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02

「……はずかしい……はずかしすぎる……穴があったら入りたい……」


「恥ずかしがる姿も可愛らしいですね都子さん、既に穴の中ですよ」



ズレてる上にツッコミまで?!


だってだってだって、あたしついこの間まで彼氏居ない暦イコール年齢だったんだよ!

それがなんでだか結婚してて、しかも妊娠してたとか!!


展開が早すぎるというか知覚できる速度を振り切ってない?!



「……妊娠なんて初めてだから全然分からなかった……っ」


「えぇ、大丈夫ですよ、分かっています」



ユンがあたしを落ち着けるように背中とお腹をさすってくれながら頬を摺り寄せてくるけれど、頭の混乱はぜんぜん治まらない

というか、寧ろ逆効果というか……!


だって、この強烈な眠気はずっと夫婦生活による疲労のせいだと思ってたんだよ?!

それが実は寝悪阻たぶんとかいうアレだったとか!

恥ずかしくて死にそう!!


……っていうか、そもそも ぷりんに赤ちゃんが出来たときの為に勉強した犬の妊娠出産でのつわりの時期とも、家族ぐるみでお付き合いのあるお隣のお嫁さんに初めて赤ちゃんが出来たときに何か手伝えることがあれば、って勉強した時期とも違う

こっちの人風に妊娠してる……ってこと?!


……あれ?


……そもそも生まれてくるのって、人間なの?

それともユンみたいな獣人なの?



「この子もユンみたいにふさふさの耳としっぽがあるのかなぁ?」


「ッ! ……それが……都子さんの望みなのですね」


「うん」



あればあったでかわいいけどなくてもユンに似れば将来有望な美形……ストーカーされたらどうしよう?!

誘拐とか監禁とか……ひぃぃ、かわいいのもそれはそれで考え物じゃない?!


え、じゃああたしに似てそのへんの雑踏に紛れたら見つけるの大変なくらいの普通顔がいいの?

それで大きくなった子供に「お母さんじゃなくてお父さんに似たかったのに」とか言われちゃうの?!

なにそれ、そんなこと言われたらへこんじゃう……

しかも娘だったら更に効果絶大……!



「……では、わたしたち二人で立派に育てましょう」


「うんっ」



どっちに似るかはともかくとして どっちにしてもかわいいあたしたちの子だもん、誘拐とかストーカーとかには充分に注意して立派に大きくしよう!


護身術……は地球に戻れないと教えてくれる教室とかないしどうしよう……逃げ足だったらユンが足が速いから似れればいいんだけどあたしみたいに運動苦手な子だったらどうしたら……あ!ユンが魔法を使えるんだもんこの子にバリヤー的なものを教えてあげてほしいってユンに頼めばいいよね、うん、あたしも何か為になること教えてあげたいけどそういう特殊な技能や知識は持ってないからせめて応援しよう……!!

お母さん夜食とか美味しいのいーっぱい作れるようにがんばるね!


そうそう、忘れずにムービーや写真が撮れる魔法をユンにお願いしておかないと!!!




 *** *** ***




「あ、これかわいい……けどあたしには大きいなぁ」


「都子さんはこういった系統のものがお好きですか?」


「うん、こっちとかこんなかんじのも好きだよ」


「そうでしたか、都子さんに良くお似合いですよ

 それならこの際ですから色々と見て回って好みのものをわたしに教えて下さい

 陶器も硝子も経験はありませんが造り方は知っています」


「え、や、焼いてくれるの?! ユンが?!」


「はい、勿論です、なんでしたら詳しい要望など教えていただければ

 店頭のものに似せたものでなく理想に近いものが焼けると思います」


「わぁ…… あ、でも、ユンの好みは? あたしの好きなのばっかりじゃ悪いよ」


「わたしは使い勝手が良ければ柄に拘りはありませんから大丈夫ですよ

 取り敢えず今回の買い物は無難な客用のものだけにして、焼けるまではそれを使いましょう」


「じゃ、じゃあ後で絵に描くね、ユンは器用だから楽しみだな」


「ご期待に沿えるよう心血を注いで尽力しますね」


「う、うん(わぁもの凄く力強いお返事……何であたしの方がプレッシャー感じるの?)」



あれ? ……でも待って待って

あたし好みのかわいい花柄や動物柄の食器を使うユンを想像してみる……


あ……はい、すみません、ごめんなさい

えーと……えー……あー……うー……あ、アンティークなのもいいよね、大人な感じがして!

和モダンもいいよね! 落ち着いた雰囲気で!!

片方は花柄で片方は蔦柄とかモチーフと色を変えれば同じ柄でも男性向けと女性向け風に差は付けられるよね、うん



「い、色違いとか柄違いでしっかり考えるね」


「夫婦茶碗ということですか、素晴らしいですね!」



え、夫婦茶碗?

ま、まぁ確かに言われてみればそう……かなぁ……

でもそれよりもなんだかユンの尻尾を振る速度が格段に上がったような気がして凄く気になる


尻尾が食器類を引っ掛けて割っちゃうようなことにならないといいなぁ、とかハラハラしつつも

現在、あたしは食欲不振も悪阻のせいだと断定して無理して食べるように心掛け、諸々の体調不良もなんとかそこそこ軽減したところでユンのドクターストップが渋々ながら解除され、少し大きな街まで遠出して新居に必要な雑貨類をユンと見て回っている


……新居……そう新居!


あのごりごり抉ってた洞窟は新居だったんだよ?!

