?
「でも、ちょっとくらいあるでしょ?」
「全くないです」
また直球! すごいねぇ…
そういえばいつもこうだったわ
「なんか役割やっているなという感じで、無味無臭なんですよ。」
「あー、わかる気がする。」
「でしょ?」
「うん」
「あ、そういえば。」
スノウが何を考えるようにいった
「例のリッジの偽造サインですけど、あれもそんな気がします。」
「え?」
「スノウはサインあてゲームしたのを覚えていますよね」
「うん。確かガッツとバードで方針めぐって喧嘩したんだよね。すごかったねぇ」
「ええ。」
「だから、ホーリーがサインあてゲームを提案した。ボクのサインをあてるやつ」
「そうです。」
懐かしい…あの頃はみんな仲良しだったのに。
「で、そのゲームで誰のサインが使われましたか?」
「ああ、ボクのサインを、ボクとキッドとザードとリッジで書いた」
「そうです。」
「で、ガッツがリッジの書いたやつをとり、バードがボクだった。」
「神がかっていました。あの時ばかりだけは」
…きっつ…認めてあげようよ…
「で、問題はそのリッジサイン。かなり完璧だった気がするんです。」
「どういうこと」
「おかしいとおもいませんか。リッジは完璧にスノウのサインを真似した。バードのサインだってやろうと思えば80%一致する物が作れたはず。」
「そういわれて見るとそうだね」
「あんな0%、まったく似ていないものを書くなんて。」
ま、考えても仕方がない
「とりあえず、あってみない? もしかすると会ったことで心変わりして」
「ないです」
すごいねぇ…。こういうところは好きだよ
「じゃあ、ザードは」
「絶対いやです」
うん。徹底している。好き。
「というか、なぜにそんなに一生懸命なんです、スノウは」
「だってボクもバードとは役割以上の付き合いないし」
「意外とあなたたちって稀薄ですよね。」
「うん。だって、こい、以上、終了、みたいな」
「どうやってあれだけの人数をまとめ上げてきたんですか?」
しらんよ。バードの威光じゃないの?
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<< バード視点 >>
「なんでぇ~」
「相当嫌われているな」
バードが交渉してもザードが交渉してもスノウ一切応じる気なし。一生懸命自分たちだってわかるようにしているのに、完全に無視してくる。
「そもそもさ、どうやって勧誘したの?」
ザードにそういわれてよくよく思い出す。
そういえば酒場で、オレが見つけたんだ。アカデミーで聞いて、ドラゴンという実体種を扱う珍しいのがいると聞いて、
「あぁ、強引に引っ張った。」
「じゃあ、意思がないじゃん」
そう。オレが強引につなぎ止めたんだ。じゃあ、ずっとスノウは我慢をして…。
「よく考えると、オレもあんまり接点はなかったな。でもさ。オレ、なんでダメだったか、わかってきた気がする。あいつもプロフェッショナルだしな。」
ザードはそういうと立ち上がった。
「どこいくだよ?」
「プロにはプロにしか変わんない聖域があるのさ」
「おい、まってくれよ
「じゃあな」
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また黒いローブの男がきた。ただし、今回は様子がまったく違う。
「というわけで、ぜひともあなたとしっかりとお話がしたいんです。」
声も違う。雰囲気も全然違う。仮面はしっかりつけてあって深淵幻影してる。
「そしたら、その仮面下見せてくれるんですね。」
「ええ。」
なんだか好奇心がわいてきた。相手が誰であれ、プロはこうでないとね。
-翌日
ギルドの闘技場で決闘になった。といっても普通の決闘ではない。マスクの男の素顔を割る。時間制限はいつものランクアップと同じ。
相手はいっさい攻撃しないことを宣言。仮面をはがし、正体をさらしてみよという。
ボクは捕獲を得意としたドラゴン4頭を用意した。ボクからは、仮面を割ることができなかった場合は、その男のランクアップの推薦を許諾した。
「攻撃しないって本気で言ってるのか?」
「仮面割り勝負だってよ。変わってんなぁ」
「いや、相手スノウだぞ? しかもドラゴンたちは精鋭ぞろい。攻撃しないで勝つ方法なんてあるのかよ」
スノウは深く息を吸い、いつもの軽口を封じて、ただ静かに相手を見つめる。
「……技術勝負なら負ける気がしない。大体相手は予想つくげど、こんな面白いことないじゃん」
その目は、普段の飄々としたスノウではなく“学院まで行ったプロ”の目だった。
相手は攻撃の構えもない。魔力の気配もない。静かに呼吸しているだけ。
(このストイックさ。いいねぇ。魔導士としてしびれるよ)
「はじめ!」
スノウのドラゴンたちが一斉に男に襲い掛かる。だが男はドラゴンの攻撃を見切ってすべてよける
「すげえ、やるじゃん」
早いなんてもんじゃない。俊敏の魔法を使っているのか。あれだけの変装して持ちこたえるとは。
それじゃあ、こっちも魔法攻撃してましょうか。当然本場の魔導士に比べればひよっこだが、ないことはないからね。
「束縛」で男の動きを止める。なんとヒット。チャンス到来
「いけ、みんな!」
ところが男が一瞬ニヤッとしたのが分かった。男は束縛をすぐさま破って寸前でドラゴンの攻撃をよけた。
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数分立ったところでお互いに息が上がる。
この戦いは長引けば長引くほど、どんどん魔力が不足していく。
男は変装の魔法をフルで使うからただでさえ魔力の消費が早い。
こっちもドラゴンが稼働する分吸ってくるのに自分の攻撃魔法分もあるので結構つらい。
「はぁ、はぁ」「はぁ、はぁ」
男が懐からマジックポーションを出した。チャンス! 強奪ならグルゥが得意だ。ボクもマジックポーションを一気飲み。ホーリーお得意の濃厚マジックポーションオレンジ味だ。
「うぇー」「ぐえぇ!」
ボクのほうがダメージが小さい。男が苦しんでいるうちにグルゥがとびかかりポーションを奪った。3頭も自発的に行動して、仮面に手が届いた。ボクも追加で襲い掛かる。
「ぬわぁー!」
男の魔力切れが発生してどんどん正体がばれていく。雰囲気が変わり、声もだんだん変わってきた
「あれ、バードじゃないぞ」
俊敏さからいってバードと思っていた。どうも違う。本物の魔導士ということか。
「どげぇ!」
聞き覚えのある声。まさか! 仮面に手が届いた。
パリンッ!
ザードだった。だがザードはそのまま卒倒するように後ろに倒れた。
「勝負あり」
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「ザ、ザード…」
覗き込むボクをみてザードは大笑い。
「ウヒヒヒッ、ハハハハッ。どうやら、魔力総量底上げた挙句、いろんなもん、めいいっぱい改善したんだな。ハハハハッ。やっぱりおまえの頭の良さにはかなわないぜ」
「よくいうよ。ボクが魔力切れになりやすい特徴、わざと使って。」
「面白すぎ。これで戦うってどうかしてるぜ。」
「ザードも考えすぎ!アハハハハッ」
思い出した。そうだ。ザードとは本当にこうやって遊んだ。戦っている思い出よりもこっちのほうが大きい。
「それに人選も最高だった。グルゥ。スラムで拾ったスリしていたやつ。笑った」




