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紫水晶と星の花  作者: 星見七つ


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3/17

はじめましての魔術師団長様



 魔法の先生、お父様が魔術師団長様だと言っていたけど、どんな人なんだろう。


 たしか王立魔術師団の師団長は数年前に先代の魔術師団長が引退され、その先代の強い推薦と陛下の後押しによりご就任されたと王妃様が話されていたのは聞いたことはあるけれど…実際にお会いするのは初めてだ。


 やはりお父様みたいな厳格な雰囲気のおじ様だろうか。失礼の無いようにしなくちゃ。

 今のうちに礼儀作法の授業で習ったことを復習しておいたほうが良いかも…。


 いつも妃教育を受けている王宮の一室で、いつもの予定の最後に追加された魔法の授業の始まりを待っているのだが、初めての魔法の授業にワクワクする気持ちと緊張とで全く落ち着けない。

 

 目の前にある、休憩にと王宮のメイドが出してくれた紅茶もすっかり冷めてしまっている。


 よし、どうせ落ち着かないならカーテシーの練習でもしよう!と椅子から立ち上がった瞬間、


「えっ!?」


 窓も空いていない部屋に強い風が吹いて思わず目をつむる。


「遅くなっちゃってごめんね。君がヴィンデミア公爵家のご令嬢かな?」


 声にも驚いて目を開くと、誰も居なかった場所に年若い青年が立っていた。

王立魔術師団を示すローブに身を包み、肩につくかつかないかの長さであろう新品の刃のような鈍色の髪を下の方で一つに結んでいる。

 歳はお兄様と同じくらいに見えるから…18歳くらいだろうか?


 思わず、目の前に突然現れた人物をじっと観察しているとアメジストのような深い紫色の瞳とパチリと目が合う。


「お初にお目にかかります、王立魔術師団にて師団長の任をいただいておりますユーリス・アクベンスと申します。フィリリア様の魔法の講師をさせていただけること、とても光栄に思います」


 スッと姿勢を正したかと思うと、とても洗練された仕草で礼をする様子を見てハッとする。


 そうだ!ちゃんとご挨拶をしなければ。まさか呆然としてしまうなんて!


「は、はじめまして。ヴィンデミア公爵家のフィリリアと申します!魔術師団長様の授業を受けられること、とても嬉しく思います。よろしくお願いいたしましゅ…っ!??」


 か、噛んだっ。急いで風に巻き上げられた髪を整え、カーテシーをするが時既に遅しというか、全く取り繕えていない気がする…。


「ごめんね。驚かせちゃったかな?時間ギリギリになりそうだったから転移魔法の方が早いと思って」


「いえ、大丈夫です」


 転移魔法初めて見た…。いや確かにそれにも驚いたけれど、それ以上に想像とは全く違った姿をした目の前の人物に混乱している。

 それに、アクベンスって言ったら我が国の宰相閣下がアクベンス侯爵家の現当主ではなかっただろうか。


 私が混乱する頭で近代政治の授業内容を引っ掻き回しているとアクベンス様がふと、テーブルにある湯気の立っていないティーカップに目を向ける。


「ちょっと待ってね」


 そう言ってススッと指を振ると、たちまち部屋の隅に置いてあったワゴンからティーポットと2組みのティーカップとソーサーが飛んで来くる。

ティーカップとソーサーは私とアクベンス様の前にお行儀良く音を立てずに着地し、ティーポットはアクベンス様がキャッチする。


 驚いて呆然と眺めていると、私の向かいの椅子に着席したアクベンス様が私の前の新しいティーカップに湯気の立つ紅茶を注いでくれ…


お湯と紅茶は一体どこから?


「まだ、休憩の時間が残ってるんじゃない?あ、公爵家のお嬢さんだしやっぱり敬語のままの方が良いかな?」


 未だついていけずにいる私に向かって、自分のティーカップにも紅茶を注ぎながらアクベンス様がこちらに向かって穏やかな笑顔を向ける。


「あと5分ほど残っています。いえ、大丈夫です。そのままの口調でお願いします」


 緊張と動揺でカチコチのまま…投げかけられた質問に淡々と答えると、更にとても良い笑顔が返ってくる。


「ありがとう。はじめましてだし、まずはお茶にしよう」


 …どうやら、私の新しい先生は少しマイペースでとても朗らかな性格をしているようだった。



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