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紫水晶と星の花  作者: 星見七つ
第二章

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異変



 それからしばらく進んだ後、目的地に到着する。


馬車から降りると、一面に葡萄畑が広がっていた。

よく見ると既に収穫済みの畑と、まだ葡萄がなっている畑がある。


「葡萄だけじゃなくて家畜も飼っているんですね」


 そう言ったアシュレイ殿下の目線を追うと、葡萄畑の向こうに羊が草を食んでいるのが見えた。


「はい!主に雑草を除去してもらったり、堆肥の生成などの為に飼育されているようです」


「なるほど、葡萄の為に…」


 アシュレイ殿下に自信満々に説明した私だけど…事前に調べて知ってはいたものの、実は実際に見るのは初めてだったりする。


よく見ると、ところどころにモフモフが見える。


 かわいい!もうちょっと近くで見れないかな?

そう思い周囲に視線を巡らせる。


「あ、こっちにも羊が…」


遠目に羊の姿を見つけ、近付いた先で足が止まる。

目を向けた先に広がっていたのは



…信じられない光景だった。


 黒っぽい靄を纏った狼のようなものが集団で羊を襲っていた。

羊が動かなくなると食べる訳でも無く、興味を失ったように次の羊へとターゲットを変えていく。


「フィリリア様?」


 後ろからお義姉様の声が聞こえた気がする。

でも、まるで体が凍ったみたいに固まってそちらを向くことができない。


全身に悪寒が走る。


 あれ…何…?



「下がってください!」


 私の様子から異変に気が付いたらしいお義姉様が、剣の柄に手をかけながら叫ぶ。


「恐らくですが、噂に聞く魔物…ではないかと」


 お義姉様の囁く、低い声から緊張が伝わってくる。

私はその光景から目が離せないまま、ジリジリと後ろへ後退する。


 その間にも次々と羊が襲われていき、襲われた羊の1匹が狼のような魔物達と同じように黒い靄に巻かれ黒く染まる。


 え…? い、今生き返って…?


 羊だったもの(・・・・・)が奇妙な動きで立ち上がり、こちらをじっと見ていた。


「お2人とも、何かありましたか?」


 アシュレイ殿下がの足音が近付いて来ている。

ダメ、ここは危ない!そう伝えようにも、声が上手く出せない。


 手当たり次第に羊を刈り尽くした魔物が、無数の目をこちらに向ける。


「…ひっ」


 ダメだ。足に力、入らない。


 その瞬間、震えていた肩を暖かなものに包み込まれる。


「アシュレイ、ストップ」


 ユーリス先生の落ち着いた声で指示が飛ぶ。

アシュレイ殿下の足音がピタッと止まった。


「レイミア嬢、奴らが向かってきたら出来るだけ散らさないようにいなしてください」


 ユーリス先生!そう、言おうとした。


「ユ…」


 先生の声と温もりに少しホッとして、顔を向けた私は…再び言葉を失うことになる。


 魔物を見つめる先生の目は、何の感情も映さない空虚で冷たい色をしていた。

先生の温もりに包まれていたはずなのに、なぜだか酷く寒い。


 そのまま先生が何かを掴み上げる動作をしたかと思うと、こちらに向かって来ようとしていた魔物の群れが空中に吊し上げられるように踠きながら浮かんでいく。


私は、先生が手を開くと同時に魔物が次々と爆散していくのをただ茫然と眺めていた。


 そこにあったものが、何もなかったかのように消えていく…。


「大丈夫?怖い思いをさせていまったね」


 薄く霧となっていく残骸から視線を外し、私の顔を覗き込む濃い紫の瞳は…


もう、いつもの穏やかな光を映している。



「は、はい。大丈夫です」


 そう言った私の声は平常心を装いたい私の心と反し、とても掠れていた。


 初めて、ユーリス先生を恐ろしいと


…そう、思ってしまった。



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