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紫水晶と星の花  作者: 星見七つ
第二章

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嵐の前



 宰相閣下とお会いした日から暫くは、王宮で馬車を降りる度に警戒していたのだけれど…今のところ、あの日以来宰相閣下を目にすることはなかった。


 お父様以上にお忙しい方だし、よく考えればそうそうばったりお会いすることなんかないよね。


 そんなこんなで順風満帆とは行かないものの、穏やかな日々が過ぎていく。


 学園でも適度にリフレッシュする時間と場所が得られたことが大きく、ご令嬢達に囲まれて過ごすのも大分慣れてきたところだ。


「フィリリア様、実習おつかれさまでした!隣の演習場から見てもフィリリア様が魔法をお使いになるお姿…!今日もとっても素敵でした!」


「ありがとう。ミリーさんも実習おつかれさま」


「はいぃ!」


 毎日元気いっぱいのミリーさんは魔法実習の授業が被る度に褒めてくださる。

授業に集中した方が…と思わなくもないけれど、何か彼女の参考になることがあるなら嬉しい。


「エイラさん、元気が無いようだけど大丈夫?」


 周りに集まっているご令嬢の1人の顔色が何となく悪く見えたので、見かねてお声を掛ける。


「い、いえ、大丈夫です。その最近疲れが取れなくて…それで」


「分かるー。魔法実習が続くとちょっとしんどいよね」


「わたしも少し…」


 エイラさんの言葉に周りのご令嬢達の数人から同意する声が上がる。

こう言ってはなんだが、どの方も爵位があまり高く無い方達ばかりだ。

魔力実習も増えてきて、魔力量が少なめの彼女達は魔力の回復が間に合っていないのかもしれない。


「皆さん頑張っておられるのに、すみません」


 そう言って、エイラさんが申し訳無さそうにされる。


 彼女はとても優秀で男爵家の出身ながら私の一つ下のクラスに在籍している。

その為、魔法実習も多いのだろう。


「いえ、頑張っていらっしゃるのはエイラさんも同じですわ。今日は無理せずゆっくり寝て、少しでも疲れを落としてくださいね」


「フィリリア様…ありがとうございます!」


 この状況にも慣れ、気持ちに余裕ができたからか今ではこうして自分から彼女達に声を掛けることも少し増えた。


 とは言え、学院生活に慣れるのもそのはず。

学院は後1ヶ月半程で年度末の長めのお休みに入る。

早くも1年生の期間が終わろうとしていた。




「そうだ、これ」


 森での授業を終えた後、そう言ってユーリス先生が私達に差し出したのは1枚の紙と小さなサイコロだ。


「これは?」


 アシュレイ殿下が不思議そうに見つめている。


「サイコロ…?」


「フィリリアは知ってるんだ」


「はい、学院の…クラスメイトが珍しいものだと見せてくださったので」


 サイコロとは遠い異国で流行っている遊びに使う物らしい。

交易が盛んな港町を領地に持つ家のご令嬢が学院に持ってきていたのを見せていただいたことがある。


「異国の…ルーレットみたいなものですよね?」


「そうだね。見た目を知っていたらルーレットより簡単に作れる」


 確かにルーレットより単純な作りだけど…と言うことは、このサイコロは先生が作ったのかな?


先生はあまり細かいことに頓着しないけれど、実はかなり器用で繊細な作業も得意みたいだ。


「2人の自習課題だよ。私がちょっとの間、任務で来れなくなるからその間の」


「えっ」


「そうなんですね…」


 サイコロを珍しそうに見ていたアシュレイ殿下が驚きの声を上げる。

私も先生が来れないと聞いて少ししょんぼりしてしまう。


でも、任務はお仕事だし仕方ないよね。


「2人ともごめんね。私が居ない間は、サイコロを振って出た目の数字が振ってある課題をしておいてね」


「はい」


「分かりました」


 先生から紙とサイコロを受け取って、ちょっと元気のない声で私とアシュレイ殿下が返事をする。


「そうだ。あと近々…たぶん私が居ない間に、聖女が王都に来ることになると思う」


 聖女様が…。

ようやく見つかったんだ!


「魔瘴石の浄化に乗り気かどうか分からないし、こちらでの生活は不慣れなことが多いと思う。2人にはできれば気にかけて、仲良くしてあげてほしい」


「はい!」


「もちろんです!」


 私に続きアシュレイ殿下も意気込んで返事をする。

我が国を魔物の脅威から救ってくださる聖女様をサポートするのは当然の務めだ。


 聖女様は魔瘴石を浄化できる唯一の大切な存在だ。恐らく王都に来られた後は王宮で暮らされることになるだろう。

私としても、できれば仲良くしたい。


「ありがとう。よろしくね」



 そう3人で会話を交わし、いつも通りヴィンデミアの邸まで送ってくださった先生と別れた時は…


あんな事があるとは思ってもみなかった。



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