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紫水晶と星の花  作者: 星見七つ
第一章

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アシュレイ殿下の進捗



 その後のアシュレイ殿下の成長は目覚ましかった。


 最初の内は私と同じく寝落ちしてしまう日が何日かあったものの基礎訓練を1週間程で終え、どんどん使える魔法が増えている。


 アシュレイ殿下が授業に参加されるようになってから森での授業は一時中断しているが、この調子なら陛下のご許可がいただけ次第すぐに再開されそうだ。


 そう考えていると、目の前で浮かせていた石がヒュンッと空高く飛んでいく。あ…。


「よっと」


 ユーリス先生が何かを握る動作をしてから、手を開くと手の中に先程吹っ飛ばした石が入っていた。


「はい。フィリリアは何か考え事かな?」


「ありがとうございます。すみません」


 先生に謝罪しつつ石を受け取る。しまった気が散ってしまっていた。


「アシュレイはもう少し肩の力を抜いた方が良いかな」


「はい…」


 アシュレイ殿下の手の上にある綿の塊はずっと小刻みに震えていて何だか可愛いのだけど…浮いてはいない。


2人してちょっとしょんぼりしてしまう。


「うーん。アシュレイには一度感覚を掴んでもらった方がいいかな」


 そう言った先生が手を下から上へ何かを掬うように動かす。

その瞬間、フワッとアシュレイ殿下の身体が空中に浮き上がった。


「え!?ちょ、先生!」


 ふよふよと空中に浮いたアシュレイ殿下がジタバタしながら驚きの声を上げる。


「せめて予告をしてください!あと、これどうしたらいいですか!?」


「あはは、ごめん。足を下に向けてそっちに重心を傾けるみたいにしてごらん」


 どうやら空中での姿勢の取り方に苦戦しているようだ。

アシュレイ殿下が何とかもがきながら足を下に向けることに成功する。


「こ、こうですか?あ、立てるかも」


「いいね、上手い。後でやろうと思ってる浮遊魔法の感覚と同じなんだけど、どう?」


「ちょっと楽しいです」


「それはよかった」


 この数週間で私も先生もアシュレイ殿下と大分打ち解けたように感じる。

アシュレイ殿下も楽しそうに授業を受けられているので私としても嬉しく思う。


「フィリリアもやってみる?」


「はい!お願いします」


 私もやってみたくてウズウズしていたので、先生からの提案にすぐ返答する。

先程と同じように先生が何かを掬うような動作をするのを見ていると私の体もフワリと浮き上がる。


 …あ、まずい。


 今日は訓練着ではなかったことを思い出し、ドレスのスカート部分を押える。

下に集中していたからかアシュレイ殿下のように上下がひっくり返ることはなかったが座ったような姿勢のまま、ゆらゆらしてしまってなかなか安定しない。


「フィリリアはそのまま下に向かって足を伸ばしてみて」


「は、はい」


 先生の指示通りにドレスを抑えたままゆっくりと足を伸ばしてみる。

しかし慎重にいきすぎたのか、ぐらりと体勢が崩れた。


「わ!」

「おっと」

「フィリリアさん!」


 その瞬間、素早く手が伸びてきて両手を掴まれる。

体勢は立て直せたものの…先生、私、アシュレイ殿下の順に手を繋いでいる妙な状態だ。


「いいね、これ。アシュレイこちらにも手を貸して」


「こ、こうですか?」


 何故かこの状態を気に入ったらしい先生がアシュレイ殿下に向かって手を伸ばす。

アシュレイ殿下も先生の方へ手を伸ばすがなかなか届かない。


「これ、移動したり、空を飛ぶ…みたいなことはできないんですか?」


「うん。別の魔法を掛け合わさないといけないんだけど。ついでだからその感覚も2人に掴んでもらおうと思って」


 そう言って先生の方が近づいて、アシュレイ殿下の腕をパシッと掴む。


「へ?」


「まさか!」


 私、アシュレイ殿下と次々に声を上げた直後、ブワッと体全体に風を感じる。

先生が後ろ向きのまま後方に飛んだのだ。


「「ぎゃー!!」」


「あはははは」


 今日もユーリス先生はマイペースでいたずらっ子だった。



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