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紫水晶と星の花  作者: 星見七つ
第二章

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入学祝い



「すみません、アシュレイ殿下。私の放課後に合わせていただくことになってしまって」


 いよいよ貴族学院の入学式を明日に控え、授業が終わり森から王宮に移動したところででアシュレイ殿下に声をかける。


 私が貴族学院へ入学となるのに合わせ、私とアシュレイ殿下の魔法の授業が学院終了後の少し遅い時間に変更される事になったのだ。


「お気になさらないでください。僕の方は順番が変わっただけですし。お昼をご一緒できなくなるのは残念ですが」


 アシュレイ殿下がそこで一旦、口ごもられる。


「前の授業が長引いて魔法の授業に遅れることはなくなると思います…」


 あぁ、アシュレイ殿下が遠い目をされている…。

今までは私と先生が迎えに行くことにより、王国史の講師の長話を終わらせることができていた。

今後それが無くなるとなると…これからもアシュレイ殿下のお昼休みがちゃんとあると良いのだけど。


「じゃあ、フィリリアさんも先生もまた明日!」


「はい、また明日」


「明日、時間間違えないようにね」


 そう言葉を交わし次の授業へ向かうアシュレイ殿下に別れを告げる。


「じゃあ次はフィリリアの家だ」


「はい、お願いします!」


いつも森での授業を終えた後は、次の授業が控えているアシュレイ殿下を王宮に送り、その後で先生がヴィンデミア公爵家の邸に送ってくださっている。


 私は王宮から馬車で帰っても良いのだけど…先生のご厚意で、森から直で送っていただいていた時と同様に引き続き転移魔法で邸までお送りいただいている。


 転移魔法の独特な浮遊感にも随分慣れて、今ではソワソワする感じも恐怖感も特に無くなった。


「あれ?」


「何か急用でも頼まれたのかな?」


 私の呟きにユーリス先生が続く。


 我が家の前に到着したところで、いつもと違う状況に気がついたからだ。

普段は扉の前で待っていてくれるロアナが見当たらない。


「そうかもしれません。私は大丈夫ですので、先生は…」


 気にせずお戻りください、と言おうとした時だった。


「そうだ。その前に、フィリリアにこれを」


 そう言って先生がローブから取り出したのは、リボンのかかった小箱だった。


「これは…」


「私からの入学祝いだよ」


 差し出された小箱をそっと受け取る。

まさか先生から入学祝いを頂けるなんで思ってもいなかった。


「あ、ありがとうございます!開けても良いですか?」


「うん。どうぞ」


 小箱を慎重に開けると、中には銀色のバレッタが入っていた。

細工の細かい蔦の透かし模様がとても美しい。


「わぁ!とっても綺麗です!」


「それなら制服にも合うだろうし、学院にも着けて行けるんじゃないかと思って」


 なるほど。学院の制服には銀のラインが入っているので、それに合わせられる物を選んでくださったようだ。


「ありがとうございます!毎日着けます!」


「そうしてくれると嬉しいな」


 家族以外の人に装飾品を頂くのは初めてだ!

以前先生からお土産に頂いた謎の仮面が装飾品の枠に入らなければだけど…。


 ロジェット殿下からは毎年の誕生日に贈り物を頂いているけれど、豪華なお花や有名店のお菓子である事が多い。

ロジェット殿下の趣味ではないし、多分だけど侍従の方が無難な物を選んでくださった結果なのではないかと思っている。


 ロアナが出てこないことを心配する先生を「すぐ邸の中に入るので大丈夫ですよ」と見送った後も、つい頂いたバレッタを眺めてしまう。


 なんだか心が浮き足立つのを感じる。


「お嬢様!魔術師団長様から何を頂いたんですか!?」


「ク、クラリア」


 突然の声に驚いて顔を上げると、すぐ近くに箱の中を覗き込むクラリアが居た。

普段はその賑やかさで邸の何処に居ても分かるくらいなのに…ぜ、全然気が付かなかった。


「はい!クラリア、お出迎えに上がりました!」


「ありがとう。でも、ロアナはどうしたの?」


 クラリアは最初の頃に比べると大分仕事にも慣れて頼りになるようになったけど、それでもロアナが出迎えに来ないのは珍しい。


「ロアナさんは明日の準備の最終確認をしていて手が離せないそうなので、代わりにアタシが参上いたしました!」


「そんなに準備することがあったかしら…?」


「明日はお嬢様を学園一の美少女に仕上げて見せるって意気込んでましたよ?」


 ロアナは一体何に対抗しているんだろう。

私としてはいつも通りで良いんだけどな…と思ったところでハッとする。


 そうだ、明日の準備にこの頂いたバレッタも追加してもらわなきゃ!

そう思い、クラリアと一緒にロアナの元へ急いだ。



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