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紫水晶と星の花  作者: 星見七つ
第一章

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先生のお土産



 チッという音と共に薪に小さな火が灯る。

こうやって見てるだけなら簡単そうなのにな…。

そう思いながら石を土台にして設置した網の周りに、串に刺した魚を黙々と刺していく。


 ちなみに毎日魚だと飽きてしまうので、これが先ほどのキノコになったり木の実になったり先生特製干し肉が追加されたりもする。


「良い匂いがしてきましたね」


「そうだね、そろそろかな?」


 そう言って先生が網の上の葉っぱの包みを突いているのを見てワクワクする。

調味料は塩とその辺に生えていたハーブや薬草だけなのに、どうしてあんなに美味しくなるのだろう。

王宮の料理長には大変申し訳ないが王宮の豪華な昼食よりこちらを選んでしまうほど美味しいのだ。


「よし、良いんじゃないかな?」


「こっちも良さそうです!」


 周りに刺した魚もこんがりと焼けている。

その内の一本を引き抜き先生へ渡して、私も自分の分を手に取る。


「「いただきます」」


 同時にそう言って手に持っていた魚に齧り付くと口の中いっぱいに香ばしい香とジュワッとした旨みが広がる。


 普段の食事ではカトラリーで綺麗に食べるのがマナーだが、今この場では思いっきり齧り付くのがマナーだ。


「今日の獲物のお味はどう?」


「おいひーでふ」


「ふふふ、よかった」


 先生の問いかけに、熱々の焼き魚でいっぱいの口を手で隠しつつ何とか答える。

もしかしたら、こんなに美味しいのは1人の昼食ではないからなのかも。

先生の笑顔を見ながらそう思った。



「そうだ、今日はデザートがあるんだ」


「これは…」


 2人とも昼食を食べ終わったあたりで先生が取り出したのは、なんとも個性的な見た目の…果物?だった。


 ゴツゴツした楕円形で、岩や何かの甲羅のようにも見える。

先生が掴んでいる葉っぱのような角のような部分が緑色をしているので、かろうじて植物の実だと認識できるが…小型の魔獣だって言われたら信じてしまいそう。


「調査終わりに入った食堂で出てね、すごく美味しかったからフィリリアにも食べてほしくて」


 あの日の宣言通り、時々こうして遠征した先でお土産を買ってきてくれる。

昼食を一緒に食べるようになってからは、その地域で有名な食べ物が多い。


「デザートということは、これやっぱり果物ですか?」


「そうだよ。なんだか強そうな見た目だよね」


 果物らしいそれに恐る恐る手を伸ばし、つんつん突いてみる…見た目通り、硬い。


「それは私も思っていました…!!先生でもそう思うんですね」


「あはは。店で出た時はちゃんと切ってあったから、私も市場でこれを出されて驚いたんだ。見てて」


 ナイフを手にした先生が手際よく皮を削ぎ落とすように剥いていく。

強そうな見た目の中身は意外と華やかな色合いだ。


「はい、どうぞ」


「ありがとうございます」


 食べやすい大きさのブロック状に切り分けたものを受け取る。

口に入れるとキュッとした酸っぱさと共に甘さが口の中に広がった。


「酸っぱいけど美味しいです!」


「うん。だよね、やっぱり美味しい」


 食感は見た目通り固めで繊維質だがこれはこれで食べ応えがあって良い。


「今回はどちらへ行ったんですか?」


「アストリア領だよ。今回も魔物では無かったけど」


「良かったです。その方が良いです…」


「ははは、それもそうだね」


 それを聞いて少しホッとする。よかった今回も危険は無かったようだ。

たまに聞かせてくれる魔物討伐の様子も興味深くはあるけれど、先生が危ない目に遭っていない方が良いに決まっている。


「アストリア…割と気温の高い地域ですよね」


「良く勉強してるね、当たり。これは暑い場所でしか育たない植物なんだって」


 こうしてユーリス先生と何気ないお喋りをしながら王都ではあまり見かけない食べ物を食べるのも最近の楽しみの一つだったりする。



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