ようこそヴィンデミア領へ!
「ようこそ!ヴィンデミア領へ!」
と言っても私も殆ど初めてのようなものなのだけど…。
私達は午後の授業の時間から移動して、我がヴィンデミア領の領主邸前に到着していた。
「一瞬でしたね。王都からはかなり離れているんでしたっけ」
「はい、道中に宿泊しながらだと馬車で大体4.5日は掛かると聞いています」
そう、この国は結構広いのでヴィンデミア領は王都から結構遠い。
お兄様が領地の視察で2週間も必要なのはその為だ。
だが、今回はユーリス先生の転移魔法で一瞬で着くことができた。
私だけだと半日程見て回ってそのまま蜻蛉返り…という旅程だったのだけど。
先生のお陰で2泊3日の許可を得られたお陰で、今回の旅程は3日あるお祭りの期間中2日目に到着し、来賓の方々と同じく最終日の翌日に帰宅する予定だ。
「というわけで、先生!」
「「ありがとうございます」」
私の掛け声で、アシュレイ殿下とお行儀よく先生にお礼を述べる。
「こちらこそ。沢山楽しもうね」
「「はい!」」
今日の先生はなんと私服!!
それも金のピンストライプが入った濃い焦茶色のパンツに紫色のシャツ、黒のロングコートという出立で、襟元に入った金の刺繍がとてもおしゃれだ。
お、大人っぽい…!
いつもの魔術師団のローブ姿ではない先生を見るのは初めてで、なんだか落ち着かない。
このお祭りは来賓以外の貴族も多数訪れる為、変装までは不用と聞いている。
その為、アシュレイ殿下は貴族の少年の街歩きといった服装で、私も動きやすいツーピースのドレスだ。
「まずはエーリク殿にご挨拶しないとね。邸におられるのかな?」
「はい!お義姉様と一緒に邸でお出迎えの準備をしていると聞いています!」
そう!実は喜ばしいことにお義姉様ができたのだ!
まだ婚約中の状態だが、私は早々とお義姉様と呼ばせていただいている。
まだお会いしたことは無いけれど!
お母様曰く、辺境伯家の方でお兄様のデリカシーゼロ発言に屈しない心の広いお方なのだそう。
お兄様の為にも、絶対仲良くさせていただこうと心に決めている。
お兄様とお義姉様は来賓の方々をお迎えする為、数日前から領地に滞在されている。
お義姉様との初対面まであとちょっとでドキドキだ!
「アシュレイ殿下、魔術師団長様、ようこそいらっしゃいました。こちらへとうぞ」
声がした方を振り返ると、王都の邸と同じデザインの紺色のメイド服を着た使用人が立っていた。
私達の到着に気づいた門番が連絡してくれたのか、門のところまで出迎えに来てくれたようだ。
「フィリリア様もおかえりなさいませ」
「ありがとう。滞在中、よろしくお願いします」
初めて会う使用人だけど、私のことお兄様から伝え聞いているのかな?
案内してくれるメイドの後を追い、見慣れない邸の中に入る。
一応来たことはあるらしいけど、なんだか懐かしい気がするような全くしないような…。
「フィリリア!会いたかったよ!」
案内された部屋のソファーに腰掛けたところで、お兄様の声と共に部屋の扉が開く。
「エーリク様、お客様へのご挨拶が先ですよ」
そう言ってお兄様の後に続いて入室してきたのは長いキャラメル色の髪を高い位置で結んだ、すらっとした凛々しい女性だ。
もしや、この方が!
夢にまで見た我がヴィンデミア家の救世主!
「これは、失礼いたしました。妹との久々の再会だったものですから。ようこそお越しくださいました、アシュレイ殿下、ユーリス殿」
お兄様、最後にお会いしてから1週間ほどしか経っていません…。
「お、お気になさらず」
「お久しぶりです、エーリク殿。3日間よろしくお願いいたします」
アシュレイ殿下と先生がお兄様に挨拶してくださるのを見守る。
アシュレイ殿下がちょっと引き気味なご様子だけど、これは人見知り…ではなくお兄様のせいな気がします。




