第45話 あなたの隣で
正式発表の日は、よく晴れていた。
王城の大広間ではなく、第二王子の館での発表。
それが、象徴だった。
ここから始まった関係を、
ここで形にする。
招かれたのは、必要最小限の貴族と高官のみ。
ざわめきは小さく、だが確実に熱を帯びている。
第二王子殿下、婚約発表。
相手は――かつて断罪された悪役令嬢。
それがどれほどの逆転か、
この場にいる者たちは理解している。
*
アレクシスが前に立つ。
言葉は簡潔だった。
「私の婚約者として、
レティシア・フォン・アルヴァレスを正式に迎える」
余計な説明はない。
擁護も、過去の弁明もない。
堂々と、事実だけ。
視線が集まる。
レティシアは、一歩前に出た。
逃げない。
俯かない。
王城で断罪されたあの日とは、まるで違う。
「未熟ではありますが」
静かに、しかしはっきりと。
「殿下の隣に立つ者として、
責務を果たします」
それは、従属の誓いではない。
対等な宣言。
*
ざわめきは、すぐに静まった。
反対の声は出ない。
出せない。
なぜなら。
彼女はすでに、
第二王子の政策の中核に立ち、
結果を出し続けている。
能力は証明済み。
人格も。
あとは、形式だけだった。
*
発表が終わり、
人々が散っていく。
中庭に出たとき、
ふと足が止まる。
「……終わりましたね」
「始まりだ」
アレクシスが言う。
確かに。
逆転劇は終わった。
だが、ここからは共に立つ未来。
「後悔は」
「ありません」
迷いなく。
「あなたの隣で」
レティシアは、ゆっくりと彼を見上げる。
「私は、私でいられます」
それが、何よりの答えだった。
アレクシスは、わずかに目を細める。
そして。
今度は迷わず、彼女を引き寄せた。
強くはない。
だが、確かな抱擁。
頬が触れる距離。
息が混ざる。
「これからも」
低い声。
「私の隣に立て」
「はい」
それは命令ではない。
選び続けるという約束。
そして。
ほんのわずかに唇が触れた。
情熱的ではない。
だが、確信の口づけ。
断罪された悪役令嬢は、
溺愛される婚約者へと変わった。
守られるだけではない。
並び立つ者として。
逆転は完成した。
けれど。
これは終わりではない。
二人で立つ物語が、
今、ようやく始まる。
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