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紫水晶と星の花  作者: 星見七つ
第二章

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パン屋さんはレストラン?



「あれ、ここレストランもしているんですか?」


 パレードが通り過ぎた後、窓際の端に置いてあるメニューが目に付く。

手に取ったメニューをパラパラと捲っていると料理やお酒の名前が並んでいる。


「本当だ。これお料理の名前ですよね」


 アシュレイ殿下が私の手元にあるメニューをキラキラした目で見つめる。


 すると、隣の席でパレードを見物していたご夫婦が私達の方に目を向けた。


「日中は下のパン屋のお客様に飲食スペースとしてご使用いただいておりますが、パン屋が閉まった後の時間帯はレストランを経営しておりまして」


 そう説明してくれだのは旦那さんの方だ。

私達と同じお客さんかと思っていたら、お店の方だったんですね…!?


「そうですか…じゃあ、まだ食べられないんですね」


 アシュレイ殿下がそれを聞いて少し残念そうに呟くと、ご夫妻が互いに顔を見合わせる。


「本来はそうですが…今日は祭りで既に私どもが来ていますので、少し早いですがお出ししましょうか?」


「いいんですか?」


「はい。そろそろ開店準備に取り掛かろうと思っていたところでしたので」


 パッと元気になったアシュレイ殿下が確認すると、奥さんの方が少しおっとりした口調で快く了承してくれる。


「へぇ、じゃあ少し早いけど夕食はここでいただこうか。フィリリアもパンが気に入ったみたいだし」


「…!!」


 ば、ばれてた!

2階に上がる前に買った小さなパンでは少し物足りないなとは思っていました…!


「スープやシチューに合わせて、下で焼いたパンもお出ししていますよ」


 先生と私のやり取りに、旦那さんの方が補足してくれる。

そうか、お昼にお店を貸し出しているくらいだから…。


「だって、良かったね」


「はい!」


 暫くして、注文した料理達がテーブルに並ぶ。

料理を運んできてくれた奥さんに話を聞いたところ、下のパン屋は兄夫婦で上のレストランは弟夫婦で経営しているそうだ。


「一気に来ましたね!」


 奥さんが頭を下げて立ち去った後、料理が次々と並べられていくのをじっと見ていたアシュレイ殿下が声を上げる。


「サーバースプーンやトングがあるから、好きな順番で食べたい物を取り分けると良いよ」


「なるほど!」


 見慣れない形式で出された料理達をユーリス先生が解説をしてくれる。

アシュレイ殿下は庶民流のレストランに興味があったようで、とても楽しそうだ。


 かく言う私も大きなお皿から皆んなで分け合うというのは初めてなので、どれから食べようか目移りしてしまう。


 王宮やヴィンデミアの邸では前菜から順に1人一品づつ出てくる事が殆どなので、テーブルにずらっと並んだ大皿料理が目新しく映る。


 やっぱり最初はパンにつけて食べられるものから行こうかな…そう思い、シチューに似た見た目の煮込み料理をよそう。


「この牛の煮込みとっても美味しいです!」


 ワインを使って柔らかく煮込んでいるようで、口の中でお肉がほろほろと蕩ける。


「パンに付けても合うね」


「はい!」


 私と同じく牛の煮込みを食べていた先生が窓の外をチラリと見る。

気になって私も覗いてみるが、窓の外を歩く人々は未だ減る様子はない。


「そう言えば、お祭りって何時まで続くの?」


「お祭り自体は日暮れで終了の予定ですが、お店は開いているので殆どの人が夜明けまで飲み明かすそうです」


「あはは。やっぱりそうなるんだ」


 お兄様に聞いた話だけど、お祭り終了後は大人達が飲めや歌えの大騒ぎなのだそう。


「先生の言った通り、魔物は出ませんでしたね」


 ピザを咀嚼し終えたアシュレイ殿下も、窓の外を見ながら話に加わる。


「そうだね」


「本当に良かったです」


 そう安堵を口にしたのは、少しだけ頭に葡萄畑で見た魔物の姿がよぎったからだ。

お祭りの終わりを感じて、寂しくもホッとした気持ちになる。何事もないのが1番だ。


「今後はやっぱりああいったことが増えるのでしょうか?」


「魔瘴石を浄化するまでは増え続けると聞いているから、徐々にだけど増えはするだろうね」


 アシュレイ殿下の問かけに先生が答える。

やっぱりそうなんだ。今後増え続ければ領地や王都にも出るようになっちゃうのかな。


「魔瘴石の浄化は聖女様しかできないんですよね?」


「そうだね。正確には銀の魔力を持った人物だけど、過去の記録では女性が多いみたいで一般的には聖女と呼ばれているね」


「銀の魔力?」


 初めて聞く言葉に、思わず復唱してしまう。

私も今アシュレイ殿下がおっしゃったように浄化には聖女様が必要としか聞いていない。


銀の魔力を持つ人が聖女様…。



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