Prologue
深い森の中をただひたすら進んでいた。
木々の枝葉が空を覆い隠し、昼か夜かも分からない程の薄暗い視界。まるで生物の気配がしないにも関わらず、数多の視線を感じる。
かなりの数を倒してきたはずなのに…。
「ここ!ここです!」
じわりと疲労が滲んできたところで、仲間の1人がある洞窟を指さして叫んだ。
ようやく、探し求めていた目的地に辿り着いたらしい。
「気を引き締めていこう」
「「はい」」
先程声を上げた者とは違う仲間の1人の張り詰めた声に応える。
洞窟の中は非常に暗い。森の中の進行で暗さに幾分慣れた目でもあまり役に立ちそうになかった。
誰かが灯りを付けたのか洞窟の内部が私達の周りだけ、ほんのりと照らし出される。
洞窟の幅は意外と広く3人並んで歩ける程だ。
「中にも魔物が居る可能性があります。あまり刺激しない方が良いでしょうから、明かりはひとまずこれで行きましょう」
そう言った彼の手元には控えめな光の球が浮かんでいる。
「そうですね、ちょっと怖いですが…そうしましょう」
「分かりました」
口々に同意を述べ、警戒しながら寄り集まって慎重に洞窟の中を進んでいく。
どれくらい進んだ頃だろうか、時間はそう経っていなかったと思う。
「あれ…!」
視界の先が薄らと明るくなり、微かに水の流れる音がする。
出口では無い。だが恐らく…私達の目的のものだ。
私達の周辺を照らしていた灯りが状況を確認する為に強さを増し、近づくほどに詳細が露わになる。
通ってきたものより広がった空間、その中央には小さな泉が湧いている。
その上には不気味な黒い靄を纏った濃い紫の大きな石が浮かび…
直ぐ傍には、どこか見慣れたシルエットの人物が静かに佇んでいた。
「…え?」
「いや、まさかっ」
仲間達の動揺が伝わる。
私の背にも冷たい嫌な汗が伝い落ちる。
まさか、そんな事は…あり得ない。絶対に。
確かめなければ。
そう思うものの石の放つ不穏な光が逆光となり、顔がよく見えない。
そうこうしている内に、佇む影がこちらを向き言葉を発する。
「よく来たね。待っていたよ」
そう言ったその人の声と、片手に素早く集まっていく鋭利な光が私の浅はかな希望を打ち砕いていく。
「…嘘」
口をついて出た呟きと共に視界は鮮烈な光に支配された。




