はじめまして、私、忍者です
毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。
Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)
その男は出会い頭こう言った。
「はじめまして、私、忍者です」
「えっ?」
「えっ?」
僕は戸惑った。隠れてるから忍者というのではないか。
「忍者って、言って良いんですか?」
「マズいですかね、やっぱり」
「ふつう、裏方さんというか隠れているものと思いましたが」
「そうですねぇ。ちょっと今の無しでお願いします」
「秘密にしておきますが、私はどうなるんです?」
「知られたからには生かしておけません」
「そんな無茶な。あなたのミスでしょ。責任取ってください」
「責任取って殺します。組織を背負っているので」
無茶苦茶だ、この忍者。忍者は、背中に背負っていた忍者刀をスラリと抜いた。
「まあ、待ってください。話せば分かる」
「粛正しますっ」
「お前、左翼の忍者か?」
「しまった。ますます生かしておけない!」
忍者は袈裟懸けで切りに来たのを、手に持ってた傘で受け流す。
「何奴、ただ者では無いな」
「学生時代、剣道やってたもので、多少心得が」
「ネトウヨだな!」
「なんでそれで決めつける。左翼の悪い癖だと思いますが」
「問答無用!」
勝手に決めつけて激高するのはネット左翼の悪い癖。
困っていたところに、丁度パトカーが来た。僕は大声で叫んだ。
「お巡りさんー助けてください!」
「何を、あっ!」
忍者は素早く逃げ出した。
警官が来て事情聴取。
――ああ、あの人ね。近所のトラブルメーカーですよ。以前捕まえたんですが、お仲間がプラカード掲げてマスコミに通報して釈放要求してきました。微罪だったので起訴できなくてね。
「でも、刀振り回してましたよ」
――模造刀です。本物だったらあなたの傘なんて一刀両断されてますよ。
「ああ、確かに」
自称忍者だったが、中身は只の変質者だったか。