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紫水晶と星の花  作者: 星見七つ
第一章

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婚約者とのお茶会 part3



 その後のロジェット殿下との関係はというと…正直あまり変わらなかった。


 あの日怒らせてしまって以降、しばらくの間は定例のお茶会の度に身を縮こまらせていたのだけど…。


 相変わらず殿下は殆どいらっしゃらないし、たまに侍従や護衛の騎士に連れられて終わり間際に嫌々顔をお見せになるのも同じ。

その際に、私がひたすら殿下のお話を聞き曖昧な相槌を打ち続けるのも変わらなかった。


 唯一変わったことといえば、私がこのお茶会の時間を開き直って予習復習の時間にしていることくらいだろうか。


 手元の歴史書のページを巡りながら、たまに手を止めて息抜きに紅茶とお菓子をいただく。

今日の紅茶、オレンジの香りが豊かで美味しいな。


 ひたすらにじっと殿下を待つのは止めた。


 待っていても来ないことの方が多いし、静かに待っていても本を読んでいるのを見咎められても、反応が変わらないことに気がついたからだ。


 1人お茶をしていても、今のように本を読んでいても、殿下の仰ることは「相変わらずシケた顔をしているな。せっかく俺が来てやったんだから、もっと嬉しそうにしたらどうだ」…これだ。


 恐らく、私の行動に特段興味を持っていらっしゃらないのだろう。それなら有意義に時間を使わせてもらおう、そう思った。


 そんなわけで、麗らかな昼下がりのガゼボで私は自習に精を出している。

お茶会があるのは昼食後なので、週に一度この日だけはユーリス先生とお昼ご飯をご一緒できないのだけが残念だけど。


 これは、今日も来ないな。

そう思って向かい側の回廊を眺めていると、遠くで見守っていたメイドが近づいて来る。恐らくお茶会の時間の終了を告げる為だろう。


「フィリリア様、そろそろお時間です」


「ありがとう」


「今日の紅茶とても美味しかったわ。何処の銘柄かしら」


「本日の茶葉はキーファル産のアールグレイを使用しております。王宮御用達の茶葉専門店から取り寄せました」


 そう説明しながら、空になったティーカップやケーキ皿を手際よく片付けてくれる。


「よろしければ、店名と銘柄を書いてお渡しさせていただきましょうか?」


「本当?お願いするわ」


「承知いたしました。少々お待ちくださいませ」


 そうして少し待っていると、手のひら大の小さな白い鳥のようなものが羽ばたきながら近づいてくる。


あれは…。


 スッと前に手を出すと、ほどなくして指の先に止まった。

これはユーリス先生からのお手紙だ。

私も以前教えて貰っているものの、まだ全く同じようにとはいかない。


先生の鳥は本物の鳥のような仕草をする。

用途には全く関係が無いけれど、とても愛らしいので私もいつか先生みたいに鳥の動きを細かく再現することができればと思っている。


 目の前の鳥を観察していると、魔力認証が終わったのか手元の鳥が折られた順にパパパッと開いて一枚の紙になる。

そこにはバランスの良い流れるような字で


「今日の集合場所、変更のお知らせ!」


とその詳細が記載されていた。

罫線を気にしていないのか少し大きめに書かれているのが先生らしくて微笑ましい。


 読んでいた歴史書と一緒に机の端に出していたノートのページの1枚を出来るだけ綺麗に破り、急いで了承を伝える旨の返事を書く。


 それを先生と同じように鳥の形にして飛ばした。

うーん、やっぱり上手く羽ばたかない。いや、羽ばたかなくても魔法で届け先まで飛んでくれるのだけど…ちょっと悔しい。


「フィリリア様、お待たせいたしました。…どうかされましたか?」


 スイーっと飛んでいく鳥型の手紙を見送っていると、先程のメイドが小さなカードに店名等をメモしたものを持って戻ってくる。


「ええ、次の授業の場所が変更になったようなの」


 そう言って、手元に残っている先生からのお手紙を見せた。


「さようでございましたか。ではこちらのお部屋へご案内させていただきますね」


「ありがとう。お願いします」


 彼女は持って来たカードを私に手渡し、テーブルの上に広げた荷物を纏めるのを黙々と手伝ってくれる。


 先程の手紙に着替えも要らないと記載されていたので今日は恐らく森には行かないのだろう。

なにかご事情があるのだろうか…?


 気にはなるが、先生にお会いすれば分かるはず。

少々気が急くのを抑えつつ、メイドの後を追って指定された部屋に向かった。




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