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紫水晶と星の花  作者: 星見七つ
第一章

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抜き打ちテスト②



「み、見つからない…」


 最後の一つが。


今のところ、庭園の人工池の底、枯れて硬くなった植物の蔓の間、手では重くて動かせそうにない植木鉢の下と全て魔法を使わなければ取れない場所に隠されている。


 ということは、最後の一つもそうなのだろうけど…いかんせん場所がハッキリしないのだ。

集中力が切れ始めているのかな。


 見れば日が傾き始め、授業時間が残り少ないことを示している。


 もう一度、集中して…。

うーん。もしかして、動いてる…??


「フィリリアさん」


 呼ばれて、ふと目を開けると私が立っている場所の少し先にアシュレイ殿下が立っていた。


「アシュレイ殿下、調子はどうですか?」


 そう言ってアシュレイ殿下の近くまで駆け寄る。


「三つは見つかったんですが、後の一つが見つからなくて」


「私もです。最後の一つがなかなか」


 お互い最後の一つで躓いているようだ。

ユーリス先生が言っていたように、なんとか2人で合格したいところだけど。


「この木が見えたのは確かなんですが、それらしい物はどこにも…」


 アシュレイ殿下が指差したのはすぐ側にある庭園の植木だ。

整備された庭園は栄養豊富なのか、いくつかオレンジの様な実がなって…あれ?


「アシュレイ殿下、この木なんか変じゃないですか?」


「…変?」


「これ、なっているのはオレンジの実ですが…木は柑橘類の木じゃないです」


「え?そうなんですか?」


 柑橘系の実がなる木は、森で授業をしていた時に見かけて先生から「この木、オレンジみたいな実がなるんだよ」と教えてもらったことがある。


「はい。森で見た柑橘類の木は先の尖った楕円形の葉をしていたと思うんですが、これは…」


 …どこからどう見ても針葉樹だ。


オレンジがなるはずがない。アシュレイ殿下は今まで王宮から殆ど出た事がないと言っていた。

分からなくて当然だ。ということは…。


「アシュレイ殿下、協力しましょう。多分この実のどれかです。手分けして探しましょう!」


「はい!ありがとうございます」


 2人で手分けして片っ端から実をもぎ取っていく。

手の届かない場所は浮遊魔法で回収しつつ、下に降りては半分に割る。


 多分だけど…ユーリス先生、最後の一つは2人で協力しないと手に入らない場所に隠したんじゃないかな。そうと分かればここからは協力作業だ。


「あった!ありました!」


 上の方になっている実を取っていると、下からアシュレイ殿下の声が聞こえてくる。

下を見るとアシュレイ殿下がこちらに例の人形を掲げてくれていた。


「ありがとうございます。フィリリアさんのお陰です!」


「いえ!見つかってよかったです」


 アシュレイ殿下の嬉しそうな表情に私も嬉しくなる。


「あとはフィリリアさんの一つですね。僕も探すの手伝います!何か手掛かりはありますか?」


「それが…」


 アシュレイ殿下が聞いてくれるが、手掛かりらしい手掛かりは掴めていない。


強いて言うなら…


「なぜか、移動しているような気がして」


「移動…人形が?」


「はい」


 まさか、あの楕円形の人形に足が生えて移動しているとでも言うのだろうか。

先生の魔法ならあり得なくもないのだけど…ちょっと見たくないかもしれない。


 2人で頭を抱えそうになった時、近くでバサバサと鳥の羽音がする。


「フィリリアさん、あれ!何か咥えてませんか!?」


「えっ!?」


 アシュレイ殿下が指差した先にある木には一匹の鳩が止まっていて…嘴に丸っこい派手な何か(・・)を咥えていた。


 …!!あの鳩!!


「あれ、たぶん先生の鳩です!」


「…えぇ!??」


 そう言いながら近づくと、木に止まっている鳩の脚に赤いリボンが巻いてあるのが見える。

いつだったか先生がローブから鳩を出した時、見えたのは一瞬だったが同じ色の物が巻いてあった気がする…。


 こちらが近づくと鳩が近くの別の木に移動し、再び飛び立つ素振りを見せていた。


「ど、どうしましょう…!」


「フィリリアさん、挟み撃ちしましょう!飛んだら僕が妨害します」


「は、はい!」


 そう言って飛び立つのに合わせてアシュレイ殿下が浮遊魔法で鳩の前に飛び出る。


鳩がこちらに方向を変えるかと思ったその時、突然現れたアシュレイ殿下に驚いたのかポロリ、と鳩が口から人形を落とした。


「「え!??」」


 お、落ちたらまた探し直しになっちゃう!


もうそんなに時間が無い!そう思い、急いで身体強化をかけ落下する人形の下へダッシュする。


 えいっ…!!


「と、とった!取りました!!」


「やった!」


 なんとか落ちてきた人形をキャッチし安堵する。


 よ、良かったー。


 人形を握りしめていると、アシュレイ殿下が私の側にフワリと降りてきて声をかけてくれる。


「やりましたね。これで全部揃いました!」


「はい!時間も今から戻れば何とか間に合いそうです」


 そうして2人で先生の待っているいつもの草原へ急ぎ足で向かう。


 ちなみに、先生の鳩はいつの間にか何処かへ飛んでいったのか見当たらなくなっていた。



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