目覚め part2
とても穏やかな夢を見た気がする。
優しくて、心地よくて、穏やかな夢。
ハッとして目を開けると、目の前には自室の天井、掛け布団から太陽の温かな匂いがするのは…昨日のうちにロアナが布団を干しておいてくれたのだろうか?
どうやら昨夜は寝落ちる前にベッドへ潜り込めたようだ。
まだ眠気の残る目を擦っているうちに、コンコンッと控えめに自室の扉が叩かれる。
「お嬢様、おはようございます」
「おはよう、ロアナ起きてるわ」
そう答えると、今日も髪をキッチリと結えた乳母のバーバラ…は居らず、侍女のロアナが1人で部屋に入ってくる。
「お嬢様、良く眠れましたか?」
「…?ええ、とても」
何故だろう、違和感がある。
そう、何か大変な事を忘れているような…。
「本日は昨日の夜に湯浴みをできておりませんので、少し早めに伺いました。バーバラさんがバスルームで準備してくださっているので、朝食の前にまずそちらから…お嬢様?」
ロアナの言葉を聞いた途端、私は思わずバッ!とベッドから半分起き上がり両手で顔を覆った。
まさか、まさかそんな…?
「お嬢様?どうされたんですか?もしかして、どこか具合がお悪いのですか?」
ロアナが心配して私の顔を覗き込んでいるようだが、内心パニック状態の私はそれどころではない。
「ロアナ、あのね…その、私、昨日はどうやって帰ってきたのかしら」
恐る恐る顔から両手を離し、ベッドサイドに立つロアナを見上げる。
「あぁ!そうそう、お嬢様の魔法の講師のアクベンス様が邸までお送りくださったんです。なんでも、魔法の授業で疲れて眠ってしまったそうで!あ、お着替えはもちろんアクベンス様がお帰りになった後で私どもが……お嬢様?」
パッと表情を輝かせたロアナが鼻歌でも歌い出しそうなくらい上機嫌な様子で回答してくれるが…。
私は愕然として、顔から離してそのままになっていた両手へとリターンする。
嘘、嘘でしょ!?
授業中に居眠りだなんて、今までそんな事一度もなかったのに!
その上、ユーリス先生に送っていただいてしまうなんて、今日の授業にどんな顔をして行ったらいいの…!?
「まだお若いのに、物腰柔らかですごく紳士な方ですよね。昨日も、疲れているだろうからこのまま寝かせてあげて欲しいって仰られて〜」
ロアナの声がまだ遠くでしている気がするが、内容がさっぱり頭に入ってこない。
どうしよう。初回の授業で寝てしまうなんて。
お父様にもしっかり学ぶようにと言われていたのに…そんな考えが頭の中をぐるぐると回る。
「その、気にしなくて良いですよ!アクベンス様もそう仰られてましたし!魔法を使い過ぎると眠くなるものですし!」
私が段々と涙目になってきたことに気付いたのか、ロアナが焦った様子で必死に慰めてくれる。
確かに、魔法を沢山使ったり魔力切れになったりすると眠くなると聞いたことはある。聞いた事はあるが、魔力を使い過ぎるもなにも…私、
昨日の魔法の授業、お茶会とお昼寝しかしていないわ…!???
気付いてしまった衝撃の事実に呆然とする私を「そろそろ準備しないと遅刻しちゃいますよー」と言いながらロアナがバスルームへ促す。
この日の朝はその後もロアナとバーバラのなすがままになりながら、ひたすらユーリス先生への謝罪の言葉を考えていたのだった。




