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紫水晶と星の花  作者: 星見七つ
第一章

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かけっこしよう



「さて、どうしようかな」


 布を畳み、ローブの内側へ仕舞ったところでユーリス先生が呟く。


 アシュレイ殿下は離脱したが、まだ一コマ分の時間がまるまる残っている為だ。今から森に行くには時間が少ない気もするし…どうするのだろう?

腕を組んで考え込む先生をじっと見つめる。


「よし、かけっこをしよう」


「かけっこですか…?」


「うん、見てて」


 そう言うやいなや走り出した先生が、一瞬のうちに目にも止まらぬ速さで数メートル先の花壇の前まで到達する。は、早い…!!めちゃくちゃ早い!


「これならー!ここでも、できるかなって思ってー!」


 そう遠くから叫んだ先生が、再び驚きの速度で元いた位置に戻ってくる。


「わ、私走るのあまり得意では無いのですが、大丈夫でしょうか…?」


「大丈夫だよ。これ身体強化魔法の一種だから」


 やっぱり魔法ですよね!?


 どう見ても人の出せる速度ではなかった。これを使いこなせれば、もともと走るのが早くなくてもかなりの速度を出せるということだろうか。


「どうすれば良いですか?」


「簡単だよ。いつも通り魔力を感じて、走るのに合わせて自分を押し出すみたいにイメージしてみて」


「はい!」


 やり方を聞いて、言われた通りにイメージして走り出してみる。

すると、グンッと自分の力だけではない何かに押されるような感じがして一気に加速する。


「わっ…!?」


 めちゃくちゃ早い!あと、止まり方聞いてない!!どうしよう!?


 原っぱをとうに過ぎ去り、花壇を突っ切り、目の前に王宮の外壁が迫る。


 ぶ、ぶつかる!!


 もうダメ…!そう思い腕で庇いながらギュッと目を瞑る。


その瞬間、予想していた衝撃は来ず何か温かい者に包まれる。


 …あれ?痛く無い。


腕に当たっているのも硬いけど、壁じゃ無い。

それに、ほのかに安心する甘くてスパイシーな…これ星光の花の匂いだ。

そう思い恐る恐る目を開けると、すぐ目の前に先生の顔が見えた。


 …!??


「大丈夫?一回で成功するなんてフィリリアはすごいね」


「は、はい」


 大丈夫だけど、全然大丈夫じゃないです…!!

そう、私がぶつかったのは壁ではなく先生の胸板だったのだ。

ぶわっと全身が熱くなるのを感じる。


 だ、だだだだ抱き止められてしまったたたたたた!


「あ、あの!もう大丈夫です」


「ああ、ごめんね」


 そう言うと、先生がそっと離してくれる。


 び、びっくりした。

それに大変な事に気付いてしまった。


初めて嗅いだ時、どこかで嗅いだことのあるなんだか安心する香りだなと思った星光の花の匂い…ユーリス先生の匂いでは!??


 さっきのアシュレイ殿下と同じ方法で運ばれていたのなら…その可能性が高い。


 わ、私、寝ながら抱えて運ばれていた時にほのかに香っていたユーリス先生の匂いを安心する好きな香りだって、思っ…て…?


…もう色々恥ずかしすぎて今すぐ壁に埋まりたい気分だ。


「フィリリア?やっぱり怖かった?今日はやめにしようか」


「い、いえ。大丈夫です、怖かったですけど…やります」


 ぐるぐると考え込んでいたら、先生が私の顔を覗き込んでいて更に慌てる。


「そう?」


「はい!で、でも止まり方教えてください」


 そう聞くと先生がこてんと首を傾げる。


 え?あれ?私、変なこと聞いたかな?


「普通に止まればいいんだよ?走ってる時に止まるみたいに。足を止めれば普通に止まれるよ」


 な、なんてこと!


先生の返答に衝撃を受ける。全く頭に上らなかった。

自分で走っているのだから走るのをやめれば良いだけだったなんて…!


「大丈夫。もし止まれなくても私が受け止めるから安心してね」


「つ、次こそは成功するようがんばります!」


 先生それ、全然安心できないやつです…!


「やる気いっぱいだね。じゃあもう一回やってみようか」


「はい!」


 絶対成功しなくちゃ!!そう思い、落ち着いて魔法に集中すべく、私は思いっきり息を吸い込んだのだった。



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