魔法少女の誕生日
魔法は繁栄の象徴である。このキューリュー大陸では、人々は魔法を使える才あるものを、魔法使いと呼び、畏敬の念を持って接していた。
超常の力を持ち、魔法の才を持って産まれたものは、功をあげ、莫大な富と名声を得られると、古くから伝承されてきたためである。
そのキューリュー大陸のムラオオ村で、センナは魔法の才覚を持つものとして、産声を上げた。
「ムラオオ村で魔法の才覚があるものが産まれるとは。これで貧しい村の暮らしもちょっとは良くなりますな。」
村長のディルドがセンナの父、ヤナセに満面の笑みで語りかける。
「そうですね。いやしかし、まさか俺の家系から魔法少女が産まれるとはね!ずっと狩猟しかしてないし、学がない俺が何か娘に教えてあげることとかあるんでしょうかね?はっはっはっ!」
ヤナセは豪快に笑い飛ばした。ヤナセの家系では先祖代々狩猟を営んでおり、弓矢を用いて猪、狐等を狩り、生計を立ててきた。
「あなた、まずはセンナを抱いてあげてくださいな。」
ヤナセの妻であるフリーは、優しくセンナを抱きながら、夫に娘を抱き渡そうとする。母の腕から離れることを察知したのか、センナは大きな声をあげて泣き始めた。
「あらま、もう嫌われちゃったかね?やっぱりこんなガサツな親父より、優しいママの方が子供は好きなんじゃねぇかな。」
一度はセンナを腕に抱き抱えたが、そういうとすぐにフリーに赤子を返した。子供が生まれた興奮とその娘が魔法の才覚を持っていることがわかったことで、ヤナセの髭まみれの顔は紅潮している。
「この子もすぐ、きっとあなたの事が大好きになりますよ。頼れるお父さんですもの。」
フリーがふくよかな顔をゆっくり笑顔に変えながら、抱き抱えた娘に視線を落とす。穏やかな秋空の下、センナはこれからふりかかる困難を知る由もなく、ゆっくり寝息を立てていた。