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紫水晶と星の花  作者: 星見七つ
第一章

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37/74

秘密の話?



 ふと、後ろを向いた先生がスイッと手で何かを触る動作をする。


 あれ…?周りの音の聞こえ方が変わった?


「先生、今何か…」


「うん。遮音魔法をちょっとね。今からするのは秘密の話だから」


 そう言って口元に指を当てる先生は普段と変わりない様子だけど…


「後で2人にも教えるからね。でもまずは…2人の懸念を解消してからだ」


 いよいよ緊張してきた…!


「2人は、陛下のご即位と同時に王立騎士団が再編されたのは知っている?」


「はい、庶民の入団枠を大幅に増やして特別な功績を上げられた庶民出身の騎士にも褒賞として一代限りの騎士爵を与えられたのですよね」


「そうそう。よく勉強してるね、大正解」


 アシュレイ殿下はサンドイッチでむぐむぐしているタイミングだった為、近代政治の授業で習った内容を思い出しつつ先生の問いに答える。


 確か先代の国王様はとても穏健な方で外交に優れておられ近年では大きな戦も無かった。

その代わりと言うか何というか、内政への関心が少々低く…国内では一部の高位貴族がかなり幅を利かせていたようだ。


 元々、王立騎士団の上層部は全て貴族出身者。

騎士団や魔術師団の内部でも賄賂などの汚職による昇格が横行し、職務中の飲酒、王都での乱闘騒ぎ、一般市民への暴行などなど上から下まで細かいことを数えたらキリがないくらいには不祥事が相次いでいたらしい。

これが現陛下が騎士団の改革を進めた理由だと聞いている。


「実はそれと同時期に同じ事を魔術師団でもやろうとしたんだ」


「騎士団では庶民出身者が功績を上げ出世することで、貴族出身者のやる気にも繋がったと聞いています。ですが魔術師団の方は…」


 先生の言葉にアシュレイ殿下が難しい表情で返す。


 確かに騎士団だけ再編をして魔術師団だけ放置というのは不平等だ。

だけど「やろうとした」ということは騎士団ほどの成果は上がらなかったということ。


「そう。庶民の出で魔力が豊富な者はそう多くない。魔力は腕力のように鍛えれば鍛えるだけ強くなるものでもない。騎士団では昇格を目指して我こそはと殺到したものが魔術師団ではさっぱりだった」


 …ですよね。


 先生を目の前にしては言えないが、王宮で見かける魔術師団の方々は騎士団の方々に比べ、現在も表立った不祥事までは聞かないものの職務態度が良いとは言えない…。


「高位貴族出身者はまるで言う事を聞かないし、僅かに入って来てくれた庶民出身者の肩身は狭い。再編に従い就任した前魔術師団長も頭を抱えたそうだよ」


 先生が少し困った表情で続ける。


 確か先生を魔術師団長になったのは前魔術師団長の後押しもあったと聞いているし、前魔術師団長様とも面識があるのだろう。


「魔術師団の再編が一向に進まない上に、数100年ぶりの魔物出現の噂まで立ち出した。そこで半ば強行する形で投入されたのが私だね」


「高位貴族の一員でありながら庶民出身の魔術師団長…ということですか?」


 アシュレイ殿下がサンドイッチが包まれていた包みを握り締めながら問う。


 それを聞いて私もちょっと…いや、かなりモヤッとする。

長年魔術師団員として務めてきたであろう前魔術師団長にも御せなかった集団を当時16歳の先生に立場だけ整えて押し付けたってこと…?

言葉は悪いが、何だそれって感じだ。


「そう。陛下から私に与えられた役目は2つ。1つ目に魔物への対処、2つ目は魔物に対抗し得る人員の育成」


「えっと、魔術師団の改編は…?」



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