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紫水晶と星の花  作者: 星見七つ
第一章

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魔物対策合同演習③



「「…!?」」


 開始の合図が響いた瞬間、私とアシュレイ殿下が息を呑む。


 打ち合いを始めた双方の騎士達の間を、青い紀章の魔術師6名が2人1組で魔法と体術を駆使して素早く抜け、3方に別れて陣形を組んでいる赤の紀章の魔術師の中に突っ込む。

しかも、身体強化も使っているのか動きが異様に速い。


「は…?な、なんだあれは」


 ロジェット殿下が声を上げる。


無理もない、と思う。

今まで推奨されてきた一般的な戦法は、前衛に騎士団、後衛として魔術師団がサポートや遠距離の大規模な魔法を担うものだ。


魔術師が騎士より前に出るというのは王国史の授業にある戦の記録でも見たことがない。


 だけど…


突然の奇襲に動揺した赤い腕章の魔術師達は詠唱を止め散り散りになりあっという間に陣形が崩れていく。

あれでは集団で打つ大規模魔法は使えない。


赤の腕章の騎士達は青の腕章の騎士との打ち合いが続いており駆けつけることもできない。


「いけっ…っ…くそ!」


 ロジェット殿下が叫ぶと同時に向かって奥側の半壊した陣形から、かなり大きめの魔法が放たれる。

それも狙いがイマイチ定まっていないのか、青の紀章の魔術師が張った障壁に防がれる。


 そちらに気を取られている内に奇襲組の数も増えていて赤の陣営は持ち直す隙さえ与えられず、混沌とした状況になっている。

こうなればもう勝負はついているようなものだ。


「あれは卑怯だ!反則だ!」


 そう言ったロジェット殿下が陛下の方を見るも陛下は首を横に振る。


 それはそうだろう。

これはスポーツの試合ではない。

対魔物を念頭に置いた実践形式の演習なのだ。


魔物はお行儀良く並んで魔法を放ってくれたりはしないと思う。


「こんなもの認められるか!」


 ロジェット殿下が叫びながら立ち上がる。 


 え…?


 私とアシュレイ殿下が呆然とする中、ロジェット殿下はそのまま立ち去ってしまった。

ロジェット殿下の護衛についていた騎士がオロオロしながらも後を追う。


残されたその場にはしばし沈黙が落ちる。

どうしようこの空気…。



 私達がロジェット殿下の暴挙に意識を持って行かれている間に1戦目は青の組が勝利する形で幕を閉じ、既に2戦目の準備が始まっている。


 演習場内に入って来る人々を眺めているが、赤の紀章の魔術師は続々と入って来ているものの、青の紀章の魔術師の姿は未だない。

右側に居るのは青の腕章の騎士たちばかりだ。


 準備に時間がかかっているのかな?


 そう思った矢先、右側の後方の誰も居なかった場所に人影が現れる。ユーリス先生だ。


「あの、アシュレイ殿下、もしかして…」


「…多分、フィリリアさんの予想であっているかと」


 ユーリス先生1人…!??


 第二魔術師は先程と同じく100名近くが既に1戦目と同じ陣形に配置している。

この人数相手に戦うなど可能なのだろうか。


 先程の戦いを見る限り、第二魔術師団はかなり高火力の大規模魔術を放とうとしていた。

それに、先程の屈辱を払拭したいと考えているのか、2戦目の魔術師達はかなり意気込んでいるように見える。


 …だ、大丈夫なのかな。


 ソワソワしている内に、無情にも開始の合図が鳴ってしまう。

私は祈るように両手を組み、固唾を飲んで見守るしかできない。


 先程と同じく双方の騎士達が打ち合いを始め、第二魔術師団が一斉に詠唱を始める。


先生の方は…特に動きは無い。


「第二魔術師団の方も副師団長が入っていますね」


 苦い顔をしたアシュレイ殿下が左側の後方を指差す。


 副師団長のお顔は存じ上げなかったが、赤と銀の紀章が遠目からなんとなく見て取れる。

あの方が…。


…っ!!!!


 ユーリス先生に特段何も動きのないまま、次々と巨大な火球が放たれる。


先生…!!



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