いざ領地見学へ
「私がヴィンデミア家嫡男のエーリク。こちらが、この度婚約を結びました」
「フェイリース辺境伯家のレイミアと申します」
お義姉様がスッと素晴らしい体幹で安定感のあるカーテシーをされる。
横に並ぶとお兄様より少し低いくらいで、とてもスタイルが良い。
ちなみに初めてのお顔合わせの際、お兄様が
「レイミア殿はとても背が高いのですね!私と同じくらいでしょうか?」
と言ったそうだが…お義姉様は笑顔で受け流してくださったそうだ。
お母様が感激して咽び泣いていらっしゃった。
「ご婚約、おめでとうございます。王家を代表してお祝いを申し上げます」
「おめでとうございます。こちらは義父から、婚約祝いと聞いております」
「「…!??」」
アシュレイ殿下が祝いの言葉を、ユーリス先生が祝いの品を手渡す。
先生がコートの内側から、サラっと両手でしか持てなさそうな箱を出したのでお兄様とお義姉様は少々驚いているようだ。
「ローブに魔法をかけている訳ではない」と前におっしゃっていたけれど…コートでも可能らしい。
それにしても流石は宰相閣下、抜かりない。
「あ、ありがとうございます。さささ宰相閣下によろしくお伝えください」
「お荷物もおありでしょうから、まずはお部屋にご案内いたしますね」
宰相閣下からと聞いたお兄様がドギマギした様子で御礼を述べた後、気を利かせてくださったお義姉様と共に邸の侍女が部屋へと案内してくれる。
先程の一緒に驚いていた様子といい、二人とも息もピッタリで仲も良さそうだ。
お義姉様のキビキビした足取りを追いながら、ホッと胸を撫で下ろした。
「この後ですが、本日の祭りのメインイベントはワインのオークションですので…今の内に領内を見て回られるのはいかがでしょうか?」
一度それぞれの部屋を確認した後、再び集まった客間でお義姉様がご提案くださる。
お兄様は他の来賓方のご対応に行かれたようで、本日はこのままお義姉様がご案内してくださるそうだ。
オークションはとても活気があるそうなので興味が無いわけではないけれど…私達にお酒は買えないので、見ているだけではあまり面白くはないだろうとのご配慮だろう。
確か最終日はパレードがあると聞いているし、ここはお義姉様のご提案に乗らせていただこう。
「はい!私もそれが良いと思います。アシュレイ殿下はいかがですか?」
「僕、農地を実際に見た事無くて。見せていただけるなら是非お願いします」
「決まりだね」
アシュレイ殿下や先生も賛同してくださる。
「では、ヴィンデミア家が経営している葡萄畑へご案内いたしますね」
そう言ったお姉様が、私達がお茶をいただいている間に慣れたご様子で使用人達に指示を出していく。
相談の結果、せっかくなので景色を楽しみつつ馬車で向かうこととなった。
馬車に揺られていると広大な敷地に真っ直ぐ植えられた葡萄がストライプ状に見える。
「わぁ、一面葡萄畑ですね」
「ヴィンデミア領の水や気候は葡萄の生育に向いておりますし、ワインの産地として名が通っておりますので。領民も他の作物より葡萄を育てた方が稼げると考えるのだそうです」
窓の外を見ながら感嘆の声を上げるアシュレイ殿下に、お義姉様が解説をしてくださる。
すごい!私よりも余程ヴィンデミア領の人みたいだ。
「私も先日エーリク様に聞いたばかりの知識ですが」
私が感動のあまりじっと見つめていたせいか、お義姉様が少し照れたように補足される。
「いえ、素晴らしいと思います!」
ヴィンデミアの者に歩み寄ろうとしてくださる、そのお心が!
そうして私達が葡萄畑にはしゃいでいる間、静かに流れる風景を見つめていたユーリス先生がおもむろに口を開く。
「レイミア嬢は剣を嗜まれるのですね」
窓の外からお義姉様へ目をむけた先生がお義姉様の隣に立てかけられた剣を見つめている。
「あ、はい。その申し訳ありません、フェイリースでは常に帯剣しておりましたので。外に出る時はこれが無いと落ち着かず…」
お義姉様はそう言って剣の鞘を撫でる。
そうか、お義姉様は辺境伯家の方だから剣術も習っていらしたんだ。
私は剣術はさっぱりなので、なんだか憧れる。
「いえ、そうであれば心強いなと思ったまでです。お気になさらず」
そう言って微笑んだ先生は再び窓の外へ視線を向けた。
つられて窓の外を見ると、お義姉様がある建物を指差して教えてくれる。
「あ、あそこに立っているのがワインの醸造所だそうです」
「…!」
アシュレイ殿下は馬車に乗ってから、窓の外に釘付けでとても微笑ましい。




