晴れのち雨、のち“さくらんぼ”
今日の朝の天気予報では、
「雨のち曇り、のち”雨”」
と表記があった。
なんで普通の雨じゃなくて、””がついているんだろう?
と思った。
朝の時間は貴重だ。
そんな疑問と向き合っていたら、会社に遅刻してしまう。
いつも通りバタバタと支度をし、いつも通りギリギリ出発した。
天気予報の通り、午前中は雨が降っていたので、社内で仕事をしていた。
雨が上がり、曇ったタイミングで外回りの仕事をしようと考えていた。
空模様が曇りに変わり、外に出た。
割と長い時間、曇っていた。
それから夕暮れ時まで、全然雨は降らなかった。
夕日も地平線に消え、少し肌寒い時間。
車から家に歩く時、何かがパラパラっと僕の体に触れた。
なんだろう。
暗くてよく見えなかったが、玄関の方に近づくと自動で照明が点灯し、その正体が照らされた。
それは、”雨”だった。
液体ではない、漢字の”雨”。
今日の天気予報はそういうことだったのか!
それからというもの、毎朝の天気予報をちゃんと見ようと思った。
「雨のち曇り、のち”晴れ”」
「雨のち晴れ、のち”虹”」
「晴れのち雨、のち”さくらんぼ”」
「”桜”のち”メガネ”、のち”ミルクティ”」
いつの頃からか文字だけでなく、そのものが降ってくることが多くなった。
「晴れのち”時間”のち、雨。”時間”が大量の雨に流されるでしょう。」
そして僕は時間が空から降ってくるという不思議な体験をした。
時間が降ってきて、年老いたけれど、すぐに雨が降って、老いを流してくれた。
空から色々なものが降ってくるようになってから、毎日が面白くなった。
そしてこの日の天気予報を境に、もう予報は無くなった。
「”死”のち”光”、のち”新世界”」
それを聞いてからは、一度視界が真っ暗になり、暖かい光に包まれた。
そして僕たち人間一人一人は、神様となり、1人が1宇宙を担当し、各々が世界を作ることとなった。