ブラックボイスの埋めく射撃 ⇒⇒⇒報酬後の行動とは・・・・・
職場では「ねぇ、もう少し早く動いて・・・」"早く"・"早くして"
と言うのが口癖の上司。
えーーーっ、そこ早くするところじゃないでしょーと心の中ではマックスで叫んでいる。口を開けば早く早くと言うまるで八つ当たりしているようにも、窺がえる。それが上司、その名角部つむぎなのだ。言い返す時間も、価値がモッタイナイという考えの持ち主だから、早く、言われたときはぐっと堪えて"今"の業務に切り替え集中する曜子なのだ。
勤めている会社の紹介。食品玩具の工場で、お菓子に付属する玩具だ。パーツごとのセット・型抜き梱包・組立などがある。昨年新工場を建設し会社としては大きく成長しつつある。作良馬曜子は北工場に勤めている。
株式会社 総合クリエイトで設立からもうすぐ30年を迎える。曜子が勤める北工場は建物が古いため工場内は狭い。
曜子の作業内容は資材補充補助を任せられている。入社5年目。
角部は時々ではあるが、ちくちくネチネチ繰り返し言うセリフお馴染み「早くして」の口癖は、曜子だけに言っているのか?言いやすいからなのか?八つ当たりなのか?カスだと思っているのか?気分で発言してくるのか?上司ならどんな言葉を扱っても善いと己のルールがあるのか?たまったものじゃない。
派遣労働者に対しては、優しい会話で笑い声も聞こえることもあるのだ。気分の問題なのか・・・・・品質課の仲妻さんが工場内に訪れると、補充の補助をしたり補充棚のチェックしたり"いつも行ってます"アピールをするからまるで山の天候やな、赤血球白血球までも驚く。そんな態度急変条件"仲妻登場"を『アイテム』と暗号名を付けた。今に始まったことではない事は、確かであり相手を変えることは不可能である。
ある日、
山咲「ここ通路だからコンテナを先に片付けてくれんと」
曜子「補充が間に合わないから仮置きしてました」
山咲「だったら、もっと早く動け」
はぁ?部外者だろう、狭い場所で通路で作業させられてるんだから仕方ないだろうがー、仕事内容は楽しく夢中になれる時間として捉えているからぐっと抑えることができた。
そう、資材コンテナを片付けながら部品補充をしているのだ。資材補充が溜まっていたので仮置きのまま、補充を行っていた際に言われた一言だった。
確かに曜子が作業している場所は"通路"なのだ。作業している本人が一番承知している。黙ってコンテナを畳んでくれたらいいのにと思う反面人間性道徳の問題と感じる曜子である。
昼休みこの出来事を話しで盛り上がった。よく言えたもんだわねと、同情してくれる仲間もいる。この出来事を機に名称を付ける、角部を右田次郎、山咲左田五郎と暗号名を付け会話することにし、同僚はその発想に爆笑した。
そんな日々を繰り返し、創立30周年を迎える企画としてイメージキャラクターを募集することを朝礼で発表した。
掲示板には会社のロゴも同時募集するとの告知も記されている。
・募集期間・・・3カ月
・採用報酬 未定
・候補報酬 未定
なお報酬内容は決定次第通達する。
とあった。
曜子はこの企画に参加する。イラストが浮かんできたのだ。キャラクターの名称は「タートル&ラビット」ありふれてるけどこれに決めた。不細工な亀とキュートなウサギを組み合わせる。
一方、角部もこの企画に参加するのだが、企んでいたのである。それは・・・
審査側になることだ。
この企みに巻き込まれることとなる、"舞子"はそんなこととは知らない。
角部「ねぇ、ちょっとお願いがあるんだけど・・・・」
舞子[何?」
角部「キャラクター応募私の代わりにしてくれない?」
舞子「えっ、私イラスト大の苦手描けないので、出来かねます。」
角部「そーじゃなくて、私が描くので舞子が描いたこととして応募するのよ」
えーーっと驚いた様子で
舞子「そんなこといいんですか?」
角部「黙ってればわからないわよ、いいじゃん、いいでしょー、ねぇお願いー」
返事に困った舞子はしばらく沈黙した。
舞子はこの強引さに、あきれるというかたまげるというか、そのパワーを仕事で活かしたら?それって、罪になるんちゃうん?など色んな思考がぐるぐる回った。反面断ったら仕事関係に何か影響がでるんじゃないか?
