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紫水晶と星の花  作者: 星見七つ
第二章

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お兄様は酔っ払い



 街のレストランでの夕食を終え、私達が領地の邸へ帰り着くと、同じタイミングでエントランスに続く階段からお兄様が降りて来る。


「ユーリス殿!本当にありがとうございました!お陰で祭りも大盛況で!」


 ユーリス先生の姿を見つけたお兄様が、勢いでハグでもしだしそうな程上機嫌に先生に近付いて行く。


「何事も無く終了して良かったですね」


 先生が突進して来るお兄様をサラリと避けて、和かに返答する。


「無事に終えられたのもユーリス殿のお陰です!!そうだ、この後別館の広間にて晩餐会を行うのですが、ユーリス殿もいかがでしょうか!?」


「いえ、私はアシュレイ殿下の護衛がありますので、今回はご遠慮させていだきます」


 なかなか大音量なお兄様のお誘いに、先生が落ち着いた声で丁重にお断りを入れる。

お祭りは終わったけれど、先生としては王宮に帰るまでが護衛なんだと思う。


「それは残念です。色々とご活躍されたお話を伺えればと思ったのてすが…!では、こちらを!!」


 そう言ったお兄様が、執事から受け取った年期の入ったワインの瓶を先生に差し出す。


「これは…」


「今回の御礼にと思いまして。当たり年と言われている572年ものの最高グレード、我が家の秘蔵の1瓶です!」


 先生が戸惑いをみせている間に、お兄様が手に持っていたワインを握らせている。


 今日のお兄様、先生にすごくグイグイ行くな…。


「いえ、結局のところ私は特に何もしておりませんし、そんな貴重な物をいただくわけには」


「ぜひお持ち帰りください!!あとこちらも!今年の物もかなり出来が良いと評判でして」


 すかさずお兄様が2本目のワインを先生の空いている方の手に押し付けるように握らせる。


「いやー!ユーリス殿が居てくださって本当に良かった!!」


 お兄様、両手の塞がった先生のお背中をバンバン叩くのはおやめください…。


「あ、ありがとうございます」


 今回は先生の方が押されている…。


 というかお兄様、最程から思っておりましたが既に大分酔っていらっしゃいませんか?


普段よりも更にテンションの高いお兄様を訝しげに見つめていると、ポンと肩に手を置かれる。


「フィリリア様、ご安心ください。エーリク様が来賓のご婦人方に失礼な発言をしそうになった時は…口にチーズでもねじ込んでおきます」


 手の主は、とても良い笑顔をされたお義姉様だった。


 お、お義姉様、もしかして物凄く頼りになるのでは…!?


「どうか兄を末長くよろしくお願い申し上げます」


「ふふ、承りました」


 私はそう言って深々と頭を下げると、お義姉様も同じように頭を下げてくれる。


 私、お義姉様とは仲良くやっていけそうだ!

あとはお兄様、お義姉様に愛想を尽かされないように全力で頑張ってください!


「ユ、ユーリス先生!フィリリアさん、僕らはそろそろ部屋に戻りましょうか」


 私とお義姉様が通じ合っている間に、どうやら先生からの「助けて!」という目線を察知したらしいアシュレイ殿下から声が掛かる。


「エーリク様、我々もそろそろ向かいませんと。来賓の方々がお待ちですよ」


 お義姉様も助け舟を出してくださるが、テンションが上がり切ったお兄様は止まらない。


「いや、まだユーリス殿にお礼を申し上げ…」


 お義姉様がお兄様の口を手で塞ぎ、抱えるようにお兄様の腰に手を回しホールドする。


「では皆様、私達は失礼させていただきますね。この後は、ごゆっくりお過ごしください。明日の朝はお見送りさせてくださいね」


 そう言って、お兄様を引きずりながら迎賓館へ向かうお義姉様を見送り…


「フィリリアさんの兄上は何というか…嵐のような方ですね」


「これ、本当に貰って良かったのかな…?どう思う?フィリリア」


 嵐の後のエントランスにはちょっと怯えたアシュレイ殿下と、珍しく困惑するユーリス先生、そして…


遠い目をする私が残されたのだった。



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