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紫水晶と星の花  作者: 星見七つ
第一章

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36/75

流されフィリリア



「私は全然平気なんだけど…まぁ、目の前であれだけ色々言われていると、気にするなというほうが無理があるよね」


 始終困った様子だったユーリス先生が束の間考えこんだ後、私とアシュレイ殿下をスッと見つめ…


「うん。フィリリアとアシュレイなら大丈夫だろうし、ちょっとした裏事情でも聞いてもらおうかな」


 そう言ってにこっと微笑む。


 講師辞退の流れにならなかったことにホッとしたものの…裏事情ってそれ私達が聞いて良いやつですか…!?


 先生の思わぬ発言に次の言葉を待つ間、緊張の面持ちで姿勢を正す。


 ふと、先生が私達の来た方向へ手招きするので振り返ると、バスケットを抱えたメイドがオロオロしやがら立っていた。

どうやらこの状況に声を掛けて良いものか迷っていたらしい。


「ありがとう」


「い、いえ!ありがとうございます失礼いたします!」


 スッと立ち上がった先生がメイドに笑顔でお礼を言いながらバスケットを受け取る。


 とても早口で顔を真っ赤にして走り去って行ったけど…何というか我が家のメイド達を彷彿とさせる反応だ。


「はい」


「ありがとうございます?」


 バスケットを受け取り、きょとんとしているアシュレイ殿下をよそに先生はローブからお馴染みの大きな布を取り出した。

いつもより小さめに折りたたんだまま手際よく敷いていく。


「えっと…」


「まぁ2人とも座りなよ」


 私もアシュレイ殿下も呆気に取られながらおずおずと敷かれた布の上に座る。


 あの、裏話はどこへ…?


「アシュレイお昼ご飯まだなんじゃない?それ、ランチだと思うよ」


「え、あ、はい。そうですね」


 そう言われると、バスケットから仄かに香ばしい美味しそうな匂いがしている気がする。


「フィリリアはこれをどうぞ」


 そう言ってこれまたローブの内側からドライフルーツらしき食べ物が入った瓶を取り出し、蓋を外して手渡してくれる。

いつの間にかティーカップやポットまで登場し…


 ん?あの、これ、どう見てもピクニックでは…?


そう思いつつも瓶の中からドライフルーツを一つ摘み口に入れる。


「…っ!美味しい!これ、すごく美味しいです!」


 爽やかな香りとほんの少しの酸味と共にぎゅっと濃縮された甘さが口の中に広がる。


 柑橘とはまた違う香りだけど、何の果物だろう。


「良かった。それ、前に遠征した街で見つけた果物なんだ。あの強そうな見た目のやつを見つけた領地の近くだよ」


「なるほど、南の方ですね。王都では出回っていないんでしょうか?」


 ちょっとしたお茶菓子にも良いし、焼き菓子に混ぜて焼いても美味しいのではないだろうか。

王都でも手に入るなら、ぜひ我が家でもティータイムのお供にしたい。


「生のものは難しいみたいだけど、ドライフルーツは王都にも卸してるって言ってたよ。今度、扱ってる店を探してみようと思って」


「ほんとですか!?見つけたら教えてください!」


「任せて。そのままでも美味しいけど、ドライフルーツはもっと美味しかったんだよね」


 やった!我が家のお買い物は馴染みの商店から届けてもらったり職人を呼びつけることが殆どで、王都の店舗まで足を伸ばすことは少ない。

だけど、お店が分かればロアナにお使いをお願いすることもできるはず。


「あ、そればかりだと喉が乾くよね。はい紅茶。アシュレイも」


「ユーリス先生、誤魔化そうとしてませんか…」


 私と先生が盛り上がっている間、じっと聞いていたアシュレイ殿下がバスケットの上に掛けられた布を捲りつつジトッとした目で先生を見つめる。


「まさか!ちゃんと話すよ。でもほら、お昼がすまないと授業も始められないし、食べながら話しをしよう。ね」


「…分かりました」


 先生の言葉にハッとした様子でアシュレイ殿下はいそいそとバスケットからサンドイッチを取り出す。授業が無くなるのは嫌らしい。


 私もついつい釣られてこの会の本題を忘れていた…。


 アシュレイ殿下に申し訳なく思いつつも受け取った紅茶を口にする。

だって、青空の下で美味しいお菓子とお茶を片手にお喋りと言えばピクニック…。


こうなると、もうすっかり先生のペースだ。



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