不安と正当がぶつかり合った。『偽称』という文字のシグナルは暗闇に逃げていった。
角部「黙ってないで、どぉなのよ、ねぇ、お願いィーー」
と、何度も何度も繰り返され、返事を延期しても、次の日も次の日も言う始末。とうとう舞子は承諾してしまうのだ。
舞子「わかったわ、キャラクター描いてちょうだいね。私は描けないからね」
角部「分かってるわよ、ありがとう」
その日角部はルンルン気分で、全身から Fine thanks you オーラダダ洩れ顔からの笑みに潜んでいるものは?と疑いたくなる。
角部自身の思惑通り審査側に着くことが承諾された。もちろんこの企画には応募資格はない。
30周年キャラクター募集期間開始され、曜子はエントリーする。
「タートル&ラビット」にサブキャラクターで亀の上に蝶々を描き、リボンと蝶々を重ねたイメージを付け加え、モノクロで勝負する。
立川舞子は角部の描いたイラストキャラクターでエントリーするが、バレたらどうするの?という心理が日々大きくなっていき、恐怖という己と己の戦いの幕開けで、後悔が一際重くなっている。
多数応募があり締切りを迎え審査が始まった。"作良馬曜子"の作品が候補の一つに挙げられたのだ。
角部はその作品を"シェリー・アルニーヌブラウン"のキャラクターで盗作だと報告する。この企画の責任者関係者はその一言に、しっかり調べることもせず、信じ、でっち上げられた公表により候補から外されることになる。
新年会にて30周年企画の採用作品を披露する。結果は落選。候補にも入れなかったのかなぁ、なんていう疑問は出て消えた瞬間だ。
数日後取引先のある会社の宣伝コーディネーターチーフ(服部貴俊)から声をかけられる。
服部「ちょっとすみませんタートル&ラビットを描いた作良馬曜子さんですか?」
曜子「はいそうですけど、何かありましたか?」
服部「作良馬さんのイラストが気になってしまってね、実は候補に挙がってたことを聞きました、何故か外されたようです、僕は事情は存じませんけれど、うちで使わせてもらえないかと思って、声かけさせてもらいました。」
曜子「はい・・・・」
びっくりした様子で返事をする。
服部「突然の出来事で今すぐここで返事はできないと思うので、作良馬さんの気持ちと考えや意見知りたいのでご連絡いただきたく存じます」
名刺を受け取った。
曜子は名刺をじっーとにらめっこしながら、これ嘘じゃないよね、社内で声かけられたんだからそれは間違いはないとは思うけど、なりすましとかはないはずだよねと、自問自答した。角部に暴言を吐かれることをただ阻止したい。ただそれだけだ。コラボしてもらい、何かヒットさせたい、いいや、必ずやってやるわ、と心で誓い、服部チーフに連絡を入れる。
作良馬「先日はありがとうございました。話させていただきたく前向きに検討したいと思いまして電話させていただきました」
服部 「ありがとうございます。いつがよろしいですか?」
作良馬「9,10,16,17で、時間は10時、レストランハウス・さざな美でいかがでしょうか?」
服部 「10日、日曜日10時で、場所も分かりますので、よろしくお願いします」
作良馬「ありがとうございます」
計画が一歩進んだ実感を全身で感じた作良馬。
ーーー果たして作良馬の思いは服部に届くのだろうか?、人柄が人の心を動かすカギとなるのだろう・・・・ーーー
約束の日
服部 「おはようございます、本日はよろしくおねがいします」
作良馬「こちらこそ、よろしくおねがいします、早速ですが、私の思いを伝えさせてください」
服部 「はい、どうぞ」
作良馬「実は上司には罵られたり、暴言を吐かれたりするんです、人によって態度を変えられてだから絶対見返しするにはどうしたらいいのか、普段から考えておりました。そんなとき、30周年企画、今回声をかけていただき、チャンスと思ったので感謝しております」
服部 「私も社内ではいろんないざこざや、人間関係トラブルを見たり聞いたり、時には巻き込まれることもありましたので、大変気持ちはわかります、是非成功させましょう」
作良馬「あとこの件は内密で確実に着実に進ませたいのですが、よろしいでしょうか?私の希望ですけど・・・」
服部 「作良馬さんの希望、気持ち全力で受け止めます、しっかり計画を練り、進めて参りましょう良いアイデアみつかるかもしれないので、取引先の方にも話してみますね」
作良馬「ありがとうございます」
こうして、計画は少しずつ進んでいく。
作良馬には心境の変化が表れ始めていた。
