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紫水晶と星の花  作者: 星見七つ
第一章

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アシュレイ殿下がお拗ねです



 指を2本立てながら、先生のいつも通りの口調で発せられた内容に呆気に取られる。

迫り上がっていた怒りを忘れて頭に上った疑問がそのまま口から溢れた。


「私を王立魔術師団の団長に任命すると発表した際、一部の貴族達から猛反対を受けたみたいでね。いくら国王と宰相の案だからと言って全てを独断で強行できる訳じゃない。そうでしょ?アシュレイ」


「は、はい…反対派の貴族達が結託して大規模な反乱や政権の簒奪が起こる可能性もありますね」


 私と同じく首を傾げていたアシュレイ殿下が、突然先生に話を振られ動揺しつつも神妙な面持ちで答える。


「そうそう。今そんな事やってる場合じゃないと思ったんだろうね。だから、本来魔術師団長が選出するはずの副師団長にその貴族達が押す人物を任命することで溜飲を下げさせた」


「ですが、それでは」


 聞いていられなかった。

先生は軽く話していらっしゃるけれど、先生が孤立することが目に見えている判断だと私でも分かる。


「うん、見ての通り。元の魔術師団員の大多数が副師団長側に付いて大分裂。それを予想していた陛下と義父上(ちちうえ)が魔術師団を第一と第二に分けることに同意した」


 恐らく反対していた貴族達が大人しくなったのも自分達に都合の良い人物が魔術師団の実権を握れると踏んだからだ。

陛下と宰相閣下は初めからそれが分かった上で魔術師団を2つに割るおつもりだった…と。


「今まで通り王宮の警護と魔法が関係する事件の調査を担当しているのが副師団率いる第二魔術師団。第一魔術師団は魔物の討伐や調査、イレギュラーな要人の警護、その他もろもろ緊急事態の対処なんかをしてるかな」


 そう言って先生はご自身のローブに着いている紀章をスッと指差す。


「青の紀章が第一魔術師団、赤の紀章が第二魔術師団だよ」


 確かに王宮で見かけるのは赤の紀章を付けた人達ばかりだ。

アシュレイ殿下が怒ったのは赤の紀章の魔術師団員達が魔物関連の担当を一切していないことを知っていらしたからか…。


 ちなみに改めて確認すると、先生のローブには金と青で構成された紀章が付いているのが見える。


「陛下や義父上(ちちうえ)からすれば、国民の安全が第一。対策が後手後手に回れば国民からの信頼が揺らぐ。魔術師団の再編については…もう悠長にそんな事をやっている余裕はない、ということだろうね」


 それは、そうなのだろうけど…。私の気持ちを代弁するかのようにアシュレイ殿下が悔しげに問う。


「では、今後もあのまま…ということですか?」


「どうだろう?陛下と義父上(ちちうえ)としては魔物への代謝が最優先ってだけで再販を諦めてないみたいだし、瘴気の結晶…魔瘴石と呼ばれるものの浄化さえ叶ったら何か変化があるかもしれないね」


 それを希望に今は私達が溜飲を下げるしかないと。


先生がこのお話をしてくださったのは、そういう意図なのだろう。


「…でも今の状況、先生はお辛くないですか?」


 ユーリス先生が辛い思いをしていたら、私も辛い。

そう思って聞いても先生の表情は変わらなかった。


「私も分かっていて了承したことだし、今はやるべき事を全うするだけかな。でも…」


 …でも?


「フィリリアやアシュレイにこんなに安じてもらえるなんて、ちょっと役得だなって思ってる」


 そう言って先生はとても嬉しそうにふわっと笑う。


「ちょっと、先生…僕たち真剣に聞いてるのに!」


「あははは、ごめんごめん。つい嬉しくて」


 前からちょっとだけ思っていましたが先生、照れると茶化す癖ありませんか…?

むくれるアシュレイ殿下と楽しそうな先生を見て、ついついそう思う。


「もう…。いいです!僕が抜群に魔法を使いこなせるようになって、先生に文句を言う人に僕の魔法の師匠だ!って言ってやります」


「わ、わたしも!…言ってやります!」


 それ、私も思ってたことです!!

アシュレイ殿下に先を越され、私も急いで追随する。


「いいね。やる気満々だ。さて、そろそろ授業を始めよう」


 ユーリス先生はそう言ってサッと立ち上がり、遮音魔法を解除した。



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