荒々しく抉られてた岩肌が磨かれた大理石……いや黒っぽいから御影石? みたいな感じで表面がつやつやのぴかぴかになったなー……と思ってたらいつの間にか燻されて落ち着いた色合いの木目が綺麗な板が壁面と床面と天井を覆ってたのにはびっくりしたけど

あれって湿気対策とかどうなってるのかな、カビと戦うのは嫌だなぁ……


そんなわけで現在ウィンドウショッピング中なわけだけど、陶器やガラス製のものがあってびっくり

こっちの世界では全部あの頑丈そうな金属製の家具や食器類だと思ってたからまさかこんなかわいいデザインからカッコイイのやら、アンティーク風だったり和風な感じの木製や陶器にガラス製の食器類の揃った専門店(で、いいんだよね? 多分)があるなんて思ってもみなかったもん

あれ、でもこの前の食堂のカウンターって、何で金属じゃなくて木製だったのかな、そういえば宿のテーブルもそうだったような……、うーん、さっぱり


それは兎も角として篭もってぐったりしてた時に比べたら、こうして外に出てウィンドウショッピングしたりするのは結構気分転換になるらしくって、ユンに抱っこしてもらったまま何件か梯子したけど、体力的にはちょっと疲れたけど気分的には凄く楽しい


この分ならユンのご家族にご挨拶もできるんじゃないの? って思うんだけどユン的にはまだ駄目みたい

ショッピングと違って緊張するだろうから、緊張のあまり悪阻が酷くなったりする可能性があるってことらしいです、うん


そりゃ、妊娠が分かった時って、すぐご挨拶には行けないほど辛かったしユンの言うとおり体調が安定するまで温和しくってのは分かるけど、このまま最低限の義理すら果たさないのは非常にどうかと思うわけで……


だから、ご挨拶に伺った時の為に何か手土産とか今のうちから用意しておくくらいならできるんじゃないかと思って例えば食器とかだったらどんな感じのが好きなのか聞いてみたんだけど、ユンのお父さんもユンみたいに手作り派らしくって、お母さんの使うものは殆どお父さんが作ってるんだって


そんな話を聞いちゃうと消え物一択になっちゃうんだけど、流石に食べ物だといくら無劣化で保存しておけるとはいえ買い置きは心情的に申し訳ないというか……



「買い物はこれくらいにして今日は帰りましょうか、疲れたのではありませんか?」


「ユンに抱えてもらってるからまだ大丈夫、あたしの体調を気にしてたら次にいつ来れるか分からないし」


「では喫茶店で休憩を挟んでから次はシーツやカーテン……あぁ

 すみません都子さん、呼び出しを受けてしまいました」



お客さん用に買った食器をユンがウェストポーチにしまっていると、彼は何かの呼び出しを受けたみたいで


一度、家にあたしを連れ戻ってからもう一度出掛けようとした彼を、あたしに気を使った速度じゃ時間が掛かるし呼び出しの方は緊急かもしれないからと説得するとユンは渋々ながら頷いてくれた


お仕事があるのに家を整えて、家事もしてくれて、その上、ユンに悪いから暫く探さなくても大丈夫だよ、って言ったけど、あたしにナイショで多分家族を探してくれてる


彼も、この世界でお世話になった色々な人たちも、優しすぎて涙が出そうになる……



「先日都子さんに姿を教えた兄を呼びましたから、安心して下さい」


「え、お義兄さんを? 悪いからいいよ、ユンがくれた御守りもあるし大丈夫」


「いえ、もう此方に向かってくれています」


「ぇ、うん、でも……」


「遠慮しなくとも兄は世話焼きの気質なので気にすることはありません」



喫茶店にあたしを降ろそうとするユンに、一人じゃ食べきれないからと言うと「食べ切れなくても残せばいいんです」という彼をそんな勿体無いことお店の人に申し訳ないよと説得すると、渋々ユンは「いいですか、灰青色の毛皮で青緑の眼をした大柄な虎ですからね」と念を押して縫製品のお店の中で下ろしてくれた

そんな彼を見送った後、少し店内を眺めたけれど、あたしはすぐに疲れてしまって一旦お店の外へ出て休むことにした



「はぁ……(正式なご挨拶もしてないのにあたしの為にわざわざお義兄さんまで呼んでもらっちゃうなんて、迷惑掛けてばっかり

 ……っていうかどうしよう、はいせいしょくってどんな色か分からない

 大柄ってどのくらい大きいのかな、周り中みんな大きいし分からなかったらどうしよう……

 それも問題だけど言葉通じるのかな、一応ユンに教えてもらってるけど不安しか感じない)」



温かい店内から外へ出ると、ひやりとした空気が頭を冷やして、あたしの少しだけ鬱屈した気分を吹き払ってくれる


一方的に助けてもらってばかりだから何かお返しをしたいけど、自分一人で買い物もできない今の自分が今出来る事と言えば、とりあえず、これ以上迷惑を掛けないように早く元気にならなきゃいけないくらいだよね



(元気になるにはまず食べなきゃだけど

 今ですら消化に効くお茶を飲みながらのご飯なのにこれ以上食べる量増やせるかなぁ……)



想像しただけでお腹がいっぱいになるような気がして、ゲンナリとしつつも いつまでもお店の前を塞いでるものよくないし、と

どこか座って休めそうなところがないか周囲を見回した時だった


ふ、と唐突に辺りが暗くなって

……違う、あたしの周りだけ、影が覆って



「ぅぷっ?!」


「都子さまっ、生きておられたのですね都子さま……っ!」


「……ぇ?」



目も開けられない程の強烈な風を巻き起こしながら空から降り立ったその人は、片膝をついて大きな翼の片方を恭しく胸に添え


涙ながらに、そう言った

次回更新は水曜の同じ時間です


因みにユンファイエンスの兄のイメージはマルタタイガーです

是非、画像検索などで一度見てみるといいですよ!

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