緊急会議②
そんな中、アシュレイ殿下がスッと挙手をして発言をされる。
「恐らくこの先、魔物が増え続ければ大掛かりな祭りは各所で開催し難くなるんじゃないか…と思います。魔瘴石が浄化できるまで国民には我慢を強いてしまう」
アシュレイ殿下が恐る恐るという様子で言葉を紡ぐ。
「僕としても…最終日まで開催して、今のうちに民には存分に楽しんでもらった方が良いのではないかと…そう思います」
「アシュレイ殿下…!」
すごい。思わず感嘆の声を上げる。
ちょっと自信無さげではあるけれど、この空気の中でもしっかりご自分の意見を言えている。
きっと、少しでもロジェット殿下に近付こうと努力されている成果だと思う。
「そうだね、それに今回は私がいる」
「へ?」
アシュレイ殿下に続いたユーリス先生の言葉に、お兄様の目が点になる。
「そうは言ってもご不安は残るでしょう。ご説明したように無いとは思いますが、万が一魔物が出たら私に任せていただいて構いません」
コートの内側に手を入れた先生が、紙とペンを取り出し「緊急」と大きく書いて伝達用の鳥にする。
「宛先を私にしましたので、放てばすぐに私の元へ届きます」
魔法がかかっても先生の手から離れない鳥を、先生は再びコートの内側から取り出した瓶の中に閉じ込めた。
「この瓶は魔法薬の効果を保持する為に使われている専用のものなので、大体1.2週間は魔法が持続します。我々が帰る明後日までと考えても十分持つかと」
そう言って先生は手紙の鳥が入った瓶をお兄様に渡す。
魔法薬用の保存瓶にそんな使い道あるんですね…!?
お、覚えておこう。今後何かに使えるかもしれない。
「お、お心遣いありがとうございます。承知いたしました。では、ユーリス殿のお胸を借りることにはなりますが…お言葉に甘えて、明日の最終日は開催とさせていただきます」
お兄様が恐縮した様子でそう宣言する。
まさかアシュレイ殿下の護衛として来られている先生に、これ以上ご助力いただけるとは思っていなかったのだろう。
先生の最後のひと押しが決め手になり、お祭り最終日は無事に開催される運びとなった。
「2人とも、良かったね」
先生が私とアシュレイ殿下を振り返り、先程までとは違う柔らかな笑顔で言った。
その様子に胸が暖かくなるのを感じる。
そうか…先生はお祭りを楽しみにしていた私達の為に開催しようって言ってくださっていたのだ。
魔物討伐中と会議モードの先生はちょっと怖かったけれど、どんな先生でも私達のことを大事にしてくれる大好きなユーリス先生であることに変わりはない。
「はい!」
「ありがとうございます!」
少しでも恐怖を抱いてしまった申し訳なさを、感謝の言葉に変えて先生にお伝えする。
「さて!」
お姉様が気分を切り替えるようにパンッと手を叩く。
「明日のことも決まりましたし、お夕食にいたしましょうか」
明るい表情でそう言われたお義姉様に促され、各々執務室から食堂へと向かう。
アシュレイ殿下と明日回りたいところを話しながら歩いていると、廊下の途中で先生が何かを思い出したようにこちらを振り返った。
「アシュレイとフィリリアは私がもし討伐に呼ばれたら一緒に来てもらうことになるけど良い?」
「「もちろんです!」」
私とアシュレイ殿下が元気よく答える。
魔物は思っていた以上に恐ろしいものだったけれど、先生が一緒なら大丈夫。
今日だって守ってくださったもの!
「よし、そうと決まれば明日に備えて今日は早く寝なきゃね。2人とも夜更かしはしないように」
私達の目を見てそう言った先生は、また前に向き直り歩き出す。
…明日のお祭りが楽しみ過ぎて、眠れなかったらどうしよう。




