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紫水晶と星の花  作者: 星見七つ
第一章

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魔物対策合同演習④



 ユーリス先生の方を見ると最初の一撃が間近に迫っていた。

特に動揺する様子も無く、スッと軽く手を上げ手のひらで何かを弾くような動作をするのが見える。


その瞬間、巨大な火球が光の障壁に弾かれ赤の陣営へと方向を変え魔術師達の横スレスレに着弾していく。


「返した!」


 アシュレイ殿下が驚きの声を上げる。


 そうだ…先生は詠唱をしない。

まるで自分の手足のように魔法を使う。


だから待っていたんだ、相手の出方を見るために。


 その後も迫り来る攻撃を次々と同じ動作で跳ね返していく。


 ん…あれ?


「威力が…」


 先生に向かっていた時より、赤の陣営に向かっていくものの威力が弱まっている気がする。

跳ね返したから威力が落ちたのかな…。


「多分、わざと威力を殺しているんだと思います。さっきから誰にも当たってない」


 少し興奮した様子でアシュレイ殿下が私の疑問に答えをくれる。


 確かに、先程から赤の陣営に着弾はするものの、全て魔術師達が立っている横スレスレに落ちている。

良く考えれば、あれがそのまま当たれば死者が出る可能性もあるだろう。


 第二魔術師団はその辺を気にしているとは思えない。

1戦目の時は初めから赤の紀章の魔術師達が大混乱で、一度もまともに放てていなかったから思い至らなかったけど…。


 実践形式の演習だから負傷者が出るのは当たり前と思っているのかもしれないけれど…


…これは演習であって殺し合いではない。


 まさか、あわよくばって思ってる?

そう考えると沸々と怒りが湧いて来る。


 間近に着弾する魔法から逃げ出す者が増え、次第に陣形が崩れ始める。

そのせいか放つ魔法の規模も小さくなってきているが、先生が返した魔法の威力は先程までと変わらず一定だ。

やはり、先生が返す威力を調整している。

先程のアシュレイ殿下の予想が当たっていたようだ。


その上、第二魔術師団の中には混乱しているのか当たりの定まらない魔法を打つ者まで出て来ている。


 って…危ない!


 赤の紀章の魔術師の1人が放った流れ弾が打ち合いを続けていた騎士団の方へ向かっていく。


 …え?


 死者が出てしまうかもと危惧した矢先、青の腕章をした騎士が赤の腕章をした騎士を庇うように前に出る。


そして、魔法を直に受けた青の腕章の騎士は…無傷だ。


 まさか!そう思い先生の方を見ると、先程と変わらず飛んでくる魔法の攻撃を淡々と打ち返していた。


 でも多分、そうだよね。

騎士は魔力の少ない人が多いと聞くし、魔法の鍛錬もしていないはず。

ということは、先生は攻撃を跳ね返しながら騎士団にも防御魔法のようなものをかけているというとこになる。


それも、動き回る30人全員に。


 気をつけて見ていると、青の腕章の騎士達は先程のような行動を度々繰り返していた。


 赤の紀章の魔術師達は混乱の中、恐怖に駆られているのか最早敵味方関係無く手当たり次第に魔法を放ち続けている。


 カ、カオスだ…。


「フィリリアさん!あれ…!」


 アシュレイ殿下が赤の陣営の後方奥を指差す。


 人が集まってる…?


「恐らくですが、先生…誘導してます」


「…え?」


 放つ度に先生に打ち返されていく攻撃に追われ、無秩序に逃げ惑っていたはずの魔術師達が、気付けば一箇所に追い詰められている。


本人達はそれに気付いていないのか、それどころではないのか団結する様子はまるでない。


 再び先生の方に目をやると、先生が人差し指を立てくるりと回す。


 …!?あの動作、もしかして!


 見覚えのある動作に、追い詰められて一塊になった赤陣営の魔術師達の方を見ると、彼らの周囲に渦巻くように水が出現する。


 やっぱり!


 そのままどんどん増えていく水はあっという間に魔術師達を巻き込んで巨大な一塊の球体となる。


 お、溺れてる…。


 巨大な水の球体の中は勿論水のようで、中には気泡を吐きながらもがく魔術師達が見て取れる。


「すごい…」


 そうアシュレイ殿下が呟いた直後、演習終了の合図が鳴った。


 合図を聞いた先生が片手で何かを掬う動作をして、スルリと落とす。


 すると、球体が急に重力を思い出したかのように崩れていく。

水と共に地面に放り出された魔術師達は、えずいたり咳き込んだりと這々の体だが動いてはいるので全員無事のようだ。


 下の地面は水浸しになっているかと思いきや、一滴の跡も無く…先生どうやったんだろう。


 気付けばあっという間に合同演習は終わりを迎えていた。


 す、すごかった…!



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