第2章|正統カリフ時代とイスラーム帝国の拡大
『焚き火と帝国のはじまり ― 正統カリフ時代の会話』
―焚き火のそばで夕食を取りながら、三人は“イスラームの最初の拡大”について話していた―
セイル:「アブー=バクルって、ムハンマドの友達なんだよな? そのあと何人かカリフっていたんだよな?」
リィア:「ええ。“正統カリフ”と呼ばれる4人が続いたわ。すべてムハンマドの仲間か親族だったの。」
エファ:「4人、ですね……えっと、順番に言えますか? アブー=バクル、ウマル、ウスマーン、アリー。」
リィア(うなずく):「完璧。正統カリフ時代は、イスラーム国家が“帝国”になっていく過程でもあるのよ。」
セイル:「帝国ってことは、戦争したってことだよな?」
エファ:「ジハードですね。“聖戦”と訳されることもあるけど、本来は“努力”という意味……ただ、当時は領土拡大の戦いとして展開されました。」
リィア:「たとえばササン朝ペルシアを滅ぼして、ビザンツ帝国からもシリア・エジプトを奪ったわ。」
セイル:「え、マジ? そんなに速く?」
リィア:「正統カリフ時代(632〜661)は、たった30年足らず。でも一気に西アジアと北アフリカの広範囲を支配したの。」
エファ:「これは兵士の勇敢さもあるけど、当時のビザンツやササン朝の衰退、宗教的対立も背景にありますよね。」
セイル:「え? 宗教って、関係あるの?」
リィア:「たとえばシリアやエジプトでは、ビザンツ帝国による“キリスト教の宗派弾圧”があって、現地の人々はイスラームを解放者のように受け入れたのよ。」
エファ:「なるほど……それで“ジズヤ”って税を払えば信仰は許されたんですね。」
セイル:「ジズヤ……? 聞いたことあるな。信者じゃない人にかかる税金か?」
リィア:「ええ。イスラーム教徒ではない被征服民が支払う税ね。その代わり、信仰の自由は守られた。」
エファ:「でも、最後のカリフ=アリーのときに“内戦”が起きたんですよね?」
リィア:「そう。656年、ウスマーンが暗殺され、その後継としてアリーがカリフになると、一部から正統性を疑う声が出た。特に“ムアーウィヤ”と対立して“内戦”(第一次フィトナ)が始まった。」
セイル:「フィトナ……火花って意味だったな。なんかいよいよややこしくなってきたな。」
【大学入試一問一答|第2章(10問)】
1.正統カリフ時代の初代カリフは?
→ アブー=バクル
2.正統カリフ時代にビザンツ帝国から奪った地域は?
→ シリアとエジプト
3.ササン朝ペルシアはどの政権に滅ぼされた?
→ 正統カリフ政権
4.ジハードとは本来どういう意味?
→ 努力(奮闘)
5.ジズヤとはどのような制度?
→ 異教徒に課された人頭税
6.正統カリフ時代の第3代カリフは?
→ ウスマーン
7.アリーの即位をめぐって起きた内戦は?
→ 第一次フィトナ
8.アリーと対立したシリア総督は誰?
→ ムアーウィヤ
9.ムハンマドの従兄弟でもあった第4代カリフは?
→ アリー
10.正統カリフ時代のイスラーム教徒の宗教・政治の指導者の名称は?
→ カリフ