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紫水晶と星の花  作者: 星見七つ
第一章

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先生の部下は



「お送りします」


 陛下と妃殿下が退席されるのを見送ったところでアシュレイ殿下から声がかかる。


「すみません。お願いいたします」


 そうお答えして、差し出された腕に手を添える。

アシュレイ殿下と感想を述べ合いたい気持ちでいっぱいなのだけど…他の貴族達の目もあるのでぐっと抑えて淑女の態度を取り繕う。


 使い分けが大事よフィリリア!


そう思いつつアシュレイ殿下と護衛の騎士達に従って、お父様とお兄様との集合場所である馬車の乗り場へと向かう。


 …あれ?


1、2、3、我が家の家紋が入った馬車の近くに見える人影が1人多い。

誰かお知り合いの方とご歓談中だろうか?


そう思いながら近くに寄ると、見慣れた人物の姿であることに気が付く。


「「ユーリス先生!」」


 誰か分かったと同時にアシュレイ殿下と駆け出す。


「2人とも、お疲れさま。座ってばかりで疲れなかった?」


「全然!!先生こそお疲れさまでした!」


 いつも通りのユーリス先生が私達に気が付いて手を振って迎えてくれる。

アシュレイ殿下が元気に返答するが、私は先生のお隣に立たれているお父様を見て焦る。


 お父様の前で走っちゃった…!!


「ありがとう。良いとこ見せられたかな?」


「その、とってもすごかったです!」


 私も少し遅れて先生に感想を述べる。


 お父様から特にお咎めはなさそうだけど、アシュレイ殿下もだったし見逃してくださるということかな…?


「それはよかった」


 拙い感想だったけれど、先生が笑顔で返してくれ る。


「そう言えば、どうしてこちらに?」


「ヴィンデミア公爵閣下がお見えになっていると聞いたから、お礼もお伝えしたかったし少しご挨拶にと思ってね」


 アシュレイ殿下の問いに先生が答える。

お父様に…?気になってそっとお父様の方を見る。


「私は視察と業務状況に基づき、経費を配分しているだけに過ぎん。第二師団の人数が多いから第一師団の予算も第二師団に割り振れなどという愚かな主張に傾ける耳は無い」


「それでも、非常に助かりました。ヴィンデミア公爵閣下のご判断に心からの感謝を」


 そう言って先生がお父様に頭を下げる。


 なるほど…。

お父様は王宮で財務大臣をされているから、先生はそのお仕事の件でお話に来られたようだ。


 それにしても、比較的平和な王宮内の警備をしている第二師団より、各所に出向いて調査や討伐をしている第一師団の方が装備の損傷も多いだろう。

遠征の必要経費なども嵩むというのは私でも分かる。

第二師団むちゃくちゃ言うな…。


「いや、礼を言うのはこちらの方だ。これからもこの国と娘をよろしく頼む」


「心得ました」


 お父様と先生のお話もひと段落したところで、背後から近づいて来る足音が聞こえる。

振り返ると黒い髪を後ろに撫で付けた魔術師団のローブを着た男性が目に入った。

歳は30代くらいだろうか?


「ユーリス、探しましたよ。調査依頼が来ていますのでそろそろお戻りください」


「ヴィンター」


 先生にヴィンターと呼ばれた男性のローブをよく見ると、青の紀章が着いていた。


第一師団の方!近くでお見かけするのは初めてだ。遠目でも先程の演習が始めてだったけど!


「呼びに来させてしまって悪かったね。魔法で知らせてくれて良かったのに」


「私の伝達魔法は貴方のものより遅いので、王宮内なら走った方が早いです」


 近くに並ぶと先生よりも幾分背が高い。

なんと言うか先生とは正反対の雰囲気で、ローブよりも騎士の装備が似合いそうな印象だ。


 前に立てていた「先生の部下はユーリス先生がいっぱい!」という予想は外れていたらしい。


「申し訳ありません。ヴィンデミア公爵閣下、ご子息様、私はここで失礼させていただきます」


「ああ、ではまた王宮で」


 先生がお父様とお兄様と挨拶を交わし、側に居た私達にも声を掛けてくれる。


「アシュレイとフィリリアも、また明日の授業で」


「はい!」


「お気をつけて!」


 演習が終わったばかりなのにお忙しい。

本当は先生もう少しお話したかったけど、お仕事なので仕方ない。

少々残念に思いながらも先生の身を案じる言葉を返す。


「では、我々も帰るとしよう。アシュレイ殿下、娘をお送りくださり感謝いたします」


「いえ、それではフィリリア様、また明日の授業で」


「はい!ありがとうございました。また明日」


 そう言ってアシュレイ殿下も見送り、お父様達と馬車に乗り込む。


 そう言えば、お兄様今日はとっても静かだったな…。

まだユーリス先生のこと良く思っていなかったりするのだろうか。

帰ったらそれとなく聞いてみよう。



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