意地悪な言葉を吐かれても、見下した指示を言われても、仕事を楽しめるようになっていったのだ。
周りの同僚もこの変化にはうっすら感じ取っていたのだが、"何があったのだろう"と内側に疑問文を掲げているだけで、日常は通過していった。
裏プロジェクトは外部からのコラボレーションという形でたどり着いたのだ。
作良馬は月1度ほどの打ち合わせと経過報告を服部との交流をしていく。
交流の日
服部「やっとここまでできたね そちらの会社にコラボ提案するのは来週、総務の絹笠さんに話するよ」
作良馬「ありがとうございます 角部さんの驚く顔が楽しみです」
会社へのコラボ提案の日
服部「早速本題としまして、イラストが気になっておりまして、記念グッズを販売するのはいかがでしょうか。貴社従業員の方がきっかけなので、声かけさせてもらいました」
絹笠「ありがとうございます、企業同士のコラボですね、初の試みです。面白いです、是非よろしくおねがいします」
服部「ありがとうございます、よろしくお願いします、進めてまいりますのでまたご連絡させていただきます、何か製品にしたいものはありますか?」
絹笠「特にはありません」
服部「かしこまりました タオルハンカチ、クリアファイルでまず、制作して車内販売いたしましょう、その後で一般公開計画しております」
絹笠「何卒宜しくお願い致します」
コラボ計画は順調に進んでいく。
作良馬にもその進行状況は報告がその都度届いている。
早速サンプルが出来上がり受注生産で、注文を取った。作良馬の会社では300個、服部(大石企画)では200個、想像以上の注文になる。
目立ちそうで目立たない微妙でそのキャラクターがかわいいとの感想が多く見られた。
30周年の文字は記念なので付け、キャラクターの作成者作良馬と最終的に相談し販売を決定する。
とんとん拍子に進む話に、作良馬は嬉しいような、なんだか複雑な感じもあったのだ。
成功したんだと実感がすぐにはなかった。
3か月後
総務部長に呼び出されドキドキしながら応接室へ。
作良馬「失礼します」
部長「どうぞ 早速ですがコラボ企画社内販売が好評で、会長よりご指示を受けました、それで希望は何かありますか」
作良馬「はい、あの角部さんの上司になりたいです、もちろん臨時ボーナスみたいなものも、あれば欲しいですけどそれは弐番目で、見返してやりたくてこんなチャンスはありません。いわゆる"肩書"がほしいのです」
部長「おもしろい実に・・・目立たなくておとなしくて、ひっそりとしている方だと思っていたよ、相談してまた返事します」
作良馬「分かりました、善い返事がいただけることを信じております、失礼いたします」
応接室を出た。
現場に戻ると周りは何やらソワソワしていた。そんなことは気にせず業務に集中し一日が終了した。
数日後部長から書類を受け取った。帰宅後書面を見た。"社内改善リーダー"任命する、組織図が記されていた。
じーっと書類を見つめ、やったぞと感無量で体中が熱くなった。
朝礼では組織変更の連絡で、社内が一瞬ざわめいた。
立場を逆にした喜びを忍ばせ平然とした態度をするが、一方角部はいつになく不満な表情マックス。
しばらく周りの同僚に当たり散らし心身的に調子を崩す社員も見受けられた。
作良馬はそんな影響を自分なりに考え改革を実行する。
覚悟の実行、角部を改革するのだ。
そして、次第にトラブル関係は作良馬に相談することが多くなり、話し合いや、コミニュケーションで社内の雰囲気が少しずつ良くなっていき、業務内でもお互いに自ら協力する様子が見られ作良馬は嬉しかった。角部にも変化が表れ始め、表情もよくなり、トラブルが何といっても減り周りの人への接し方も以前とは変わってきた。環境がもたらす影響は大きいのだと改めて感じる作良馬。
仕事楽しいけど、人が成長することっていいなと思いそんな仕事をしたいと、思い始め決意する。
総務部長に退職することを告げる。
作良馬「退職を考えているんです」
部長「急にどうしたんですか」
作良馬「角部さんがとても変わって、社内雰囲気も良くなってきたから私人を育てるというか、育成系の仕事したいと思い、今仕事探しています」
部長「なるほど、育成関係の仕事ね。他の工場や、提携会社の異動というのはどうだろうか?」
作良馬「ありがとうございます、そんな気配りしていただけるのなら有難いチャンスだと受け止めます」
部長「少し時間くださいね」
作良馬「ありがとうございます」
数週間後
部長より関連会社の光製作所を紹介され、面談を経て1カ月後異動した。
角部さんのリーダーの任命を依頼して・・・・・