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22 知らない再会



 騒がしいギムレットがいなくなってから、数週間がたった。


 彼が言っていたとおり、食事は一週間分がいつの間にか玄関に届いている。

 日々を不足なく過ごせている。

 けれど、どこか胸がぽっかり空いているような感じがした。


 そんなある日。


 ベランダに見知らぬ人間が現れた。


「…………!?」


 気づいたのは、夜だった。

 閉めたカーテンに月明かりでシルエットが浮かんでいた。

 最初はギムレットが来たのかと思ったけれど、一向に部屋に入ってこない様子から違う人物だとわかった。


 その日以降、毎日その人影は現れるようになった。

 最初は怖くて眠れなかったが、最近は慣れてきた。

 その人影がこちらに入ってこようとする気配が一向になかったからだ。


 しかし、その油断が命取りとなった。





 ある日の夜。


 ガラッ


「…………え」


「……………………」


 なんと、ベランダの窓が開いたのだ。

 人影が、ゆっくりと閉じられたカーテンに手をかける。


 シャッ


「「…………」」


 カーテンが開けられ、私は侵入者と見つめ合った。


「は、はじめ……まして?」


「…………」


 混乱のあまり、突拍子もない発言をしてしまった。

 目の前の不法侵入者は、特に何も言わない。めっちゃこわい。

 ただ、暗くて表情はわからなかったけど、なんだか悲しそうな雰囲気を感じた。


 










 侵入者の彼は、特に脅威ではなかった。

 むしろ、私の世話をしてくれるという謎の事態になっていた。


 ゴオーーー


「…………」


 私の部屋で掃除機をかけている男性。

 家政婦のように甲斐甲斐しく家事をしているこの人物は、不法侵入者である。


(いや、もう私が黙認したから不法ではない………か?)


 部屋の主が掃除の邪魔をしないようにベッドに避難している状態だ。

 不法侵入者ではないが、不審な人物であることは確かだろう。


(服装は……機動性のある上下が黒の服。黒い上着には複数のポケットがあるし、腰にはベルトが付けられてる。あと、太腿のは……ガーターベルト?)


 とにかく、いろいろなものを仕込めそうな服を着ている。

 多分、彼は何か組織に所属しているんだと思う。

 そうじゃないと、腰につけられてる物騒な銃がマズい。


(でも、なんでそんな特殊部隊の人が私の部屋を掃除してるの?)


 悶々としていると、掃除機の音がとまった。

 どうやら掃除が終わったようだ。


 窓の外をみると、煌々とした日光が入ってきてる。

 染みるような目の痛みに、思わず目を眇める。


 そう、現在は昼。

 例の人物が侵入したきたのは昨夜。

 私は例の人物と一夜を過ごしたのだ。

 侵入されたというショックによって体が固まった私を横抱きにして、彼は私をベッドに運んだ。そして、そのまま寝かしつけられた。衝撃的な出来事が連続し、私は気絶した。


「掃除は終わった」


「あ……ありがとうございます?」


 突然目の前から声がして、ぱっと前を向く。

 茶髪の男性がベッドに座っている私を見降ろしていた。

 自然と、私は後ろに後ずさる。


 そんな私を見て、彼はベッドから一歩離れた。

 

 ほっとした私は、これからどうすればいいのか逡巡した。

 けれど、何も思い浮かばない。どうしよう。


「…………カイだ」


「……え?」


 思い悩んでいると、突然声をかけられた。


「俺の名はカイだ」


「え、あ、まどか……です」


「まどか……」


 思わず返した自分の名に、彼は懐かし気な声色を出した。


「まどか、か」


「え、ええ、はい」


 思い違いかもしれないが、愛おし気に自分の名を呼ばれるのはとても気恥ずかしい感じがする。


「これから、よろしく」


「ああ、は……はい!?」


 こうして、私は不法侵入者のカイと共にこれからの日々を過ごすことになった。







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